「失敗を恐れず、まずはトライ」小川貴史GM 新体制で目指す“ネクストステージ”

2025-26シーズンから新たにVC長野トライデンツのゼネラルマネージャー(GM)に就任した小川貴史氏。大分三好ヴァイセアドラーでコーチ、監督、チームディレクターを歴任してSVリーグの舞台へ。チーム編成権限を持つGMでありながら、現場に出て選手にアプローチしたり、クラブとのパイプ役を担ったり。一般的なGM像とは異なる独自のスタイルでチームを導く小川GMに、就任の経緯からチームの現状、今後の展望までを聞いた。
文:大枝 史 /編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
川村監督からの誘いに決意固める
コミュニケーションを武器に
――まずはGM就任の経緯を教えてください。
川村慎二監督から「一緒にやらないか」という言葉をいただきました。SVリーグは目指していた舞台の一つだったので、「どういう形であれ力になれれば」という思いで長野に来ました。
――GMとしての職務領域はどのようになりますか?
自分は少し特殊な形だと思います。チームの編成はもちろんですが、去年まで現場でやっていた経験を生かして、現場の空気を感じながらサポートもしつつ、チームを良い方向に導いていければと思います。

あとはフロントとのパイプ役でもあります。現場のスタッフが望むような形で進んでいけるようにコミュニケーションをしっかり取れるのが自分の武器だと思っているので、そこはやっていきたいです。
――一般的なGM像とは違うアプローチになりますか?
「GMだから話しにくい」ではなくて、どんどん何でも相談してもらっていいと思っています。現場に出て、話す空気を作る。いろんな相談もあるだろうし、そういう空気を作るのは自分ができることだと思います。

他のGMはドンと座ってしっかりやっていますが、1年目でそれをやるのは難しいかもしれません。まずはしっかりとこのチームを知る。そして知るにはやはりコミュニケーションを取るのが一番手っ取り早いと思います。

PROFILE
小川 貴史(おがわ・たかし) 1978年12月11日生まれ、長崎県長崎市出身。鹿屋体育大学から2003年に大分三好ヴァイセアドラーに入団。2006年にはV1の最優秀選手賞と得点王に輝く。以後、大分三好でコーチ、監督、チームディレクターと歴任。2024-25シーズンはフラーゴラッド鹿児島の監督を務めた。
KINGDOM パートナー
2桁勝利の難しさを知るからこそ
チームに「意識の高さ」を要求
――現状のVC長野というチーム全体の見立てと課題感はどのように感じていますか?
昨シーズンが10勝、2桁勝利をしています。自分もトップリーグで戦ってきて、2桁勝つ難しさはすごく感じていますので、そこにはすごく伸びしろがあると思います。

一つ課題としては、他チームと同じようなモチベーションで挑んでは絶対に上回ることができないと思います。もう1つ上に行くという意識の高さは練習中からも、練習試合でも発揮していかないといけません。
そこのムラはまだチームとしてあると思います。短い時間に集中する、練習試合を集中して勝っていく。そのオンとオフをもっと選手が理解して、そこに詰め込んでいければ、おのずとチームとしてより高みを目指せる環境になると思います。
――昨シーズンの主力選手が抜けた影響についてはどう見ていますか?
去年は去年です。新しくなったこのチームで、「絶対に自分がやらないといけない」と感じている選手はたくさんいると思います。ただそれを出し切れていないだけで、もっと出していけるサポートはしていきたいと思います。

逆にその必要性があって、必ず出していかないと去年以上の成績はなく現状維持になってしまいます。そこから選手が「勝ちたいんだ」という気持ちを打ち出す後押し。それは監督・コーチの仕事かもしれませんが、それも携わっていくというのが、僕が他のGMとは違うところだと思います。
「在籍したい」と思えるチームへ
まず7〜8位を目指して次の段階に
――どういったチームデザインをお持ちですか?
元々VC長野はライバルであって、対戦相手でもありました。外から見て中に入るまでの過程で、すごく進化したと思います。チームとしての土台、基盤もできています。あとはそこから上に持っていく選手、編成、強化。そのポジションを強化していかないといけません。

もちろん選手を入れて勝っていくのは簡単だと思いますが、今までの選手がSVリーグになってプロ化して、もっとバレーボールに集中していける環境を作れるかというのも大事です。そこに入ってくる強化選手、海外の選手、学生、内定選手との勝負もあります。
そういう意味では競争を生んで、高みを目指していけるチーム編成を目指していきたいと思っています。
――選手が来たくなるような、そしてこのチームにずっと居たいと思えるようなチーム作りが急務にも感じます。
おっしゃる通りですし、まさしく今そこを目指していますし、今後いろんな形で示していけると思います。まだその中身については詳しく話せないですが、チームとしても動いています。

しっかりとバレーボールに打ち込める環境は整っています。そういう意味ではもっともっと発信していかないといけません。学生にもそうですし、海外から来る選手にもそう。今後その辺もしっかりと整備して、「良いな、行ってみたいな」と思ってもらえる環境を作っていきたいです。
そのためにも今までの10位、9位という順位を脱却し、周りのチームから見てもファンから見てもお客さんから見ても「上にいるチームだよね」と思ってもらえるように、まずは8位、7位に食い込むのは今シーズン大事だと思っています。

失敗を恐れず、まずはトライ
「やりましょう」から壁を破る
――改めて、GMとしての意気込みや思いをお聞かせください。
まず個人として失敗を恐れない。やりたいと思ったことはどんどんやっていきたいです。それでダメだったら改善していけばいいと思っています。「これはやめておこう」とか「これはGMとしてちょっとどうかな」となるのが一番ダメだと思います。やはりトライする。実際にやってみないと始まらないと思います。

まず失敗を恐れない。それはチームのテーマでもあると思います。
選手も、「声がなかなか出ない」ではなくて、出して、「それ違うよ」と言われたら修正すればいいんです。まずはトライする気持ちというのが、このSVリーグで壁を破るキーポイントだと思います。