【Farewell-column】完全燃焼、悔いなき現役生活 信州Aries・黒鳥南

初代王者という有終の美を飾ったルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズ。そのチームからも新たな世界への一歩を踏み出す選手たちがいる。今回は入団2年目でリーグ優勝を経験した主力の一人・アウトサイドヒッター(OH)黒鳥南にフォーカス。チームに対する貢献や、記念碑的な現役ラストシーズンを振り返ってもらった。

文:大枝 令

スピードある攻撃などで存在感
チームの「初代王者」に貢献

「達成感しかない。本当に後悔していないし、今までつらいことも、途中で辞めたいと思うことも何回もあったけど、続けてよかった。だからこうして結果もついてきた」

すがすがしい表情で、黒鳥南は現役生活を振り返る。

クイックネスなどを武器とする169cmのOH。2024-25シーズンはミドルブロッカー(MB)山村涼香とほぼ同じ234得点をマークした。

「速いトスに対して相手のブロックが1枚ブロックとか1.5枚になるから、そこでしっかり確実に決められるように、スパイクの打つコースも工夫してやれていた」

OHはサーブレシーブも重要なポジション。黒鳥はチームで4番目の数字となる54.9%だった。

「返球率を上げないとミドルも使えないし、2段トスばかりになってしまう。サーブレシーブは何としても返そうという思いでやっていた」

コートの中で、常に一定以上の存在感を示していた。

リーグ終盤は苦しい時期も経験
逃げたい思いを抑えて前を向く

ただ、難しい時期もあった。

2025年3月1-2日の、広島オイラーズ戦。アタックが決まらないなど苦しみ、自身はGAME1の第1セット途中で交代となった。GAME2はチーム内で唯一、出番なし。

「うまくいかなくて、自分が原因でチームのみんなに迷惑をかけた」。試合は2試合ともセットカウント3-1で制しはしたが、後味の悪さが残った。

「絶対初代王者に向けて頑張らなきゃ…という思いを自分の中で入れ直して、でもやっぱりそれでもうまくいかないときもあって、『逃げたい』と思うときも正直何回もあった」

「でもここで逃げたら負けだし、そういう考えを持っている人がチームにいることがチームにとってはマイナス。広島戦を機にもう一回頑張ろうと気持ちで入れ直した」

周囲からの励ましも力に変え、その後はタフなアウェイ連戦でも躍動。プレーオフの2試合でもその力を発揮し、歓喜の輪の真っただ中で笑顔の花を咲かせた。

「やり切ったという感覚があったし、そこにプラスして優勝できた。私の中ではすごく達成感があった」

達成感を得られたからこそ引退
社業から新たな自分の道を模索

だからこそ、区切りをつけるタイミング――という決断に至った。

「辞めたいと思ってやっていたわけではない。でも今回の初代王者は1回しかない。最後の試合に懸けて出し切るつもりだった」

「だから、優勝したらそうなるかもしれない…ということは考えていた」

一顧の憂いもなく、すがすがしく幕を引いた黒鳥。「次のことを考えてバレーをしていたわけではないので、一旦やり切って終わって、まず社業に専念したい」と明かす。

新潟県出身。古川学園高(宮城)では2学年下のバルデス・メリーサ(現PFUブルーキャッツ石川かほく)とポジションを争った日々。新潟医療福祉大を経て2023年に信州Ariesへと加入した。

2年間で、ファンとの絆も強まった。応援を力に変えて戦うのは、来季のチームも同じ。最後に、連覇に向けて力強くエールを送った。

「どんなに遠いアウェイの会場でも、北海道でも広島でも足を運んでくださるファンの方々もいてくださって、すごく力になった。ファンの方々に会えるうれしさも頑張る力になった」

「目指す連覇も簡単なことではないと思う。今まで以上に強い気持ち、熱い気持ちを持ってみんなには頑張ってほしい。私も試合を見に行けるときは行きたいし、今後のアリーズにも期待してほしい」

PROFILE
黒鳥 南(くろとり みなみ)2000年11月21日生まれ、新潟県出身。古川学園高(宮城)時代は2学年下でキューバ出身のバルデス・メリーサとポジションを争っていた。新潟医療福祉大を経て2023年、信州Ariesに加入。アウトサイドヒッター(OH)として主力の一角を務め、24-25シーズンにはプレーオフも含めて計28試合に出場し、チームの「Vリーグ初代王者」に貢献した。同年限りでの現役引退を表明。169cm。


チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484


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