在籍2年目のリベロ難波宏治 長期離脱から復帰してバックゾーンで“領域展開”

開幕戦のコートで勝利の瞬間を迎えた。VC長野トライデンツのリベロ(L)難波宏治は加入1年目の昨季、左膝の故障などが響いてリーグ戦の出場機会がゼロだった。前所属の長野GaRons時代は8mも取っていたという広い守備範囲とレセプションが武器。昨季に味わった挫折と、そこから這い上がろうとする25歳の肖像に迫る。

文:大枝 史 /編集:大枝 令

膝の不調で棒に振った苦難の昨季
「何もできなかった」日々越えて

「初めて、もう全く、何もできないシーズンだった」

昨シーズンからVC長野に移籍してきた難波。開幕のSTINGS愛知戦で膝を捻った感覚を覚えてから、長期間にわたってコートから離れることとなった。

年が明けてからの1〜2月頃からは、アウェイ帯同もできない状況が続く。

「めちゃくちゃ悔しかった。みんな試合している中、家でスマホで見るとか。何のためにここに来たんだろう…みたいな思いがすごくあった」

チームメイトが戦っている姿を画面越しに見る日々。無力感にさいなまれた。それでも川村慎二監督の「来年の10月に照準を合わせてくれ」という言葉を信じて、一歩ずつ回復に向けて歩み続けた。

チームのアウェイ遠征時は有賀康大S&Cトレーナーの元で調整。シーズンオフに入ってもトレーニングを続けた。

9月10日のトレーニングマッチ天津食品(中国)戦に出場した際には「去年できなかった分、ゲームを通して自信をつけていくしかない」と意欲を見せていた。

PROFILE
難波 宏治(なんば・こうじ) 1999年12月7日生まれ、山口県出身。幼稚園年長時に姉の影響でバレーボールを始める。小学校時代は中国大会で3位。高川学園中高でプレー。高校時代は2〜3年時に春高バレーでベスト4に進出した。中京大を卒業後は長野GaRonsへ。2024-25シーズンからVC長野に加入した。レセプションを得意とし、広い守備範囲を武器とするリベロ。170cm、69kg。

人との出会いが紡いだバレー人生
恩師との共闘見据え教員免許取得

難波のバレー人生は幼稚園年長から始まった。2つ上の姉の送り迎えについて行った先で、たまたま男子バレーボールチームに出会ったのがきっかけだった。

「サントリーの藤中颯志選手が同じ幼稚園で、颯志はもうガッツリ幼稚園ながら交ざっていた。一緒に遊んでたりしていたら、気がついたらバレーを始めていた」

小学校時代は県2位、中国大会3位の成績を残した。中学は地元を離れ、高川学園へ。

小学校4年時から誘われていながらも断っていたが、高川学園中・高橋正和監督の熱意に動かされた。全国中学大会で当時全国3位となった銅メダルを持参して「これを金に変えるのは君だ」と口説かれたのだという。

そのまま進んだ高川学園高で1年生途中からリベロに転向。当時はセッターを務めていたが、先輩もいて4〜5番手の立ち位置だった。

「このまま行くとまた上で応援かな…みたいになるのは嫌だった」という思いで監督に直談判し、1カ月後にはポジションを奪った。2年時と3年時には春高バレーでベスト4まで進出。3年時は山田航旗と赤星伸城のいる鎮西(熊本)に敗れた。

大学への進学は中学の恩師である高橋監督の影響が大きかった。

「全てにおいて尊敬できる人。いつかこの人のもとでもう一回バレーをしたい。選手と監督じゃなくて、自分が指導者になってやりたい」

その思いから、教員免許が取得できる中京大に進んだ。そこでは元日本代表・青山繁監督のもと、レセプションを徹底的に叩き込まれた。

「アオさん(青山監督)がアドバイスを親身にしてくれたから自信がついた。あの大学の4年間がなければ、キャッチが上手くなっていないし、今頃は教員をやっていたと思う」

高校の時は主にディグを上げるリベロとして活躍していた難波。大学に入ってからレセプションに自信をつけ、「次のカテゴリーでやりたいと思えた」と振り返る。

卒業後に加入した長野GaRonsで3年目には当時のV3リーグ・ファイナルまで進み、難波は敢闘賞を獲得。そのタイミングで声がかかり、VC長野に入団した。

1年越しのリスタートへ意欲十分
ライバルとともに挙げたい勝ち星

VC長野は昨季、Lは備一真が全試合に出場。バックコートの小さな巨人として絶対的な存在感を示していた。しかし昨季限りで備は退団し、ポーランドへ移籍。残ったリベロ陣には重圧がかかっていた。

「『VC長野のリベロは大丈夫か?』みたいな声もあると思うけど、そこをひっくり返してやるような、良い意味で期待を裏切れるように準備していきたい」

そう語気を強める難波。古藤宏規との2枚看板で、チームの砦となる決意だ。

「自分1人だけリベロがいるわけじゃない。古藤と力を合わせながら、2人でVC長野のリベロとしてやっていきたい」

1学年下の古藤とは中京大でともにプレーしていた間柄。難波が大学4年時の全日本インカレでベスト8まで進んだ時に出場していたのは古藤で、自らは控えだった。

一人では足りないかもしれない。それでも難波は当時からしのぎを削ってきたライバルと力を合わせて重圧を跳ねのける。古田博幸コーチは「できたら1人でやってほしい」としながらも、リベロ2枚体制も視野に入れる。

実際、9月20日に行われたレーヴィス栃木とのトレーニングマッチ。第3〜4セットはレセプション時には難波、ディグ時には古藤と使い分けるオプションも見せた。

「主力が抜けたとはいえ、新しい外国籍選手もベテランの方も入った。若手とベテランが融合して、去年よりもいいシーズンを送れるようにしたい」

広い守備範囲とレセプション力を武器に、「とにかくリベロとしてチームを鼓舞できるように頑張りたい」と意気込む難波。日鉄堺BZとの開幕戦ではGAME1の第3セットから出場してSVリーグデビューを果たした。

第4セット、14-15で1点を追う場面ではマシュー・アンダーソンのクロスに打たれたスパイクをディグ。続けてブロックフォローも拾い、ブレイクに繋げる。そのまま歓喜の瞬間をコート内で迎えた。

「負けることも勝つこともあると思うけど、とにかく目の前の試合を戦って、去年以上の成績を出せれば良い」

開幕連勝で首位発進と最高のスタートを切ったVC長野。第2節の対戦相手・WD名古屋はアタック決定率53.2%で1位、サーブ効果率9.3%で2位と、その攻撃力は目を見張るものがある。

その強豪に対しても、シーズン前から鍛えたトータルディフェンスで勝利をつかみ取る。


SVリーグ第2節 ウルフドッグス名古屋戦 試合情報
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div2-1
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

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