サトタクNavigates バスケット・ラビリンス(5)「A千葉戦で見えた“強豪との差”」

バスケットボールは豪快で派手なプレーが目を引く一方、コート上の戦術面に目を向けると非常に繊細で難解でもある。信州ブレイブウォリアーズはどんなバスケットを目指していて、現在地はどこなのか――。2018年から3シーズン、勝久マイケルHCの元でプレーした佐藤託矢がナビゲートする。5回目は東地区首位・アルティーリ千葉との2試合などで浮き彫りとなった現在地について論じる。

構成:芋川 史貴、大枝 令

2日間とも攻守に後手を踏む展開
チームケミストリーに大きな差

シーズン60試合のうち24試合を消化した信州は、現在15勝9敗で東地区の4位に位置している。12月14-15日にはアルティーリ千葉(東地区1位)、18日にはライジングゼファー福岡(西地区1位)と対戦し3連敗中だ。

正直に言うとこの3試合は、信州の悪さが目立った連戦だった。

特にA千葉とのGAME1は、第1クォーター(Q)の入り方が悪く10-27。この点差がそのまま最終スコアに響いた。強豪との対戦だったため選手たちからは気合いも伝わってきたが、そこがまったく生かされなかった。

信州の攻撃の起点となる、ピック・アンド・ロールを中心に振り返ろう。

A千葉との GAME1第1Q、残り5分16秒の場面。フロントコートまでゆっくりボールを運び、ピックをかける側もスピードが遅い。悪い時のオフェンスの典型例だ。

そうなると相手ディフェンスとの距離を空けることができず、ショットクロックぎりぎりでの難しいシュートやパス選択を余儀なくされる。なおかつ周りも動きが止まってアウトサイドにいることが多い。

するとシュートが外れた際にセカンドチャンスが生まれないし、相手の立場から見ると守りやすい。つまり1ポゼッションのクオリティがとても低いということであり、序盤からあまり改善が見られていない点でもある。

特に顕著だったのがA千葉戦。GAME1はオフェンスリバウンド(OR)が6-17、ディフェンスリバウンド(DR)が21-34、セカンドチャンスポイントが4-22。GAME2はORが10-15、DRが27-35、セカンドチャンスポイントが8-26と攻守にわたって後手を踏んでいた。

一方で良い時のオフェンスが出たシーンもある。

同じくA千葉とのGAME2第4Q、残り9分23秒の場面。ボールの回りがよく、ピックの際にしっかりとセパレート(相手との距離)を作れている。相手ディフェンスが遅れてノーマークのシュート、もしくはドライブインが生まれる。さらに周りの選手もその動きに合わせているので、ORに絡めてセカンドチャンスが生まれやすい。

このように良いプレーも徐々に増えてきているが、まだまだ信州はペリン・ビュフォードやテレンス・ウッドベリー頼りに見えてしまう部分がある。彼らの攻め方を見てからプレーに入っているため、判断や次のオプションへの切り替えが遅い印象だ。

昨季からメンバーがほぼ変わらないA千葉との対戦を通じ、チームケミストリーや完成度の差が見えたのは事実だろう。まだまだリバウンドの弱さや、一つ一つの攻めと守りの遂行力も及第点にはほど遠い。

「信州のバスケットの特徴」を聞かれても説明が難しいほど、今の信州にはこれといった特徴がまだ出てきていない。このように、改めて課題が浮き彫りになった3連戦だった。

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目標達成に向けて重要な中盤戦
ドンリー、チェンバースらに期待

前半戦の大一番を勝ち切ることができなかった信州だが、これで終わりではない。まだまだシーズンは5分の2を消化したばかり。ここから中盤戦に向けてチーム力をより一層強化するフェーズに入ってくる。

中盤戦以降のカギとなるのがエリエット・ドンリー、アキ・チェンバース、生原秀将の活躍だろう。もちろん全員のステップアップや活躍に期待しているが、特に僕はこの3人に注目している。

ドンリーはスタッツ面でも調子が上がっているのが如実に表れているし、ビュフォードとウッドベリーの攻撃軸に新たな選択肢を加えている。チェンバースも徐々に調子を上げていて、さすがベテランの活躍を見せている。

この2人に関しては、シュート力が安定してコンスタントに活躍することができれば、チームの負担はより軽減するし、それができる選手だと思う。ドンリーはより積極的にリングにアタックして、チェンバースは限られたシュートチャンスの中で成果を残してほしい。

また生原は生粋のポイントガードとして、持ち前のディフェンスだけでなく、ゲームコントロールを生かしながら、ビュフォードとウッドベリー、石川海斗とウェイン・マーシャルといったオプション以外の選択肢をチームにもたらし、攻撃の幅を広げることができると思う。

生原も含めてケガ人が帰ってきたら、より一層チームは強くなるのは間違いない。

今回は少々辛口のコメントになってしまったが、今まで勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)が作り上げてきた信州のカルチャーはこんなものではない。まだまだチームは成長して強くなると思うし、目標のB2優勝、B1昇格のためには強くなっていかないといけない。

前半戦を終えて現在地が見えた信州。反省をどのように生かし、中盤戦での成長を見せられるか。まずはその一歩として21日-22日にホームで行われる富山グラウジーズとの試合で勝利をつかめるか、注目したい。

PROFILE
佐藤 託矢(さとう・たくや) 1983年8月25日生まれ、大阪府出身。東住吉工高(現・東住吉総合高)時代はウインターカップ、インターハイともに4強を経験し、青山学院大ではインカレ準優勝。卒業後は当時JBLの三菱電機からスタートし、千葉ジェッツ、京都ハンナリーズなどを経て2018〜21年に信州でプレーした。引退後はクラブの「信州ふるさと大使」となり、今季からはアカデミースーパーバイザーも兼任。「ど素人バスケ」と出張型パーソナルトレーナーを自主事業とするほか、養護学校などでのボランティア活動も実施している。好きなおつまみは梅水晶。


ホームゲーム情報(12月21-22日、富山グラウジーズ戦)
https://www.b-warriors.net/lp/game_20241221_20241222/
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/

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