クラブ改革を進めて水面下で“産みの苦しみ” 新生・GaRonsの全貌は近日中に

沈黙の裏で、改革への歩みを進めていた。長野GaRonsの選手は地域に飛び出し、バレー教室やイベントで地域の人々と触れ合う。フロントはチーム編成だけでなく、ファンクラブ刷新やイオンモール須坂との連携、トライアウトの改革などに奔走。すべてはSVリーグ参入に向けた挑戦の一歩だった。表面上は静かだった3カ月間の動きを、運営会社である信州スポーツプロモーションの韮崎昌彦・代表取締役社長に聞いた。
文:原田 寛子/編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
朗報が限られた「静かな3カ月」
裏で進めた次シーズンへの歩み
2024-2025シーズンを終え、篠崎寛前監督の退任から約3カ月。クラブからの発信は決して多いとは言えなかった。
ファンにとっては大きな衝撃だった監督の退任。公式のリリースがない状態が続く間には、不安の声もあった。輪をかけて選手の契約解除が発表されるなど、朗報は極めて限られた。
もちろんチームは何も動いていなかったわけではなく、水面下で歩みを進めていた。
チーム状況から触れると、指揮を執っていたのは酒井駿アソシエイトコーチ。監督代行として軸になり、10月に開幕する2025-2026シーズンに照準を合わせたチーム作りが始まっていた。
「先々を見据えて考えた時、リーグ戦で勝つことは重要になる。今季はシーズンのスタート時にピークを持ってこられるように動いている。トレーニングにも多くの時間を使い、体づくりにも力を入れた」
そんな中で迎えたのは、6月15日の国民スポーツ大会バレーボール競技長野県予選。「決していい状態ではなかったが、優勝という結果を残せたのはプラスにとらえたい」と韮崎社長は話す。
KINGDOM パートナー
地域活動のエリアを市外にも拡大
イオンモール須坂との連携も内定
チーム作りと並行して、引き続き地域貢献活動にも力を注いだ。
地域のイベント参加はもちろん、積極的に増やしているのはバレー教室。斎藤優太が勤務するシンコースポーツ株式会社が開く教室で、2021年4月から続いている長野市アクアウィングでの教室に加え、今年7月からはことぶきアリーナ千曲での教室も始まった。
選手たちも子どもたちとの触れ合いに重きを置く。7月13日に開催されたのは「長野市子どもの体験・学び応援事業」の中でのバレーボール体験教室。長野Gから10人の選手が講師として出向いた。
「バレーが初めての子にも楽しんでもらえることが第一。試合前に選手が実際に使うアップの道具を使って体験してもらい、試合を身近に感じてもらえるようにした」
そう話すのは、実施内容を考えたという内藤大。練習内容にも工夫を凝らしていた。
長くチームを支えるファンに向けた活動も、新たな動きを見せた。7月から「ガロンズクルー」としてアプリの運用を開始し、公式ファンクラブを一新。入会もアプリから手軽にできるため、徐々に会員数も伸びているという。
「まだまだ改善点があるのは事実だが、これまで支えてきてくれているファンの皆さまへ、ここでしか発信できないコンテンツを増やしていきたい」
さらなるファンの獲得に向けて、一歩を踏み出した。
選手獲得の観点から言えば、トライアウトにも変化があった。これまでの“全面歓迎”から、ポジションや人間性まで見極める慎重な選考に変わった。
「うれしいことに年々トライアウトを受ける人が増えている。トップチーム枠には入れなくても入団を希望する選手が増え、今年から練習生枠を設けた」
このほか新たにキーになるのはイオンモール須坂との連携だ。10月3日にグランドオープンを控え、今後長野Gとのイベントを企画中だという。
「地域活性化という共通項のもとでイオンモールと連携できたことは大きい」と韮崎社長はうなずく。
全ては“SV・ガロンズ”のために
監督の後任人事なども近日発表へ
こういった活動の背景には、SVリーグ参入に向けた準備という中長期戦略がある。
長野Gは常に上のリーグを目指し続けており、そのスタンスは常にゆるぎない。2026-2027シーズンから創設される下部リーグ「SVリーグ・グロース」への参入はもちろん、その先にある国内最高峰のSVリーグ参入が目標であることに変わりはない。
そして道のりが険しいこともまた、変わりない。
だが歩みを止めることはない。
「篠崎さんのおかげもあり、選手層が厚くなってここまで来られた。だが、財務基準を筆頭にクリアしなければいけない条件はまだまだある」
語る声には重みが帯びる。
SVリーグライセンスの基準には、6億円以上の売上高を達成するという財務関連のほか、5,000人以上収容可能なホームアリーナを確保するという要件、アナリスト・通訳・医師という専任人材の必須要件がある。
「課題をクリアするには、認知度を上げることが欠かせない。『須坂市からSVリーグのチームを』という思いは変わらないが、現実的には須坂市だけで続けるのは難しい」
「ホームタウンは一つに限られないため、須坂を大切にしながら地域を広げる必要がある」
その一歩目として、今季は上田自然運動公園総合体育館でVリーグ女子・信州ブリリアントアリーズとの合同開催が決まった。イベントも含めた企画を進めているという。
SVリーグ・グロースのライセンス申請は8月1日からスタート。現Vリーグのライセンスから水準が引き上げられた項目や新設項目もあり、これらはSVリーグ・グロースでプレーするためにはクリアが必須だ。
「上位リーグ参入への準備のため、チームの改革を続けていく。ライセンス基準をクリアすることだけでなく、選手が自覚するプロ意識をあげること、そしてフロントの層を厚くすること」
そう力を込める韮崎社長。
最大の注目が集まっている監督の後任人事などコーチングスタッフに関しても、近日中に発表される見込みだという。進化を示す第一歩「新生・GaRons」の全貌は、もうすぐ明らかになりそうだ。
チーム公式サイト
https://garons.jp/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_men/team/detail/474