噛み締めた84日ぶりのホーム復帰 小栗瑛哉がもたらした“タフネスとエナジー”

長く戦線を離れていた信州ブレイブウォリアーズの小栗瑛哉が、ホワイトリングに帰ってきた。84日ぶりのホームコート。プレータイムの制限がある中で、チームの勝利のために貢献しながらも、自身のプレーには厳しい目を向ける。クラブ記録を塗り替える12連勝を挙げた2025年12月27-28日の熊本ヴォルターズ戦を振り返りながら、小栗の言葉に耳を傾ける。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
4,500人以上の大声援受けて躍動
「勝てたのはブースターのおかげ」
10月15日の福井ブローウィンズ戦を最後に戦線を離れていた小栗。ホワイトリングでの試合も開幕節の2試合だけで、小栗にとっても久しぶりのホーム戦となった。
復帰自体は12月20日のバンビシャス奈良戦。中でもGAME1は10分36秒と制限がある中で、15得点5アシストを記録し、チームの勝利に貢献した。

奈良戦後の練習取材で、小栗は復帰に際して感謝を口にしていた。
「元気にコートへ戻れたのはトレーナー陣のおかげ。本当に感謝したい。ケガなく終われたのが良かった」
「パフォーマンス自体はこれから徐々に上げて行って、(土家)大輝の負担を少しでも減らせたらなと思う。僕が入ったことによって、もっともっと速い展開のバスケットや、ディフェンスの先頭に立って引っ張っていけるようにしたい」
トレーニングキャンプとプレシーズンゲームを高いパフォーマンスで過ごし、開幕ではスターティングメンバーにも抜擢。平均プレータイムも秋田ノーザンハピネッツ時代から約2.5倍に増加した。

オールコートでの激しいディフェンスをはじめ、コートを縦横無尽に駆け回り、アシストと突破力を持ち味とする小栗。そこにスタメンとしての責任も相まって、負担は本人が思っている以上に大きいものだったのかもしれない。
小栗がコートから離れている間は、土家大輝、東海林奨、小玉大智、横山悠人の同級生組の活躍も光っていた。その姿を目の前に、コートに立てない日々をどのような気持ちで過ごしていたのだろうか。
「大輝の活躍もあったし、同級生の頑張っている姿を見て申し訳なさの気持ちもあった。『出た時には必ず貢献したいな』という気持ちで試合を見ていた」

そんな思いを胸に、84日ぶりにホームコートに立った小栗。連日4,500人以上が詰めかけた会場でチームの勝利に貢献するプレーを披露した。プレーを支えたブースターにも感謝を述べた。
「改めて信州ブースターさんの熱狂を実感することができたし、不利な状況の時の声援やブーイングは本当に力になる。難しい時間帯が40分間続いた中で勝ち切れたのは、本当にブースターさんの声援があってのおかげだなと思う」
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クラブ記録更新も目指すは“B2優勝”
日々成長にフォーカスする若きPG
小栗の役割の一つは、相手のガード陣に対するディフェンスでプレッシャーをかけることだった。特に昨季まで信州に所属していた石川海斗は勝負どころでシュートを沈めるだけでなく、ベテランの技として、巧妙な駆け引きを仕掛けてくる選手。
お互いに身につけるユニフォームの背番号が「11」ということも拍車をかけ、今節における注目ポイントの一つとなっていた。

小栗も試合前に石川を警戒をしていた。
「(石川は)ポイントターゲットの一人。同じポジションとして、必ず好きなようにはさせないように守らないといけない」
その意気込みで臨んだ小栗。GAME1の第1Q残り6分40秒から出場すると、早速前線から激しいディフェンスを披露する。残り5分40秒には素早いボール運びから、左サイドで空いた栗原ルイスにドンピシャのパスを供給し、3ポイントシュートをアシストした。
次のポゼッションでは、渡邉飛勇をスクリーンに使って自らが3ポイントシュートを成功。会場のボルテージも一気に上昇した。続くポゼッションも渡邉とのピック・アンド・ロールで機会を伺いながら、マイク・ダウムの得点に繋げるなど存在感を発揮する。

一方で第3Q、残り4分22秒には石川にファールを誘われるシーンや、GAME1では合計4個のターンオーバーを犯すシーンも見られるなど、本人にとっても納得のいかない時間帯もあった。
試合を振り返り、小栗は反省点を口にした。
「制限がある中で、自分が出た時には何を求められているのか理解しながらできているとは思っている。だけど数字としては納得のいくようなものではない。それでもチームが勝つことが一番なので、そこに対してもガードとしてのマネジメントを試合を重ねるごとに成長していかないといけない」
「ガード陣に対するプレッシャーは誰が出ても変わらずやろうという話はされていた。そこの点で言うと(自分の評価は)ダメだったと思う。大輝が引っ張ってくれる中で、僕がディフェンスとして求められていることをなかなか体現できなかった」

復帰直後ということもあり、練習が積めていないことはもちろん、試合勘が戻っていない部分もあるだろう。それでも小栗が入れば、ディフェンスの圧力は一段と高まり、オフェンスのスピードも速まる。小栗もまたタフさとエナジーを併せ持つ信州に欠かせない選手であることはこの2日間の復帰戦で改めて証明した。
勝久マイケルヘッドコーチ(HC)もGAME2終了後に小栗について言及した。

「彼は長い時間アウトだったので、ここから経験を積み上げていかないといけない。迷いも見えた。それでもプレータイムがギリギリの中で『前からプレッシャーをかけよう』『エナジーを持ってプレーしよう』というタフさやエナジーは本当にチームのプラスになった」
27日のGAME1に勝利したことで、信州は連勝記録を「11」に塗り替えた。GAME1終了後、そのことについて小栗に尋ねると冷静な言葉が返ってきた。

「11連勝は正直なんとも思っていない。それ以上に目指しているのはプレーオフの出場だし、B2優勝。そこに対してまだまだ成長できる部分はたくさんある」
「個人としてもチームとしても満足することなく、全員で一つの目標に向かって、一試合、一試合をこなしていく上にB2優勝があると思う。数字は関係なくこれからも頑張っていきたい」
1年目の選手でありながら、信州のカルチャーを理解し、そこに向かって日々成長を重ねている小栗。小栗のコンディションがさらに高まれば、信州はより安定感を増し、優勝にふさわしいチームへと成長を遂げるはずだ。
Bリーグ チーム紹介ページ
https://www.bleague.jp/club_detail/?TeamID=716&tab=1
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/
















