コートに響くは”昇竜の鼓動” 進化を続ける長野GaRonsの新章

新たなリーダーのもと、長野GaRonsが動き出す。投票制で選ばれた新キャプテン、充実したコーチ陣、そして新加入のセッター。変化を恐れず、さまざまな挑戦を重ねる。2025年10月25-26日の開幕節を目前に、進化を続ける長野GaRonsの現在地を追う。

文:原田 寛子/編集:大枝 史

立て直す力、つなぐ声
正副キャプテン2人が担う役割

「チームの雰囲気が落ちた時、自分たちがいかに雰囲気を取り戻すかがカギになる」

声をそろえるのは、今シーズンのキャプテン小林雅治(MB)と、副キャプテンの川角純平(OH)。

長野GaRonsの魅力は、力強い声とプレーだ。コートの中もリザーブも同じ熱量で試合に臨む。そのエネルギーが鳴りを潜めた時、いかに早く立て直せるか。キャプテン・副キャプテンそれぞれの個性がチームを支えている。

共通した意識の中で、2人は各々の役割を見出していた。

チームの体制が大きく変わった今シーズンは、主将・副主将の決め方にも変化が表れた。選手たちの投票制だ。

主将に決まった小林は「正直自信はなかった。良くも悪くも、自分にも人にも優しい部分がある」と、当初の気持ちを吐露した。

「入団2年目からはチームを引っ張る気持ちでやってきたので、立場は関係なかった」と話すのは川角。

指導陣が一堂に会する機会が少ない中で、日々の練習を重ねてきた長野GaRons。酒井駿アソシエイトコーチが示した「全員がワンプレーずつ意味を考えて取り組む」という主体性が主軸にあるが、些細な伝え方の違いで練習中に戸惑いが生じる場面もある。

その中で二人が感じた役割は、積極的なコミュニケーションでチームの潤滑油となること。

「選手の中には、練習で様々な意見を耳にして戸惑う人もいる。そういう時こそ積極的に声をかけたい」と小林。

「ちょっとしたニュアンスの違いなどで、練習方法に疑問が生まれる時がある。変な方向へとズレないように、スタッフと選手をつなぐコミュニケーションをとりたい」と川角。

選手間のコミュニケーションと、スタッフ・選手間のコミュニケーション。

話し合って決めたわけではない。それぞれの性格が自然な形で歯車としてかみ合った。

「個々のスキルは上がっていると思う。コミュニケーションも深まっている。今以上にチーム内で意識を統一していければ、どこのチームとも勝負できる」と、小林は奮い立つ。

ガロンズシステムの進化
対応力とブロックの改善

長野GaRonsのファンにはお馴染みの「ガロンズシステム」。攻守一体型のチームスタイルが、今シーズンさらに進化を遂げる。

昨シーズンからの小林哲也(OP)に加え、矢貫龍馬(MB)が選手兼任コーチとして加入。コーチ陣がより充実し、より多様な意見を聞ける環境になった。

「ガロンズシステムで約束事を守った動きをすることから、相手の攻撃に応じて対応する能力を身に着けるフェーズに入った」と話すのは小林主将。

昨シーズンからリーグ編成が変わり、格上チームとの対戦も増えた。よりレベルの高いプレーをしなければ、勝つことが難しくなる。

「これまでも対応力が課題だったが、今シーズンはさらに相手の動きに合わせて臨機応変な動きが必要。加えて、全体的に苦手なブロックの改善にも取り組んできた。だいぶ変化は出てきていると思うが、シーズンを通してさらに詰めていきたい」と力を込める。

また、川角が指摘するのは、プレーやチームの雰囲気に波がある点だ。

「ある程度波があるのは仕方ないが、振れ幅は最小限にしなければいけない。自分自身の課題でもある。全員がベクトルを合わせ、プレーも雰囲気も高いところで安定させたい。副キャプテンとして声掛けや、引っ張っていくプレーをしていきたい」と気を引き締めた。

そして新たな風を吹き込む選手が1人。兵庫デルフィーノから移籍したセッター、山川悠輝だ。

「2シーズン前はV3リーグで対戦経験があった。常に盛り上がっているが、試合では堅実なチームというイメージだった。実際入ってみると予想以上にアグレッシブで、スピード感もあった」と印象との違いを語った。

前チームでは、スパイカーがしっかり打ち切れるトスを上げるやり方をしてきた山川。新たなチームに加わり、アタッカー陣に目を行き届かせている。

「器用に打ちこなしたり、リバウンドなどの細かい技がうまい。今はトスを合わせている段階だが、よりコンビを合わせて自信を持ってトスを上げられれば、面白い展開に持っていけるイメージ」と、表情は明るい。

さらに山川はキャラクター的にも新しい風を運ぶ。

「セッターはクールなイメージがあると思うが、僕には多分ムリ。しんどい時も明るくいきたい」

関西弁で明るく軽快に話す山川は、すでにチームメイトとも打ち解けている。

「セッターは志水と自分でタイプは違うと思う。盛り上げ役という部分を持ちながらも、志水をしっかり支えていきたい」

コートの内外で進化の兆しが見え、プレー面も雰囲気も新たな一面が見えはじめている。

昇竜の鼓動、再び
地域と共鳴する長野GaRons

フロントサイドから見ても、チームの変化は大きいという。信州スポーツプロモーションの韮崎昌彦・代表取締役社長は取材に応じ「これまでにないコーチ陣だ」と話した。

そのうえでフロントの人事が今後の課題であることも事実。

「その部分に関しても少しずつ前進している。ホームゲームでも楽しんでもらえるよう、今後も計画を進めていきたい」

そして今シーズンは11月に大きなイベントも控えている。15日(土)、16日(日)のホームゲームは、上田市自然運動公園総合体育館で開催。信州ブリリアントアリーズがホームアリーナとして使用する体育館で、両チームの同日開催となる。

「午前中から午後まで、どちらのファンも両チームの試合を見てもらえるように企画中。共通でのグッズ販売も考えている」

長野GaRonsと信州Aries、両チームが新たな取り組みに向け、一体感を持って進んでいる。

また、10月3日にはイオンモール須坂がオープン。本拠地の大規模施設ということもあり、心強い協力体制が築かれている。シーズンを通して様々なイベントも企画中だという。

「地域活性化につながるチームでいられるよう、行政とも一体となって取り組みたい」と韮崎代表も熱を込める。

昨シーズンの戦績は10勝18敗。Vリーグ東地区8チーム中6位の成績で無念さを噛みしめた。

――そんな思いはもうしない。

練習中の声にも一段と力が入る。

スローガン「昇竜」のごとく、雄々しき竜が上昇する日に向けて力を蓄えている。


チーム公式サイト
https://garons.jp/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_men/team/detail/474


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