逆襲誓う“オレンジ・エンターテイナー” 「躍動感」と「流動性」を追い求めて

逆襲のシーズンが幕を開けた。AC長野パルセイロは昨季、J3リーグで20チーム中19位とクラブワーストの成績。藤本主税監督の続投が決まった今季は、立て直しが必須だ。2026年2月7日からは、特別シーズンの明治安田Jリーグ百年構想リーグが開幕。「躍動感」と「流動性」というキーワードをもとに何を見せるのか――。1次キャンプを終えたチームの現在地をひも解く。

文:田中 紘夢

4-4-2はあくまで初期配置
攻守に流動的でアグレッシブ

「とにかく躍動感のある、流動性のあるサッカーがしたい。自分たちはエンターテイナーなわけで、見に来てくれる人たちをワクワク、ドキドキさせるのが使命だと思っている」

就任2年目を迎えた藤本監督は、1月5日のチーム始動日に改めて決意を口にした。

昨季はJ3リーグで20チーム中19位。リーグ最少得点の攻撃が尾を引き、守備でも強度不足を露呈した。9勝8分21敗という結果だけでなく、内容的にも沸きどころは限られ、「エンターテイナー」であれたか――というと疑問符がつく。

見る者の心を動かし、ネットを揺らすために、何が必要なのか。指揮官が掲げたキーワードは「躍動感」と「流動性」。攻守ともにアグレッシブで、自分たちからアクションを起こすサッカーだ。

昨季は3-4-2-1をベースに戦ってきたが、システムの型にとらわれがちで動きが少なかった。それを経て今季は4-4-2にシフトチェンジ。バランスの取れた配置から、いかに“カオス”を作るか。指揮官は「とにかく動いて、相手を混乱させる」ことを理想とする。

4-4-2はあくまで初期配置だ。攻撃時はサイドバックが内側に絞ったり、ボランチが外側に開いたり。2トップも横並びではなく、足元と背後で互い違いに動く。受け手は常に2人、3人と繋がりながらスペースを共有。立ち位置の変化が目まぐるしい。

守備はコンパクトな3ラインを敷きながら、ハイプレスが基本線。陣形を整えてから奪いに行く「セット・ハント」の概念は変わらず、昨季からの積み上げがある。もっとも、自陣に押し込まれれば5バックでブロックを固めるため、その点においても流動的と言える。

「相手陣地でサッカーがしたい」
附木雄也の飛び道具も武器に

新たなシステムと戦術の中で、躍動感をどう出すのか。リーグ最少得点の昨季を踏まえても言うまでもなく、ゴールに向かうことだ。

「とにかく相手陣地でサッカーがしたい」と藤本監督が言うように、優先順位は背後。GKを交えて後方から丁寧にパスを繋ぎながらも、ロングボールを蹴ることをいとわない。

長短のパスを自在に使い分ける“飛び道具”もある。カマタマーレ讃岐から加わった附木雄也は、左足のキックの精度が武器のセンターバック。味方を一人飛ばす「スキップ」のパスもためらわない。

今季初実戦となった1月17日のトレーニングマッチでも、附木のキックが光った。左センターバックの位置から中長距離のパスで局面を打開。高い位置を取ってクロスを送る場面も見られた。

「『僕はこういうプレーをするよ』というのは、チームメイトにも伝わったと思う」と附木。左サイドハーフで受け手となった藤川虎太朗も、「ツケくん(附木)は持ち方がうまいし、見てくれているのは分かる。そこから左足で刺してくれるのですごく助かる」。

ショートパスを選ぶにしても、サイドバックが内側に絞って空けたスペースを使いながら、敵陣に進入する回数は増えた。

一方、アタッキングサードで連係が噛み合わなかったり、シュートの意識が足りなかったり。攻撃に人数を割いているぶん、裏返しとしてカウンターから失点も喫した。

東海社会人リーグ1部(国内5部相当)の岳南Fモスペリオに対し、45分を3本戦って0-3と敗戦。得点力アップは道半ばで、コンビネーションの向上にも時間がかかりそうだ。

偉大なベテラン三人衆が去りし今
中堅の藤川虎太朗もリーダー格へ

味方との繋がりを深める上では、コミュニケーションも欠かせない。チームは1月12日から1週間にわたって、静岡県東部で1次キャンプを実施。富士山の麓で寝食をともにした。

「ここでしかできないことはある。みんなの信頼関係だったり、それぞれを知る時間にできると思う」

藤本監督はチームビルディングにも着手。ピッチ内ではサッカーバレー、ピッチ外ではレクリエーションゲームを取り入れた。練習後恒例の20分ジョグでも、若手とベテランが自然と肩を並べるなど、風通しの良さがうかがえる。

今季はチームキャプテンの三田尚希と、同副キャプテンの加藤弘堅と砂森和也がそろって退団。ゲーム副キャプテンの忽那喬司の言葉を借りれば「偉大な3人」のベテランが去ったが、指揮官は「しっかり引っ張っていけるような選手はいる」とみる。

その筆頭株と言えるのが、加入2年目の藤川だ。先述した附木との関係性もそうだが、大卒ルーキーとも近い距離感で接し、オープンマインドで周囲を巻き込んでいる。

「僕自身が中心になってやっていきたい気持ちはあるし、やらないといけない年齢。そういう選手がここに残っていると思うので、良い集団じゃなくて、勝てる集団にならないといけない」

J1での経験も豊富な27歳。2〜6月に行われる明治安田Jリーグ百年構想リーグでは、古巣のJ2ジュビロ磐田との対戦も控えている。

昇降格のないハーフシーズンに向けて、「周りは次のシーズンへの準備と考えているかもしれないけど、僕はそんなことは何も考えていない。一試合一試合を大事に戦っていきたい」と力を込める。

開幕戦は2月7日。早くも3週間を切った中で、今後はJ2、J3クラブとのトレーニングマッチも控えている。トライ&エラーを重ねながら解像度を高め、逆襲の道のりをひた走る。


クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/
長野県フットボールマガジン Nマガ
https://www6.targma.jp/n-maga/

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