初めての手術を乗り越えて “鉄人”松本慶彦が歩む挑戦の日々

SVリーグ男子現役最年長の45歳。信州松本トライデンツの松本慶彦が、右膝の手術に踏み切った。生まれ故郷のクラブに加入した2025-26シーズンはコンディション不良による欠場が続き、不完全燃焼に終わった。再び戦える身体を取り戻そうと、長い現役生活の中で初めての手術を決断。7月6日にチームに合流した。「ここからどこまでできるか」――。“鉄人”と呼ばれる松本にとって挑戦のシーズンが始まる。

文:大枝 史

「よく今まで耐えていた」
45歳にして初めての手術

2025-26シーズン第1節では2試合連続のフル出場を果たし、年齢を感じさせないプレーを披露した松本慶彦。

以降は、2連戦が組まれる1節ごとに1試合の出場が続いたが、シーズン中盤以降は古傷の影響で出番を減らしていった。

「5〜6年前から膝に水がたまることがあった。少し落ち着いて2年前ぐらいからたまらなくなったけれど、試合に出始めたら後半になるにつれてまた出てきて…という感じだった」

同じSVリーグ男子の日鉄堺BZに在籍していた頃は激しく動いた試合で水がたまっていたため、運動調整によるコントロールしていたと明かす。

「もう少し身体的に乗り越えられるかなと思っていたけれど、コンディション不良が多く出たのは正直、想定外」

身体のケアや食生活には人一倍、意識を注いできた。それでも、回復が追いつかない現実もあった。

水を抜いてヒアルロン酸を入れても、運動量を落とさない取り組みに膝は耐えられなかった。自分自身の血液を利用した再生医療のPRP療法での治療を検討したが、そもそも軟骨の状態が悪化していることが容易に想像できたため、内視鏡による外科的な治療を決断をした。

45歳にして、初めての手術。

「ケガは結構しなかったから手術をしたこともない。早い人だと学生時代にこのぐらいの手術はするので、よく今まで身体は耐えていたなと…」

腫れて歩けなかった日々
地道なリハビリで復帰へ

入院生活、そしてリハビリの日々は決して楽ではなかった。

「最初は痛いし動かない。先生からは『終わってからは普通に歩いていいよ』と言われたから、その感じだと思っていたらパンパンに腫れて全然歩けなかった」

曲がらない膝を曲げる作業。痛みが緩和されてきても動けない。

それでも動かせる上半身だけはトレーニングを続けた。

「入院して1週間はほぼ横になっていたので、そこからはしんどかった。やはり横になっているのが一番体力と筋力が落ちる」

歩けるようになり、ジョギングができるようになるまで2週間。その後も続いたリハビリ生活はおよそ1カ月半に及んだ。

日常生活を取り戻すためではなく、プロ選手として高いパフォーマンスを発揮するための手術。歩くだけなら問題なくても、サイドステップを踏んだ時に違和感があってはとても万全とは言えない。

全ては再びコートに立つためだ。

「(リハビリの)後半は自重でスクワットはできた。片足でできるトレーニングで地味なものを繰り返して、少しずつ走る距離も延ばしていった」

違和感がなくなるまで続けたリハビリだが、そもそも完璧に治る手術ではない。リハビリの中では脚が張っている時に膝が痛みやすいことも知った。

チームに合流して運動量を上げていく中で経過を見ながら改善策を模索していく。

休んだら動けなくなる
調整を続ける”鉄人”の覚悟

地元の長野県に単身で戻り、1シーズンを過ごした。

26-27シーズンはオンザコートルールが改正され、同時に3人の外国籍選手がコートに立てるようになる。松本のポジションであるミドルブロッカー(MB)も2人の選手が加入した。

加えて今回の手術。周囲から見れば、これで“区切り”となってもおかしくない状況だった。

「毎年、(契約の)1年更新を続けてきただけで、その1年の区切りを積み重ねてきただけ。そういうモチベーションなので、今が特別という感覚でもない」

松本の中で区切りは1年ごと。今シーズンは初めて体験する“手術からの復帰”という挑戦をテーマに取り組んでいく。

その上で、「良いパフォーマンスが発揮できなければ現役引退ということは、ずっと視野に入れている」

そう、強い覚悟を明かす。

10月24日に開幕する新シーズンのために負荷が高いトレーニングにも積極的に取り組む。それだけでなく、チームのトレーニングがない日も自主的に動き続ける。

「今までは休んだ分だけ元気になっていたけれど、休んだら動けなくなる。その調整をしていく方がしんどい」

今シーズンは背番号を17から1に変更することも発表された。

日鉄堺BZ時代につけていた背番号1。「日本代表に行った時に11をつけることが多かったから1にしようか…というのが始まり。NEC(ブルーロケッツ)でつけていた17よりも1の方が長かったのでしっくりはくるのかな」

45歳の松本が、初めての手術を乗り越えるシーズンに新たな背番号で挑む。

“鉄人”が“鉄人”であるゆえんを、コートの上で示すために。


クラブ公式サイト
https://sm-tridents.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

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