大一番で米村尚也が“鮮やか復活弾” 驚異の早期復帰で本領発揮の後半戦へ

最下位脱出のチャンスを逃しはした。ボアルース長野は2025年8月10日、ことぶきアリーナ千曲でのF1第11節でY.S.C.C.横浜に2-2。勝ち点2差で追う11位との残留争い直接対決に引き分けた。それでも終盤には米村尚也が今季初ゴールを決め、復活をアピール。開幕直前のケガから早期回復したベテランの活躍は、後半戦に向けて勇気を吹き込んだ。

文:田中 紘夢/編集:大枝 令

KINGDOM パートナー

復帰3試合目で1年ぶりのゴール
“点の取れるフィクソ”が価値示す

勝てば順位がひっくり返る大一番。

喉から出るほど得点が欲しい状況で、“役者”が仕事をこなした。

1-1で迎えた残り5分、相手陣地の右サイドでキックインを得る。田中智基からパスを受けた米村尚也は、キックフェイントで相手をかわして左足一閃。強烈な弾道でニアサイドを撃ち抜いた。

「ボールが外に出たときにはもう『行けそうだな』と思った。自分の得意な形で、ある程度決め打ちしていた」

左右両足を自在に使いこなすテクニシャン。開幕直前に骨折し、復帰して3試合目だった。

昨年7月のF2第7節・マルバ水戸戦以来、実に1年ぶりとなるゴール。「久々のゴールということもあって、入った後はフワフワしていた」と笑みをこぼす。

お決まりのパフォーマンスも忘れるほどだったが、「みんなが駆け寄ってきてくれて『決めたんだな』と実感できた」。

米村の復帰によってフィクソ(サッカーのセンターバックに相当)は厚みを増し、ファーストセットとセカンドセットも組めるようになった。一昨年にはキャプテンを務めた32歳に対し、山蔦一弘監督は「チームに落ち着きとか安定をもたらしてくれる」と信頼を置く。

とはいえ、まだまだ本調子とは言いがたい。

「今日は全然ダメだった。もっとやってもらわないと、このチームは勝てない」と指揮官。米村自身も「自分のプレーには納得していない。ゴールは奪えたけど、それ以外のところは…」と首を傾げる。

米村の代名詞は“点の取れるフィクソ”。過去には2シーズン連続で2桁得点を挙げるなど、結果で価値を示してきた。決してボールを握る時間の長いチームではなく、だからこそ要所で米村の得点力が必要とされる。

今節はセットプレーで、十八番とするドリブルからシュートの形を見せた。それを流れの中でも増やし、得点源となれるか。

全治3カ月→1.5カ月で早期復帰
キャリア初の大ケガを乗り越えて

チームはその後に追い付かれて2-2と引き分けたものの、米村にとっては大きな一歩を踏み出した。

開幕直前に左足第5中足骨を骨折し、全治3カ月の診断。これまでのキャリアで大きなケガはなく、長野に加入した2021-22シーズン以降も「練習を離脱したことはなかった」という。

そんな“鉄人”がピッチを離れたのは、チームにとっても計算外だった。開幕から人員の配置に頭を悩ませたが、それを見守る本人ももどかしさを抱えた。

「単純に悔しかった。みんながチームの勝利のためにもがいている中で、自分はピッチで力になれない。それでもチームを信じて、目の前のケガに向き合ってきた」

当初は後半戦からの復帰を見込んでいたが、驚異的なスピードで回復に至った。

第9節・湘南ベルマーレ戦で今季初出場。全治3カ月との診断だったものの、1カ月半でピッチに戻ってきた。

「いろんな人のサポートがあって早期復帰できた。山蔦監督も信頼して使ってくれているので、今まで試合に出てきたみんなよりもやらないといけない。まだまだベストパフォーマンスにはほど遠いので、日々のトレーニングから向き合っていくしかない」

サポーターの温かさにも改めて気付かされた。

離脱している間も松葉杖をついて会場に現れた際、「待ってるよ」と激励されたという。復帰後も「本当に大丈夫なの?」と心配され、「愛されているなと実感できた」。会場の外では中学時代の同級生がピザ屋を出店するなど、周囲のサポートは手厚い。

大一番で2度リードも勝ち切れず
最下位のまま勝負の後半戦へ

そうした周囲の期待に応えるためにも、必要なのは結果だ。

残留争い直接対決で2-2の引き分け。2度のリードに成功しながらも勝ち切れず、米村は「負けに等しいドロー」と受け止める。

「F1にある程度慣れてきて、最初よりは勝ち点が取れるようになってきた」と山蔦監督。直近4試合の3分1敗という戦績に表れるように、接戦には持ち込めている。あとは引き分けを勝ちに持っていくために、細部を突き詰めたい局面だ。

「単純に40分集中するというところ。今日も2-1になったときにパワープレーでやられたけれど、相手がミスをしたというよりも、自分たちがミスを起こした」

「ああいうミスを誰かが起こすと、試合には勝てない。それをもっと強く理解しないといけない」

前半戦を最下位で折り返し、後半戦初戦となるホームの次節も“大一番”に近い位置付け。勝ち点5差で追う10位・バサジィ大分を迎える一戦だ。「残留」の2文字を手繰り寄せるべく、負けられない戦いは続く。


F1第11節 Y.S.C.C横浜戦 試合詳細
https://www.fleague.jp/score/result.html?gid=96828
クラブ公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

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