3強の一角”緑の王者”との決戦へ 鈴木紗理と原衣吹が燃やすオレンジのハート

満を持して迎える大一番だ。AC長野パルセイロ・レディースは前節にホーム初勝利を挙げ、2連勝で4位に浮上。次節はWEリーグ参入後初の3連勝を目指してアウェイに乗り込む。2025年9月6日、相手は昨季王者の日テレ・東京ヴェルディベレーザ(東京NB)。新加入コンビのMF鈴木紗理とMF原衣吹は、古巣撃破に意欲を燃やしている。

文:田中 紘夢

ジュニアユース時代からの親友
長野で11年ぶりチームメイトに

シーズン開幕前。
MF原衣吹はMF鈴木紗理との再会に声を弾ませていた。

「ほかにも久しぶりにやる選手はいるけど、紗理だけは思い入れが違うというか…。『ついに!』という感じがする」

原衣吹

新加入の2人は、中学時代の同級生。日テレ・東京ヴェルディベレーザのジュニアユース(メニーナ)で苦楽をともにし、帰りの電車も同じだった。卒団後も親交は深く、「懐かしい気持ちはない」と鈴木は白い歯を見せる。

原はのちにトップチームへ昇格し、鈴木もちふれASエルフェン埼玉に進んだ。両チームが練習試合を行った際には、互いにマッチアップする――かと思いきや、まさかの縦関係を組むことになる。

鈴木紗理

「ベレーザの人数が足りなかったので、紗理を向こうから貸してもらって、自分と縦関係になったんです。そのときはめちゃくちゃうれしかったけど、終わった後に前十字を切ったと聞いて…」

鈴木は右膝前十字靭帯を断裂し、全治8~10カ月の重傷。「あのときは私も本当に楽しくて。いつもよりスピードが出ちゃったのかな」と思い返す。苦くも甘い思い出だった。

そんな2人が今季、AC長野で11年ぶりにチームメイトとなった。原はここまで全4試合に先発出場。鈴木も途中出場を続けているが、まだ“共演”はない。交代で行き違う日々に、鈴木は苦笑いを浮かべる。

「もちろん一緒に出たい。なんでいつも(交代時に)ハイタッチしているんだろうなって…」

今週末は東京NBとのアウェイゲーム。原と鈴木にとっては古巣戦で、相手にはジュニアユース時代のチームメイトも数多い。昨季王者に土をつけるためにも、初共演に期待がかかる。

ハイインテンシティを体現しつつ
オン・ザ・ボールでも強みを

「やっと慣れてきたかな…という感じはある」

そう手応えを口にするのは、マイナビ仙台から加入したボランチの原だ。

開幕節はチーム事情もあって右サイドバックでの起用。前半から対峙するドリブラーに手を焼き、後半は失点にも関与してしまう。「狙われているのは分かっていた」と眉をひそめた。

2節目以降は本職のボランチで出場。中盤の底でゲームをコントロールしながら、球際やセカンドボールの争いにも奔走する。開幕戦の雪辱を晴らすかのように、目の前の相手に負けない気概を示した。

「龍さん(廣瀬龍監督)からもモロさん(諸町光彦コーチ)からも、対人で負けないことは口酸っぱく言われている」

指揮官は原のタクティカルな面を評価しつつ、「いっぱい飯食えよ!」とフィジカルの向上を促している。途中交代が続いている中で、フル出場も指標の一つ。そうなれば鈴木との共演も増えるかもしれない。

ノジマステラ神奈川相模原から加入した鈴木も、トップ下でもがいている最中だ。

「守備でしっかり前についていきながら、ボールが入ってきたら相手をつぶす。そこは今までになかったものだし、まだまだ足りていない。ビルドアップとかチャンスメイクでも、もっと決定的な仕事をしないといけない」

直近2試合はリードしている状況で投入され、クローザーとしての役割は果たした。しかし彼女が自らに課すのは、試合を決定づける働き。「味方に気持ちよくプレーさせるだけじゃなくて、自分が点を取りに行く姿勢を見せないといけない」と力を込める。

チームが求めるハイインテンシティを体現しながらも、原と鈴木の特徴はオン・ザ・ボールにある。定位置をつかみつつある原も、現状には満足していない。

「ボランチとしての攻撃の手応えは、正直あまりない。攻撃が良くなくても守備をやっていれば負けないけど、もっとボールを受けて前線に運んでいきたい思いはある」

王者との古巣戦は旧友たちと再会
オレンジのハートを熱く燃やす

チームは開幕から4試合を終え、2勝1分1敗の4位。直近の2連勝で上位に躍り出た。

WE参入後初の3連勝を目指して挑むのは、昨季王者の東京NB。“打倒3強”を目標に掲げて始動した中で、その一角との初対戦を迎える。

「自分としては育ててきてくれたクラブなので、やりやすさはある。パスを出したり、一個外すタイミングというのは、感覚的に『ここだろうな』と分かるところもある」

「それでも相手が一枚も二枚も上手なので、技術よりも気持ちの部分で食らい付いていきたい」

中学から10年間を東京NBで過ごした原だけでなく、中学3年間を過ごした鈴木も似たような感覚を抱く。

「みんなのプレースタイルは分かっているし、『こっちに行くだろうな』というのもすぐに分かる。相手はうまいけど、必ずこっちの時間帯は来るし、そこで隙を突くことができれば点は取れると思う」

ジュニアユース時代は、ユースの選手も含めて6学年で切磋琢磨していた。現在トップチームで活躍する面々も、当時の旧友ばかり。負けられない思いは誰よりも強い。

打倒3強、そして王者撃破へ――。

緑のハートは胸の奥にしまい、オレンジのハートを熱く燃やす。


クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/
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https://www6.targma.jp/n-maga/

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