「喜怒哀楽のあるキャプテンに」 藤川虎太朗がつくり出す新たなリーダー像

獅子の群れを率いる新たなリーダーが決まった。AC長野パルセイロは2026年1月21日、今季のキャプテンを発表した。加入2年目のMF藤川虎太朗がキャプテンに就任。副キャプテンとして3年目のFW進昂平、4年目のDF大野佑哉が脇を固める。喜怒哀楽に満ちた3人が、どうチームを束ねるのか――。藤川と藤本主税監督の声に耳を傾ける。
文:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
練習試合で“サプライズ発表”
キャンプから就任の予兆あり
その発表は突然だった。
1月17日に行われた今季初のトレーニングマッチ。選手たちはウォーミングアップ前、サポーターのもとへ挨拶に向かう。先陣を切った藤川虎太朗が、「今季はキャプテンを務めます」という宣言とともに一礼したのだ。
「『ここで話すなら俺がキャプテンって分かるやろ』という気持ちだった。隠すこともないし、何のサプライズでもない。しゃべるからにはそこで宣言しておきたかった」

そう本人は言うものの、サポーターからすればサプライズでしかない。公式のリリースより4日も早い発表なのだから。
とはいえ、予兆はあった。
キャンプから昨年以上に周囲とのコミュニケーションを活発化。とりわけ大卒ルーキーのFW清水蒼太朗に対しては、善光寺で買ったダルマに似ていることから「ダルマ」と名付けるなど、ピッチ内外で距離が近い。

「大卒はダルマ(清水)以外みんな静かだし、まだ俺のことを怖がっているかなと…。年々大卒がおとなしくなってきているので、元気でやんちゃな選手が出てきてほしい」
若手にも目を配る姿はなんともキャプテンらしいが、藤川はもともとやんちゃだった側。ジュビロ磐田時代の先輩である小川大貴(松本山雅FC)は、過去の取材でこう話していた。

「虎太朗のプロ1年目から見てきたけど、最初はボールを受けたらやみくもに全部ターンして全部取られていた。呆れるくらいみんなが指摘していた」
長野に加入した当初も、群れることを嫌う“一匹狼”のような印象は強かった。そこから比べると今は、人が変わったかのよう。エゴイスティックな一面もありつつ、チームファーストの姿勢がうかがえる。

KINGDOM パートナー
藤本主税監督とも思惑が合致
喜怒哀楽あふれるキャプテンに
昨年に当時J1の磐田から加入。補強の目玉として注目を浴び、ボールを持てば明らかな違いを見せたが、チームは19位と振るわず。練習からフラストレーションを溜める場面も多かった。
誤解を恐れずに言えば、この順位のクラブにいる器ではない。パス、ドリブル、シュート――どれを取っても技術とアイデアに長けている。藤本主税監督からしても、「五角形(チャート)があったときに、コタは大きな形をしたものを持っていると思う」

そんな彼がチームに残留したこと自体が驚きだが、相応の覚悟をもっての決断だった。
「自分の選択をなんとか成功にしたい気持ちはあった。パルセイロのファミリーは温かいし、熱いし、J3の中でも卓越したサポーターがいる。みんなと喜びを分かち合いたいし、このチームをJ2に上げたい」

その思いがキャプテンという大役にも繋がった。シーズンが始動して藤本監督に自ら志願したものの、指揮官はシーズン前からすでに決めていたという。両者の思惑は合致していたのだ。
藤本監督は現役時代、大宮アルディージャとロアッソ熊本でキャプテンを経験。感情の振れ幅が激しいリーダーだったが、藤川にも似たような感覚を抱いている。

「基本的には喜怒哀楽が強い。それをうまくコントロールしながら、ストレートに出してほしい瞬間もあると思う。そこはサポートしながらやっていきたい」
脇を固める大野佑哉と進昂平
「影響力のある3人」で牽引
副キャプテンは4年目の大野佑哉、3年目の進昂平の2人に決まった。
大野は昨季のゲームキャプテンで、進は2024年の副キャプテン。プロの舞台で初めて役職を担う藤川にとって、頼もしい存在だ。

「(大野)佑哉くんはおちゃらけタイプでみんな話しやすいだろうし、進くんは厳しいときは厳しい。うまくバランスが取れていると思う」

一方、藤本監督は「ポジティブにもネガティブにも影響力のある3人」と印象を語る。藤川に限らず、全員が感情をあらわにするタイプ。彼らの一挙手一投足が、良くも悪くもチームを左右するだろう。
新加入のDF附木雄也のように、誰が見てもキャプテンにふさわしいような選手もいる。それでも彼らに役職を託したのは、「長野に2年も3年もいる選手たちは、苦しいシーズンを送ってきた中で思いもある」とくみ取ったからだ。

昨季限りで三田尚希、加藤弘堅、砂森和也とチームキャプテンがそろって退団。冷静沈着なベテランたちが去った中で、藤川は新たなリーダー像を築こうとしている。
「厳しく言うときは厳しく言うし、ふざけ合うときはふざけ合う。時には衝突することもあると思うけど、そういう喜怒哀楽のあるキャプテンがいい」
気取らず、飾らず、ありのままで――。彼らは彼ららしく、勇猛果敢な獅子の群れを率いる。

クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/
長野県フットボールマガジン Nマガ
https://www6.targma.jp/n-maga/













