全てはサッカーのために 附木雄也が貫く“鉄人の流儀”

今季、AC長野パルセイロに加入したDF附木雄也は“鉄人”だ。昨季はカマタマーレ讃岐でJ3リーグ全試合にフル出場。移籍1年目の今季も開幕から主力の定位置をつかみ取り、J2・J3百年構想リーグでチーム最長のプレータイムを誇る。当たり前のようにピッチに立ち続ける31歳は、どのようにして強靭な肉体を手に入れ、いかにしてコンディションを維持しているのか――。“鉄人の流儀”に迫った。

文:田中 紘夢


連続出場が途絶えた無念
1年半ぶりの欠場に心燃やして

「ずっと当たり前みたいに(試合に)出てきた中で、理由はどうあれ出られなかったことは悔しい」

短いスパンで試合が続く5連戦の2試合目となった2026年4月29日の第13節、福島ユナイテッドFC戦で先発を外れた附木雄也。リードを許す展開となった試合で途中出場の機会は訪れず、ベンチで試合終了の笛を聞いた。

リーグ戦の欠場は約1年半ぶり。前節から中2日で迎えた福島戦は疲労の蓄積などを考慮してターンオーバーが採用されたとはいえ、本人はふに落ちない様子だ。

J3全試合に出場した昨季は日本プロサッカー選手会(JPFA)から「鉄人賞」が贈られた。J1からJ3まで全17選手が対象になった同賞を受賞したJ3のフィールドプレーヤーは2人。もう1人はヴァンラーレ八戸に所属していたDF白井達也だった。

今季は松本山雅FCに移籍し、百年構想リーグの地域リーグラウンドでは全試合にフル出場した白井。その動向を附木も注視していただけに、「彼はずっと出ているので…」と悔しさが一層込み上げたという。

同県のライバルチームに所属し、同じセンターバックでもある29歳の白井とは特別親しい関係ではない。それでも「スタメンかスタメンじゃないかはずっと見てきて、いつも刺激をもらっていた。勝手に意識しているのでありがたい」と存在の大きさを認める。

誰よりも早くクラブハウスに顔を出し、一番最後に帰路に就く。讃岐でもそうだった。日常生活の全てをサッカーに注いできた自負がある。だからこそ試合に出続けることへのこだわりが強く、たった1試合の欠場でも受け入れられない。

「余白がない」と笑われる生活
高校時代から守る“鉄の掟”も

毎日、午後9時台には就寝し、起床は午前5時台。朝食や入浴を済ませて同7時にはクラブハウスへ向かう。全体練習前はケアや筋力トレーニングに取り組み、練習後も補食の摂取や交代浴での疲労回復を欠かさない。これといった趣味もなく、讃岐時代からの同僚MF長谷川隼からは「余白がない」と笑われているという。

「面白くない人間なのかもしれない」

本気とも冗談ともつかない口調で自己分析する。

千葉県の阿蘇中時代は地域のお祭りに行っても、「練習があるから」と周囲よりも一足早く帰る。八千代高では揚げ物や炭酸飲料が禁止され、当時から今まで「鉄の掟のように守ってきた」。揚げ物を食べるのはシーズン最終戦の試合後のみで、それが唯一の余白と言える。

ここ数年でストイックぶりに拍車がかかった。

2022年からの3年間は当時J3のアスルクラロ沼津に在籍。23年から2年続けてアウェイのFC琉球戦で負傷した。長距離移動の負担や本州とは異なる気候が影響したのかもしれない――。24年限りで沼津から契約満了を告げられると、「もっと突き詰めないといけないと思った」

24年のシーズン終盤から専属のパーソナルトレーナーを雇い、独自の筋トレも取り入れてきた。昨季と今季の“鉄人”ぶりの背景には、幼少期から守り続けてきた規律と、失敗を糧に重ねた努力がある。

異例の遅咲きのキャリア
次も「鉄人賞」をターゲットに

今季途中に就任した小林伸二監督は、選手たちに週1回の走り込みを課している。大半の選手が顔をゆがめる苦しい練習だが、附木だけはいつも笑いながら楽しそうに駆け抜けている。なぜそこまで前向きに、ストイックでいられるのだろうか――。

「結局、毎日グラウンドに出るのが一番楽しいので。今は長くやり続けることもモチベーションだし、このチームの若い子たちに『まだやってるの?』と思われるくらいになりたい」

「みんな夜に出かけたいとか、好きなものを食べたいとか、どこかに隙はある。それを否定するつもりはないし、余白もあっていいと思うけれど、自分は全てがサッカーにつながると思っているので。そう思えば今の生活も苦じゃないし、むしろ『喜んで』という感じはある」

附木は遅咲きのJリーガーだ。国士舘大から公務員を経てプロの道に進んだ異色の経歴。地域リーグからJFL、そしてJ3へとはい上がってきた。

八千代高では永戸勝也(ヴィッセル神戸)や柳育崇(栃木SC)ら高いレベルの選手と同期で、国士舘大では主将を務めた。同じ環境でボールを追いかけた仲間たちのキャリアがうらやましく思える時もあるが、自分自身が選んだ道に後悔はない。

シーズン移行に伴う百年構想リーグは特別シーズンという位置付けのため、Jリーグの通算出場記録とは別枠でカウントされる。附木が見据えるのは8月に開幕する2026-27シーズンのJ3リーグ。そこで、昨季に続く「鉄人賞」獲得をターゲットに定める。

「1回よりも2回、2回よりも3回獲るほうが価値は高いので絶対に獲りたい。そのためにはチームの競争に勝たないといけないし、365日の行動が全てと思う。プロフェッショナルでい続けることにこだわりたい」

附木の姿勢はチームメイトにも広がり、クラブハウスに補食を持参する選手が増えてきた。6月5日の今季最終戦は古巣の讃岐が相手。勝利で締めくくり、年1回のご褒美を堪能するつもりだ。


クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/

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