マイナス上回るプラスを “本番”に向け始動した松本山雅の熱量

2026年6月23日、松本市の信州グリーンフィールドかりがね。短い休息を終えたJ3松本山雅FCが、8月開幕の新シーズンに向けて始動した。6月7日に閉幕したJ2・J3百年構想リーグは、昇降格を伴わない特別シーズン。J2昇格が懸かる“本番”の2026-27シーズンは、選手たちの目の色も、始動日に約200人が詰めかけたサポーターの期待度も違う。そのシーズンの行方を左右すると言っても過言でない重要な6週間が始まった。

編集:大枝 令

KINGDOM パートナー

主力流出に揺れたオフ
「抜けた影響は大きい」

午前9時から短時間のミーティングに臨んだ選手たちは、サポーターが待ちわびるピッチへ勢いよく駆け出していった。

シーズン中の緊張感から解放されていた体と心を再起動するかのように、フィジカルトレーニングやインターバル走で少しずつ刺激を加えていく。全体練習の最後は狭いエリアでの13対13のミニゲームで汗を流し、初日の練習は約2時間で終えた。

「この1週間は体を立ち上げる。本格的な練習は合宿(御殿場キャンプ)から」と石﨑信弘監督。塩尻市出身のDF樋口大輝は「新しい選手とコミュニケーションを取りながら良い雰囲気でできた。良いゲームができる集団ではなくて、勝てる集団をつくっていきたい」と表情を引き締めた。

短いオフの間、チームは文字通り揺れた。

オフを利用した戦力の入れ替えは必然だが、松本山雅は複数の主力選手が上位カテゴリーへの移籍を決断してクラブを去った。

主将を務めたMF深澤佑太がJ2湘南ベルマーレ、エースに成長したMF村越凱光がJ2テゲバジャーロ宮崎へ移籍。さらに、始動日直前になってDF小田逸稀がJ2大分トリニータ、FW加藤拓己がJ1京都サンガF.C.へ移籍することが発表され、百年構想リーグの屋台骨を支えた中心選手を欠くことになった。

「流出は避けたかったので全員を全力で慰留した」と都丸善隆スポーツダイレクター(SD)。より高いレベルに挑戦したいという選手の気持ちに理解を示しつつ、始動日数日前に受けたオファーによって移籍が決まったケースもあった――と明かし、「覚悟はしていたけれど、想定以上に流出した。抜けた影響は大きい」と認める。

泰然自若の指揮官
「新しい刺激あった方がいい」

移籍した4選手は、いずれも百年構想リーグを前に就任した石﨑監督が取り組むチームづくりの根幹を担っていた。言い換えれば、百年構想リーグでの戦いを継続するためのキーマンを欠いたことになる。

この半年間で積み上げてきたものは、水泡に帰してしまうのか――。

その問いを、笑顔で否定したのは他ならぬ石﨑監督だった。

「ずっと同じ選手でやるより、また新しい選手が入って刺激があった方がいい」

この日は、新加入の7選手全員が練習に参加。J1通算172試合出場24得点の実績があるMF金子翔太や、当時J3のヴァンラーレ八戸で石﨑監督と共に戦った経験を持つDF蓑田広大ら歴戦の選手も加わった。

ミニゲームでは、金子翔がボールサイドに繰り返し顔を出し、蓑田はMF澤崎凌大やDF二ノ宮慈洋ら新たなチームメイトの名前を呼びながら大声で指示を出すなど積極的な姿勢が印象的だった。

総じて軽めだったメニューとは裏腹に高い熱量を持って練習に臨んだ新戦力。さらに、FW井上愛簾が球際で激しく寄せたり、FW田中想来がインターバル走を先頭で引っ張ったりと既存の選手たちも懸命にアピールする姿勢が随所で見られた。

主力が抜けたマイナスを、新旧戦力が刺激し合って成長するプラスが上回れば、J2昇格の目標が近付くことはあっても遠ざかることはないはずだ。

サポーターと共に目指す目標
「あの熱量を誇りに」

16年に在籍していた清水エスパルスの主力として松本山雅と激しいJ1昇格争いを経験した金子翔。松本山雅のホームで臨んだ直接対決を0-1で落とした試合の記憶が「すごく残っている」と話し、こんなエピソードを披露してくれた。

「あの時の松本山雅サポーターの熱量。点が入った時の『止まらねえ俺たち松本』というチャントが今でも(記憶に)残っている」

松本山雅のゴールが決まった時に歌われる「SEE OFF」を正確に口ずさみ、「それを自分がピッチで聞いて戦うことができる。すごく誇りに思う」と力を込める。

「新戦力は誰が出ても戦える。層は厚くなっている」と都丸SD。この先も補強を模索する考えを示し、「(さらに)数人の戦力を加えて戦える状態にしたい」と話す。

「いる選手でチームとしてやるべきことをやる。それは、その前(百年構想リーグ)も同じ」と石﨑監督。まずは始動日に顔をそろえた26選手と共に、“本番”に向けた厳しい鍛錬に取り組むつもりだ。


松本山雅FCオフィシャルサイト
https://www.yamaga-fc.com/

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