【Farewell-column】たぎる闘争心で熱源となった“点P” 信州BW・ペリン・ビュフォード

バスケットボールの2024-25シーズンが全て終了し、信州ブレイブウォリアーズからも退団者が発表され始めた。本企画はチームを去る選手・スタッフに敬意を表し、その働きぶりやチームに遺した財産などを改めて記録するもの。今回は“P”の愛称で親しまれ、多くの勝ち星をもたらしたスタープレーヤー、ペリン・ビュフォードにフォーカスする。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
ビッグサプライズとなった加入
戦う姿勢をチーム全体に伝播
「自分には証明しなければならないことがたくさんある」
開幕戦を前にしてビュフォードは新たな挑戦に目を輝かせていた。
島根スサノオマジック(B1)に4年間在籍し、2022-23シーズン、2023-24シーズンにはB1得点王を受賞したタレントが、B2の信州に移籍。今季一番のビッグサプライズだった。

あふれんばかりの闘争心を持つ。
どのポジションでも強く、器用にこなす。
あっと驚くパスも見せれば、会場をどっと沸かせるダンクもお手のもの。昨季のウィークポイントだったリムプロテクトでも活躍が期待された。

とはいえ、勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)は「闘争心にあふれるようなリーダーシップスタイルは『吉と出るか凶と出るか』」とも懸念していた。
しかし、ビュフォードは福井ブローウィンズとの開幕戦から存在感を示す。
勝利こそならなかったものの、両日とも16得点をマーク。GAME2では早速トリプルダブルも達成した。

そして闘争心を示したのは得点面だけではない。常にチーム内でリーダーシップを取り、緊張していた狩野富成の胸ぐらをつかんで、冷静さと戦う姿勢を注入した。

試合だけでなく、練習も常にハードワークを怠らない。練習が短時間で終わった日には、一人で黙々とワークアウトをこなす。Tシャツを脱ぎ捨て、これでもかというほど汗を流す。
そんな姿に感化された若手も少なくなかった。

KINGDOM パートナー
コートで証明したものは数知れず
若手も学んで日々成長の熱源に
練習中や試合中の様子を見ていると、多くの選手たちとコミュニケーションを取る姿も見られた。
「実際に会うと印象とは違った」と語る選手がいるほど。世間がイメージする“一匹狼”のような選手ではなく、仲間とよく笑い、取材に対しても真摯に向き合う選手だった。

パフォーマンスに関しては、オフシーズンには足首の手術を行い、シーズンを通してもその痛みに悩まされることも。シーズン途中には左四頭筋損傷によりインジュアリーリストにも登録された。
それでも試合に出られない時はベンチ裏から仲間にアドバイスを送ったり、チームを鼓舞したりする姿も見せていた。

確かに最後までディフェンス部分での練度は向上しきれなかったが、得点面や若手のメンターとしてチームに残した財産は計り知れない。
先述した狩野の成長はまさしくビュフォードの発破があったからこそでもあるだろう。

プレーオフ前の取材では、狩野と渡邉飛勇に対して賛辞を送っていた。
「トヨ(狩野)や飛勇はものすごく成長している。自分のメッセージをちゃんと受け取っているし、どうやって彼らにメッセージを伝えるかを自分も彼らから学んでいる」
ビュフォード自身も変わった。

ダメな時には厳しい声をかけて、良い時には褒めるといった「アメとムチ」を使い分けることで、若手の成長を促進させるメンターとしても存在感を発揮した。
自分自身のメンタルもコントロールし、感情を表す必要がある時は包み隠さずさらけ出す。落ち着く時はヘアバンドを外して冷静さを取り戻す。

チームが忘れかけていた自信や闘争心を注入し、狩野を日本代表キャンプに呼ばれるまでに成長させた一人でもあるだろう。
時にはチームメイトと噛み合わず攻撃が停滞したこともあったかもしれない。B1復帰への立役者にもなれなかった。
それでも、シーズン終盤戦では欠けたチームメイトの分まで奮闘し、バスケットボールプレーヤーとしての価値を証明した。

勝利の喜びを忘れかけていたブースターに対しても、それを思い出させてくれた。アリーナ中を熱狂で包み込んだ数々のビッグプレーは、今なおブースターの記憶に色濃く書き込まれていることだろう。
次はどの舞台で、何を証明していくのか――。
スタープレーヤーの前途に、幸多からんことを願って締めくくる。

PROFILE
ペリン・ビュフォード(Perrin Buford)1994年1月25日生まれ、アメリカ合衆国出身。ミドルテネシー州立大学卒業後は、2016-20シーズンの間に欧州や中東などでプレー。2020年に島根スサノオマジックに加入して4シーズンを過ごす。たぐいまれな身体能力と頭脳を生かして、2022-23シーズン、2023-24シーズンにはB1得点王とベスト5に選出された。”P”の愛称で親しまれ、信州では火付け役としてチームに勝利へのエナジーを与えたSF。198cm、100kg。
ペリン・ビュフォード Bリーグ個人成績
https://www.bleague.jp/roster_detail/?PlayerID=33094
[問:61] “点P”ことペリン・ビュフォードが点Vを目指すとき、信州の加速度を求めよ(2025.5.1公開)
https://shinshu-sports.jp/articles/21859
“ビュフォード”と書いて“刺激”と読む 2年目の2人が明かす胸中(2024.10.1公開)
https://shinshu-sports.jp/articles/8855