日本代表・髙橋藍と8年ぶりの“再会”へ 工藤有史が示す意地
すでにトップリーグでの経験は積んできた。明治大から加入したアウトサイドヒッター・工藤有史。昨季まで2シーズンは強化指定選手としてVC長野のリーグ戦などに出場。大卒1年目の今季がSVリーグへの再編と重なり、新たに船出するチームの一員となった。「このチームで上位に行きたい」――。長野を背負って、国内最高峰のSVリーグに挑む。
取材:松元 麻希/文:大枝 令
明治大でも2季VC長野でプレー
すでにチーム内で一定の存在感
「1シーズン目は周りが全く見えなくて、何もわからない状態。パワーも高さも全く違う。まず自分がVリーグに出ていること自体が信じられなかったし、緊張で体が動かないこともあった。2シーズン目は多少慣れたと思うけど、それなりに適応に時間はかかった」
本人は謙遜するものの、一定の存在感を示してはいた。
明治大に在籍した昨季までの2シーズンは、VC長野の強化指定選手として44試合に出場した。レギュラーシーズン通算でのサーブレシーブ成功率は、昨季大きく盛り返して52.9%(644/946)。攻撃は128セット400得点。規定本数に満たないためランキング外だが、バックアタック決定率は53.2%(67得点/126本)と高水準の数値をマークした。
そして今季、大卒で加入した。
PROFILE
工藤 有史(くどう・ゆうじ)2001年9月24日生まれ、大阪府出身。パンサーズジュニアでプレーし、JOC都道府県対抗大会の大阪府選抜では、同期入団の中島健斗(天理大出身)とチームメイト。清風高(大阪)では春高バレーで準優勝と4強を経験し、明治大でも絶対的エースとして中心的な役割を果たした。VC長野には3年時から強化指定選手としてレギュラーシーズン通算44試合に出場。攻守ともに安定した力を発揮するアウトサイドヒッター。190cm、80kg。
「僕はディフェンスを期待されているので、より伸ばさないといけない。安定感を出すのもオフシーズンの目標にして取り組んでいた。ただ、ディフェンスの選手とはいえ攻撃も伸ばさなければいけないし、(川村慎二)監督にもそう言われている。ミスしないとか止められないとか、打ち方の工夫を今まで以上に考えている」
大阪府出身。パナソニックパンサーズ(現大阪ブルテオン)のアカデミーに相当する「パンサーズジュニア」でプレーした。中学2年時の2015年には全国ヤングバレーボールクラブ男女優勝大会を制覇。ちなみにその大会ではOkaya JVCと2回戦で当たっていた。
当時からパナソニック出身の川村慎二監督にはよく知られており、今回もその縁で強化指定から入団に至る。
指揮官は「いいものを持っていてもっと強化できるが、過去2シーズンとも大学の勢いでプレーしていた部分もあった。それだけでは通用しなくなるので、どうアプローチしていくか」とポテンシャルに期待を寄せる。
実績ある2人にアドバイス受け
新チームの仕上がりに手応えも
苦しい2シーズンを送った。
昨シーズンはヴォレアス北海道から奪った白星がチーム合流前。勝ちたい――という意志と同等かそれ以上に、「報いたい」という思いがある。
「ホームゲームの声援がすごく温かい。負けるたびに毎回『申し訳ない』という思いを感じてきたからこそ、ファンの人たちと1勝でも多く一緒に勝ちたい。そこが一番大きい」
新たなSVリーグでファンと喜びを分かち合うために、準備を積み重ねる日々。過去2シーズンを踏まえ、新チームに対する手応えも少なからず抱いているという。
「練習中も試合中も、コミュニケーションが増えた。ワンプレーごとの確認もそうだし、お互い『もっとこうした方がいいんじゃないか』とか意見を言い合うようになって、より良い方向に行っているんじゃないかと思う」
そうした雰囲気の原動力になっているのは、迫田郭志と樋口裕希の2人。ともに日本製鉄堺ブレイザーズから新たに加入した28歳で、その豊富な経験をチームに吹き込む。とりわけ、若いチームにとっては、「基準」が明確なのが大きい。
「迫田選手と樋口選手に『今のはこうした方がいいんじゃない?』という話をされることが昨シーズンや一昨年より圧倒的に増えている。やっぱり上を経験されている方々なので、技術面だけじゃなくて場面ごとの経験が豊富。新しい感覚を教えてくれる」
日本代表エース髙橋藍とは同学年
「差は圧倒的でも負けたくない」
SVリーグの開幕戦まで3週間を切った。もちろんどのチームも格上で、VC長野にとっては従来通り粘り強く戦いながら白星を希求するシーズンになるだろう。「上位はどこもすごいメンバー。オリンピックで見た選手が昨シーズン以上に多い」と口元を引き締める。
一戦ずつ挑む中で、心待ちにする試合の一つはサントリーサンバーズ大阪戦。日本代表エース・髙橋藍との“再会”だ。
2人は同じ近畿地方出身で2001年生まれの同学年。小学校〜高校時代はチームこそ違うものの身近な存在だったという。
高校時代は工藤が清風(大阪)、髙橋は東山(京都)。近畿大会などで当たる機会はなく、唯一「ニアミス」したのが3年時の春高だった。トーナメントの対角で互いにベスト4進出。髙橋擁する東山は松本国際に勝って決勝に進んだものの、清風は駿台学園(東京)に敗れた。
「もし対戦することになったら、中学以来だと思う」。相手はイタリア・セリエAから鳴り物入りで戻ってきた日本代表のスターだ。それでも「向こうは高校時代にグッと伸びてまだまだ圧倒的な差はあるけれど、負けたくない」と力を込める。
そう、意地がある。
自分としても、チームとしても。
「SVリーグに恥じないチームになりたい。昨シーズンのように常に最下位とかじゃなく、上位に食い込めるように頑張りたい」
たとえ負けても、ファンは温かく声援を送ってくれるのかもしれない。ただ、それに甘えるのではない。「2シーズンとも勝てなくて苦しい思いをした。やっぱりでも、このチームで上位に行きたい」と工藤。世界に名だたるスター軍団に挑み、特大の歓喜をつかみ取る。
SVリーグ 個人成績 工藤 有史
https://www.svleague.jp/ja/record/player_detail/4687
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/