“スポーツ×医療”のメディカルフィットネス「アルクラール」 成果挙げ施設拡充

松本市の百瀬整形外科スポーツクリニックが運営するメディカルフィットネス「Alcurar(アルクラール)」が、利用者数を増やしながら成果を挙げている。スポーツと医療の連携を目的にクリニック内に開設して5年目。医師の診断を基にトレーナーが個別のプログラムを組み、きめ細やかな運動指導を行うことが特徴だ。治療やリハビリといった患部のケアにとどまらず、運動習慣を身に付けることや傷害予防を目的とした健康な体づくりに寄与している。増設計画も進むアルクラールの成果と今後の展望について、百瀬能成院長や担当トレーナーに考えを聞いた。

取材:大枝 令


診断を基に個別プログラム
動きながら健康な体づくり

さまざまな角度から負荷をかけられるウエイトマシン「フリーダムトレーナー」や、接地面のクッション性が高いランニングマシン「トレッドミル」などの機器が並ぶフロア。プロアスリートもトレーニングに使う「ワットバイク」や多種多様な筋力トレーニング機器もそろい、設備は専門のフィットネスジムと比べても見劣りしない。

一般的なフィットネスジムでは、スタッフから指導を受ける場面はあっても、利用者が思い思いの負荷やペースで体を動かすことが多い。メディカルフィットネスはそれとは異なり、「医師の診断を基にトレーニングを処方し、専門のトレーナーが指導に当たることがポイント」と百瀬院長は強調する。

ケガで病院を訪れた人は、疾患の状態はもちろん年齢も体格も千差万別だ。だからこそ、「同じトレーニングをしても同じ効果を得ることはできない。個別のプログラムを作って個別にアプローチすることで、効率良く健康な状態を維持できる」と百瀬院長。クリニックを新設するにあたり、メディカルフィットネス「アルクラール」の併設はコアの一つだった。

開設当初からのスタートメンバーとして利用者と向き合ってきたのが、トレーナーの東良道さんと北澤俊哉さんの2人。利用者数は延べ約380人、現在は約210人が会員として通っている。

医師の診断をベースとし、アルクラールでも独自の測定を実施。それらの数値や会員からの聞き取りなどに応じて個別のプログラムが作成される流れだ。

例えば、膝の痛みで受診した患者に対して、背骨の動きや尻周りの筋肉にもアプローチ。患部の痛み改善はもちろん、全身の健康状態を向上させる指導ができる――といった強みがある。

1日あたりの利用者は40〜50人ほど。プログラムに応じ、トレーナーがマンツーマンで指導するパーソナルトレーニングに加え、利用者が空いた時間や体の状態に応じて自主トレーニングに臨んでいる。

途中退会が少ない継続利用率の高さも特徴の一つだが、東さんは「退会する利用者も、状態が良くなったので今後は個人でトレーニングを続けたいという方が多い。それを私たちは『卒業』とポジティブに捉えている」と話す。

見違えるような成果も
「運動習慣つけてケガ予防を」

成果を挙げた実例を紹介する。

1人目は、70代後半の男性。腰の痛みがあったため受診し、腰部脊柱管狭窄症の診断が下った。背中が丸まり、長時間の歩行が困難な状態。当初は測定もできないほど深刻な状態だったという。

この男性に対して、まずは柔軟性を出すプログラムを組み、段階を追って筋力を付けていくトレーニングに取り組んだ。男性は自宅が近かったこともあり、毎日のように顔を出して自主トレーニングを実施。半年ほどで成果が見えるようになり、背筋が伸びて歩行も日常生活に支障のない程度まで回復したという。

2人目は50代後半の男性。本格的にテニスをしていた中で、プレーができないほどの痛みが膝に出るようになってクリニックを受診した。診断名は変形性膝関節症。治療とリハビリを経てアルクラールに入会した。

この男性に対しては、身体の使い方を意識したパーソナルトレーニングを実施。自宅にもトレーニング機器をそろえた男性は3年間のトレーニングを経て、痛みが出る前より切り返しが早くなったり打球速度が上昇したりといった顕著な効果が見られたという。

「誰もが運動を必要としているが、自分に合った正しいやり方が分からない人が多い。この施設は、全ての人にサポートできることが強み。子どもから100歳の高齢者まで安全に安心して通ってもらうことができる」と北澤さん。

かつて総合病院で健康運動指導士を務めていたチーフトレーナーの東さんは「入院患者は1日40分間のリハビリ以外で身体を動かす時間がなく、筋力が落ちてしまって退院しても日常生活が大変になる」と指摘。「ここでは医師や理学療法士と情報を共有しながら利用者と接することができる。患部を良くするだけでなく運動習慣をつけてもらうことで再発の予防、健康増進に繋げることができる」と力を込める。

別角度からのケアにも力点
拠点を増設して機能強化へ

4年前からは柔道整復師の資格を持つ小林由弥さんがスタッフに加わり、別角度からのコンディショニングやケアにも力を入れている。

アスレチックトレーナーでもある小林さんがクリニックのリハビリテーション部門とアルクラールを繋ぐパイプ役を担い、個別の利用者に対して最適なトレーニングの方法を模索。例えば肩こり、腰痛、膝痛などを抱えながらも運動やトレーニングをしたい利用者には、パーソナルトレーニングに加えて施術(ケア)を行うことで、より効率の良い運動効果が期待できる。

小林さんは「施設内はもちろん、行政と連携するなど施設外の活動にも力を入れ、地域全体の健康づくりに貢献したい」と力を込める。

利用者が増えて現有施設が手狭になってきたため、同クリニックは近くにあった空き店舗を取得して改修。アルクラールの機能を強化する計画を進めている。

百瀬院長は「これまでの医療は投薬や手術がメインだったが、『メディカルフィットネスも医療の一つ』という考え方が出てきている。特に中高年の方は痛みがあると体を動かしてはいけないと考えがちだが、それでは筋力が落ちて患部も悪化する悪循環に陥ってしまう。アルクラールでの取り組みを通じて『安心して体を動かしていきましょう』と伝えていきたい」と展望している。


百瀬整形外科スポーツクリニック
https://momose-seikei.jp/
メディカルフィットネス アルクラール
https://alcurar.jp/

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