再び国内最高峰の舞台へ 小林光輝コーチが寄り添うトライデンツのセッター陣

押し付けるのではなく、提案という形で寄り添う。SVリーグ男子に参戦する信州松本トライデンツのアシストタントコーチに就任した上高井郡小布施町出身の小林光輝コーチ。創造学園高(現松本国際高)から進んだ早稲田大で全日本大学選手権2連覇を経験し、国内最高峰リーグで戦うジェイテクトSTINGSでのプレー経験を持つセッター出身の指導者だ。オンザコートルールが改正される今季はセッターの重要性が増す。30歳の若き指導者は、自らの経験を還元することで選手の成長を後押ししようと決意している。

文:大枝 史

新たに始まったセッター指導
押し付けないサポートの形

ジムトレーニングの全体練習を終えたあと、体育館ではセッター陣を指導する小林光輝コーチの姿があった。

ミドルブロッカー(MB)、アウトサイドヒッター(OH)、オポジット(OP)がアタックを打つ位置に台を設置し、それぞれの場所にトスを上げていく。

セッター陣の伊藤洸貴が「社会人になってからセッター指導を受けるのは初めて」と話せば、星名勇佑も「去年までトスを教えてもらうことがなかった」と口にする。

長い棒を掲げてトスの軌道をイメージさせたり、身振り手振りを交えたり。その日のセッター練習は1時間近く続いた。

現役引退した2022年から続ける母校の松本国際高でのコーチと兼任する形で、26年からは信州松本トライデンツのアシスタントコーチを務めることになった。

「高校生はSVリーグを目指すための技術や素地を教えることがすごく多い。トライデンツでは競技力を上げてSVで勝つため、上位に行くために支援する感じ」と、指導スタンスを使い分けている。

小布施スポーツ少年団でバレーボールキャリアを始めた小林コーチは、小布施中学から創造学園高に進学。高校1年生の時にアタッカーからセッターに転向した。新たなポジションで才能を開花させ、早稲田大では3、4年時に全日本大学選手権を連覇。2019年のユニバーシアード日本代表ではキャプテンを任され、大学卒業後は当時V1のジェイテクトSTINGS(現ジェイテクトSTINGS愛知)に加入した。

現役時代にセッターとして積み上げた豊富な経験は、指導者として向き合う選手たちに大きな影響を与えている。

「ずっと見ていた人に教えてもらっているので、すごくうれしい」と星名。現役時代の動画を見て参考にしていたという小林コーチから直接指導を受ける立場となり、練習に臨む表情は充実感に満ちている。

小林コーチが選手と向き合う時、自身の実績を元に考え方を押し付けるのではなく、サポートに徹する形で言葉をかける姿勢が印象的だ。

「提案という形。納得しなかったらやらなくていい。良いものがあったら自分で改良してオリジナルを作ってもらえばいい。セッターというものを自分自身が作っていけるように、僕が支援する形」

セッターが3人いれば、持ち味は3通り。それぞれの長所を生かし、伸ばしていく。上から引っ張り上げるのではなく、寄り添う距離感で選手の成長を支えている。

ルール改正がもたらす重圧
選手に寄り添い共に歩む

26-27シーズンからはオンザコートルールが改正され、外国籍選手が同時に最大3人までコートに立てるようになる。

今季に向けたチーム編成から考えれば、OHとリベロ、セッターの3人は日本人選手が入る形になる。セッターが外国人選手の高さや決定力をどのように生かし、ゲームをつくっていくかが勝負の鍵を握りそうだ。

小林コーチは「どこのチームもセッターにかかるプレッシャーは大きいと思う」と展望する。

もう1人のセッター赤星伸城は、身体能力の高さが持ち味だ。「セッター次第だとは思っている」と真剣な表情で語りつつ、「“楽しむ”に全ベット。楽しんでやってきた人間なので、そっちの方が大事かなと」と不敵に笑う。

昨シーズンは開幕前のケガで出遅れ、コンビ練習も思うようにできずに苦しい日々を過ごした。「負けも込んでいたので、滅入ってしまった」と話す経験を糧に、まずは自分自身のメンタルコントロールに注力する。

「気負いすぎず、のびのびやることが自分のパフォーマンスを最大限出す要因だと思う」と伊藤。小林コーチによる押し付けない指導の効果か、選手たちは自分自身の持ち味を生かしてチームに貢献しようと前を向いている。

セッターは目に見える数字として貢献度を示す基準が少ない。

「スパイカーが苦しく打っていたら『セッターのせいだ』と言われる」と小林コーチ。自らの苦い体験があるからこそ、選手に寄り添った指導に徹することができている。

「苦労してきたのもあるし、一緒に理解し合えるというか、苦しみを分かり合える。サポートや支援の仕方がたくさんあるので、そこはすごく大きい」

ゲームを作るセッターとして
トップレベルの経験を言語化

小林コーチが現役時代にセッターとして大事にしてきたのは「ゲームを作ること」

セッターの大型化が進み、高い位置でトスを上げるトレンドがある。その中でも173cmと高さのない小林コーチが活躍できたのは、配球とコミュニケーションを工夫してきたからだ。

「セッターは仲間と相手を見るポジションなので、チームを作っていく役割もあると思う。高校では技術を突き詰めてやっていたが、大学ではコート以外のところもプラスで取り組んでいた」

早大時代は、同級生に藤中優斗(STINGS愛知)、2学年下に宮浦健人(ウルフドックス名古屋)と村山豪(東京グレートベアーズ)といった現在もSVリーグで活躍する選手たちにトスを上げてきた。

「ジェイテクトになるとスーパーな選手がたくさんいて、決まらなくても本数を上げないと(調子が)乗ってこないことはあった。ゲームを作っていく上で『この場面でこの人が一番決まる』ではなく先を見据えて、決まらなくてもそこに上げることは言われた」

特にOPのポジションは打数が増えるにつれて尻上がりに調子が出る選手も多い。

そうしたさまざまな経験が言葉に説得力を持たせる。

「トップレベルで戦ってきた選手の感覚を知ることができるのは、自分にとってかなりプラスだと思う。『ボールをこの空間に置くイメージ』みたいに言語化してくれるので、新しい発見もあってかなり良い刺激になっている」と手応えを口にするのは伊藤。星名も「光輝さんは今までと少し違う感じで土台から作ってもらっているし、分からないことがあったら聞ける」と話す。

まだ本格的なコンビ練習が始まっていないため基本的な練習がメインではあるが、小林コーチの指導は確実に成長へとつながっている。

指導者となり、再びSVリーグの舞台に戻ってきた小林コーチ。生まれ故郷で選手たちを支え、信州のバレーボール界に経験を還元していこうと決意を新たにしている。


クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

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