大橋良隆のオレンジ・アイ(2) 「断ち切られた守備の迷い」

サッカーは11人で助け合いながら、相手に応じてさまざまな戦術や駆け引きを繰り広げるスポーツだ。AC長野パルセイロはどんなサッカーを目指していて、現在地はどこなのか――。2009~15年に在籍した大橋良隆が、チームの舵を取るボランチの視点を交えながら解説する。第2回は、今季のJ2・J3百年構想リーグで監督交代から挽回した一因を掘り下げた。

構成:田中 紘夢

明確になった守備のスタイル
迷わず行くことで強度と明確さ

今季は地域リーグラウンドのEAST-Bグループで最下位に終わった。J3リーグで20チーム中19位だった昨季に続いて苦しいシーズンを過ごしたことに変わりはない。ただ、第8節終了後の監督交代から明らかに戦いぶりが変わったように思える。

何が変わったかと言えば、守備の基準だ。相手に寄せるアプローチのスピードと距離。誰がどこに行くか。小林伸二監督が就任して以降は、藤本主税前監督の下で足りなかった強度と明確さが出てきた。

以前は相手によって守備の仕方を変えていた側面もあるだろうが、“なんとなく”寄せていた感は否めない。そもそも前から行くのか、行かないのか――。選手たちの迷いも感じられた。

その迷いは監督交代とともに断ち切られた。新体制初陣の第9節、藤枝MYFC戦で2-0と勝利。65分の2点目は、ハイプレスからボールを奪ってのショートカウンターだった。

藤枝の最終ラインからのビルドアップに対して2トップがけん制。相手センターバックの右脇にボランチの浅倉蓮が降りてきたが、左サイドハーフの近藤貴司が迷いなくアプローチに出た。そのままボールを奪ってクロスに持ち込むと、逆サイドから走り込んできた安藤一哉がボレーを決めた。

前から行くのか、行かないのか――。その二択で迷うのではなく、行くことが先決だ。サイドハーフに連動してサイドバックも出て、空いた背後のスペースはボランチやセンターバックが連動してカバーしてくれる。守備のスタイルが明確だからこそ、強度も出せるようになってきた。

前から行くが故のリスク管理
カギを握る“バランサー”

特別シーズンの百年構想リーグは格上のJ2勢も混在していて、ショートパスをつないでくるチームも多かった。来季のJ3はロングボールを多用する相手も増えるはずだが、そこでも下がることはしないだろう。なるべく高い位置でプレッシャーをかければ、自陣のゴールからボールを遠ざけることにもつながる。

2トップは進昂平と吉澤柊が先発する機会が多かった。数字を見ればいずれも1得点と物足りないが、彼らは小林監督が求める守備の基準を満たしているように見える。

2-1と逆転勝ちした第17節の大宮アルディージャ戦では、後半にジョーカーの藤川虎太朗が同点弾を決めたが、それも前半から進と吉澤の献身性が光っていたからこそだ。

前線からボールを奪いにいくが故に後方のリスク管理も欠かせない。ロングボールでプレスを回避されたとしても、センターバックの附木雄也を中心に最終ラインが高さを調整しながら跳ね返せるか。ボランチのセカンドボール回収も重要になる。

そのバランスに長けているのが、ボランチの長谷川隼。常に全体を見渡しながら前後左右のどこに比重を置くか。それは守備だけでなく攻撃も同じで、長短のパスを織り交ぜながら遅攻と速攻をコントロールしている。

筆者も現役時代はボランチで、いわゆる“刈り取り役”だった。そこでボールに対してチャレンジできたのも、隣にバランサーがいたから。AC長野に所属していた際は土橋宏由樹さん(現ボアルース長野GM)の存在に助けられてきた。

現在ワールドカップを戦っている日本代表においても、どっしりと構える鎌田大地がいてこそ、刈り取り役の佐野海舟が自由に動けるのだろう。

よりタフでハングリーな集団へ
目に見える覚悟に期待

強度の高い守備を実現するためには走力も必須だ。小林監督が就任して以降、オフ明けにペース走やシャトルランにも取り組んでいると見聞きする。

選手はオフ明けに走ると分かっていれば自然と身構えるものだ。そうなればオフの過ごし方も変わってくるが、それも小林監督の狙いとしてあるのではないか。

プロサッカー選手はピッチ上での振る舞いが全てではない。日常生活から選手としての意識を持たなければ、上に行くどころか生き残ることすらできない。

筆者は大卒でJ2のベガルタ仙台に加入したが、2年で契約満了を告げられ、その後は地域リーグから這い上がってきた。最後はJリーガーとして現役を終えられたが、決して華々しいキャリアを送ってきたわけではない。

AC長野では選手とフロントスタッフとして、13年間にわたって仕事をしてきた。今も外側から見守っているが、「このクラブで戦っていくんだ」「勝負するんだ」という覚悟が足りなかったように映る。

これはフロントスタッフの時代に感じたことだが、サポーターやスポンサーの皆さんは想像以上に選手の一挙手一投足を見ている。ましてやJ3リーグはアマチュアと隣り合わせで、ここでクビを切られれば選手としてのキャリアに先はないかもしれない。

必死に這い上がらないといけない立場であるのは明確。そういった姿勢がサポーターにも伝われば、より応援してもらえるクラブになるはずだ。

その礎を築いてくれる指揮官がやってきたのは、選手にとっても大きなチャンスと言える。来季はよりタフでハングリーな集団となり、J2昇格への覚悟が見られることを期待したい。

PROFILE
大橋 良隆(おおはし・よしたか) 1983年7月1日生まれ、埼玉県出身。浦和南高から仙台大に進み、卒業後の2006年にベガルタ仙台に加入した。07年に当時東北リーグ1部のNECトーキンに期限付き移籍。08年には完全移籍に移行してキャプテンを務めた。その年は全国社会人選手権(全社)で準優勝し、JFL昇格の権利を得られる全国地域リーグ決勝大会(当時)の出場権を得たものの、開催前に休部が発表されて出場を辞退。自身は09年から当時北信越リーグのAC長野パルセイロでプレー。2015年の引退までにJFL昇格とJ3参入を経験し、3カテゴリーで172試合17得点をマークした。相手の攻撃をつぶすボランチとして存在感を示した。「塩崎スポーツクラブ」クラブマネジャー。好きな釣りはエギングとアジング。


クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/

たくさんの方に
「いいね」されている記事です!
クリックでいいねを送れます

LINE友だち登録で
新着記事をいち早くチェック!

会員登録して
お気に入りチームをもっと見やすく

人気記事

RANKING

週間アクセス数

月間アクセス数