変わらないゆえの積み上げ 攻守に連係光るAC長野、いざ県制覇へ

小林伸二監督のもとで2季目を迎えたAC長野パルセイロが、したたかにシーズンの幕を開けた。公式戦初戦は、天皇杯全日本サッカー選手権進出を懸けた長野県選手権。2026年7月25日、長野Uスタジアムでアンテロープ塩尻との準決勝に臨み、5-0と大勝を収めた。得点力不足が課題となった昨季を経て、改善の兆しを見出すスタートだ。アンテロープ塩尻の選手の声も交えて準決勝を振り返りつつ、松本山雅FCとの決勝の行方を展望する。

文:田中 紘夢

多彩なゴールパターンで5発
ケガ人復帰による上乗せも

県リーグ1部に所属するアンテロープ塩尻との準決勝。J3のAC長野パルセイロに対して4つ下のカテゴリーに相当する相手に対し、トーナメント特有の硬さもありながら、終わってみれば大差をつけた。

9分のセットプレーからの先制点を皮切りに、計5発のゴールショー。小林伸二監督のもとで磨いてきたハイプレスからショートカウンターで仕留めれば、プレシーズンに注力してきたクロスからもネットを揺らした。得点のレパートリーが増えていきそうな予感はある。

システムは昨季に続いて4-4-2。ビルドアップの際は相手の2トップに対して3バックに可変し、数的優位を作りながら前進する。昨季からトライしてきた形で、移行はスムーズだ。

「自分たちがボールを優位に持てる時間がある中で、FWが最終ラインで駆け引きできる回数が増えている」とFW藤川虎太朗。個人技に長けた藤川が後方支援の必要に迫られず、よりゴールに近い位置でのプレーに集中できている。相手のハイラインの背後を狙い続けた。

守備でも堅く無失点に抑えた。最終ラインは左から田中康介、附木雄也、酒井崇一、渡邉禅の4人。昨季と変わらぬ陣容だけあって、連係に不安はない。

最終ラインに限らず、今季は顔ぶれがほとんど変わらない。既存の30人全員が契約を更新。新戦力はFW庄司朗の1人のみだ。

目立った補強は行わなかったが、小林監督からすれば「昨季から少しずつ伸びている感触があると思うので、それはそれでいい」。キャプテンの附木も「圧倒的にメリット」と言い切る。

昨季途中にケガを負ったMF森田大智とMF安藤一哉も復帰し、公式戦の舞台に戻ってきた。4か月ぶりの森田は先発で74分までピッチに立ち、ビルドアップを活性化。3カ月ぶりの安藤も64分から途中出場し、得意のドリブルで果敢に仕掛けた。

変わらないゆえの積み上げと、ケガ人の復帰による上乗せがシナジーを生んだ。

古巣戦で躍動した青木安里磨
松本との決勝に期待を込める

「強度が高くて、さすがプロだなと思った。僕たちもボールをつなごうとはしていたけど、ビルドアップをできる余裕がなくて、蹴らされている感じだった」

アンテロープ塩尻のMF青木安里磨は、プロの実力を肌で感じた。

2023年に松本大学からAC長野へ加わるも、1月のキャンプ中に体調不良をきたしてチームを離脱した。しばらく療養が続くと、7月に双方合意のもとで契約解除。わずか半年での退団となった。

その年の秋からアンテロープ塩尻に加入。安曇野市出身の青木は、中信地方に戻って再びピッチに立った。働きながら社会人チームでボールを追いつつ、プロの門戸を開いてくれたAC長野のことも気にかけていた。

「プロにさせてくれたのはパルセイロ。少しでもチームにいたのは事実なので、もちろん応援している。サポーターとして応援し続けたい」

あれから3年が経ち、いやしくも相手選手として、かつてのホームスタジアムに帰ってきた。AC長野との県選手権準決勝でフル出場。プロとの差を痛感しながらも、ボランチとしてパスやドリブルで相手をいなし、ミドルシュートも放つなど奔走した。

「すごく楽しかった。最後までピッチに立ちたかったので、途中交代しなくてよかった」と頬を緩ませた青木。試合後は在籍時のAC長野のユニフォームに着替え、古巣サポーターのもとへ挨拶に向かうと、万感の拍手で迎え入れられた。

決勝はAC長野と、中学時代にアカデミーチームに在籍した松本山雅FCの対戦に決まった。「お世話になったチームなので、どちらも応援したい。良い試合が見られると思う」と期待を込める。

敵地で“信州ダービー”連勝へ
古賀俊太郎の思いも背負って

決勝は4年連続でAC長野と松本山雅による“信州ダービー”となった。松本山雅が本拠地とするサンプロ アルウィンで、8月2日に行われる。

両者は4月にも同スタジアムでのJ3リーグ戦でぶつかり、アウェイのAC長野が1-0と勝利した。あれからシーズンをまたぎ、変わらない顔ぶれの長野に対し、松本は多くの選手が入れ替わった。それでも石﨑信弘監督のもとで積み上げたスタイルは不変で、強度を前面的に押し出してくる。

前回対戦で決勝点を挙げたMF長谷川隼は、「セカンドボールだったりクロスだったり、そういうところの対応が大事になってくると思う」と警戒する。小林監督も「球際で厳しいゲーム」になることは覚悟しており、文字通りの肉弾戦となりそうだ。

7月26日にはMF古賀俊太郎の負傷が発表された。18日に行われたFCマルヤス岡崎とのトレーニングマッチで左膝を痛め、前十字靭帯損傷、内側側副靱帯損傷、外側半月板損傷と診断。復帰までに1年ほどの期間が見込まれる。

ダブルボランチでコンビを組んできた長谷川は、「あまり話さなくても通じ合える部分はあった。もちろん悔しいけれど、一番悔しいのはケガをした俊太郎だと思う」と心情を汲み取る。

古賀のためにも、長野のためにも、松本との“ダービー”は負けられない戦い。3カ月前と同様、敵地で凱歌を響かせるのみだ。


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