故郷を離れて感じた成長と感謝 三ツ井利也が進む新たな道

2024-25シーズンまで9年間にわたって信州ブレイブウォリアーズでプレーした長野市出身の三ツ井利也。信州を象徴する選手の一人だった三ツ井は今季、越谷アルファーズ(B1)に移籍し、新たな環境でシーズンを過ごした。ケガやコンディション不良もあって出場機会は限られたが、6月に32歳となった今も成長を実感する充実感を得られた――と語る。オフを利用して帰郷した三ツ井に、この1年間を振り返ってもらいながら信州への思いを聞いた。

文:芋川 史貴

KINGDOM パートナー

衝撃の退団から1年
越谷で学んだ向上心

信州ブースターに衝撃を与えたリリースが発せられたのは、2025年5月27日だった。

「三ツ井利也選手 契約満了および自由交渉選手リスト公示のお知らせ」

東海大を卒業して加入したルーキーイヤーから数えて9年目。チーム最古参の地元選手が契約満了によってチームを去ることを伝えるニュースだった。

三ツ井は1年前を振り返り、「本当に突然の退団だったし、移籍先が決まるか分からない不安もあった」と実感を込める。

契約満了のリリースからちょうど1カ月後。B1越谷アルファーズから選手契約合意のリリースが発表され、三ツ井の新たな挑戦が始まった。その1年目は、苦しい時間の方が多かったようだ。

「開幕前に行われたプレシーズンゲームの前日にケガをしてしまった。身体の状態も良かったし、プレシーズンゲームにもある程度絡めていたからこそ、めっちゃ悔しかった」

信州でのラストイヤーとなった2024-25シーズンは、プレーオフを含む68試合全てに出場。一方、越谷ではケガやインフルエンザ感染などによるコンディション不良もあって19試合の出場にとどまった。

「復帰した時にはチームが完成していて、なかなか入る隙間がないまま終わってしまった」

大学時代を除き長野県内で生活してきた三ツ井。「埼玉県での生活や、練習の強度の違いに慣れることに苦労した。練習で疲れてご飯が食べられない時期もあった」と環境の変化への戸惑いがあったと明かす。

頬がこけるほど痩せてしまった姿に心配する声も寄せられたが、「決してメンタルを病んだわけではないから安心してほしい」と気丈に振る舞った。

「張り切りすぎたところもあったかもしれない」

「信州では1個や2個のミスがあってもコートに立ち続けられたけれど、越谷では信頼を積まなきゃいけない状況だった」

何度も移籍を経験している選手なら当たり前かもしれない環境や立ち位置の変化が、長く同じクラブに在籍した三ツ井にとっては大きな障壁になった。

その壁を、三ツ井は自分を成長させるためのハードルだと捉えた。

「信州時代は立場を確立したからこそ、細かい部分を修正するだけだった。そこが9年間いた良さでもあったし、弊害でもあったと思う。無意識にあぐらをかいていた。もっと向上心を持ってやらないといけないことは移籍して痛感した。この1年間が一番成長できたかもしれない」

勝久マイケル氏から得たもの
「本当に感謝しかない」

今季限りで信州のヘッドコーチを退任した勝久マイケル氏から潜在能力を開花させてもらったとの思いは強い。

「どんな選手にも(マークに)つける強みを作ってくれたのはマイケルさんのおかげだった」

相手の外国人エースを粘り強く抑える体力と気力を磨き、ルーズボールに泥くさく飛び込む気迫も光った。ディフェンス面だけでなく、ここ一番で3ポイントシュートを沈める姿は信州ブースターの記憶に鮮明に残っているはずだ。

「あれがなかったら今の自分はない。本当に感謝しかない」と力を込める。

後に日本代表に成長した狩野富成(東京サンロッカーズ)や、長崎ヴェルカの主力として25-26シーズンのB1チャンピオンに輝いた熊谷航など、勝久氏の指導によって飛躍した選手は多い。

三ツ井も移籍によって勝久氏から受けた恩恵を実感している。

「気が遠くなるくらい緻密にやっていた。けれど、そのおかげで味方や相手のリアクションに対しての引き出しで苦労せずに、すぐに対応できた」

勝久氏に選手として成長するためのベースを築いてもらい、勝久氏やチームメイトとともに取り組んだ信州でのバスケットボールが地域に文化として根付き始めている。地元を離れ、かつての自分自身や信州のことを一歩引いた視点で見ることができるからこそ、そう思う。

「マイケルさん残した功績はとても大きいし、支え続けたファンの皆さんの文化にもなっていると思う」

冷めない故郷への愛情
「長野県のバスケに恩返しを」

越谷の試合会場にも、三ツ井を応援するために駆けつけた信州ファンの姿があったという。

「本当にうれしかったし、改めてそういう人たちに支えられていると思った」

26-27シーズンも越谷でプレーすることが決まっている。

移籍1年目に味わった悔しさをバネに選手として成長し、チームに貢献したい思いを強くすると同時に、生まれ故郷への愛情も失っていない。

てて「もう少し余裕が出たら、長野県で自分が経験したことを子どもたちに伝えていく活動をしたいと思っている。長野県のバスケに育ててもらった恩返しもしないといけない」

その日のためにも、今は選手として高みを目指す歩みを止めない――。そう決意している。


越谷アルファーズ選手契約情報
https://www.koshigaya-alphas.com/news/202627s_resigned_info_kazuyamitsui

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