信州から奏でた“第一楽章フィナーレ” オールスターの舞台で色を示す

2026年6月13日、東京・MUFGスタジアム(国立競技場)。JリーグオールスターDAZNカップが開催され、松本山雅FCから6人、AC長野パルセイロから1人が選ばれてピッチに立った。Jリーグは8月開幕への移行に伴い、1993年の創設から続いた33年間の歴史が「第一楽章」として一区切り。17年ぶりのオールスターで、信州フットボールの面々も節目を彩った。

取材:大枝 令、田中 紘夢

華やかな舞台で7選手がプレー
「レジェンド」との共演も果たす

きらびやかな舞台で、「信州フットボール」が確かな存在感を示した。

60クラブそれぞれのカラーで彩られた、MUFGスタジアム。色とりどりのユニフォームに身を包んだサポーターが敵味方なくスタジアムを周遊し、独特の祝祭感を生み出していた。正午スタートの開会セレモニーではリーグ開幕時のレジェンドたちが次々に登場。ボルテージを上げた。

松本山雅FCとAC長野パルセイロの計7人が所属するJ2・J3EAST-Bチームには“キングカズ”こと三浦知良(福島ユナイテッドFC)が選出されただけでなく、指揮官は元日本代表DFの“ミスター”槙野智章監督(藤枝MYFC)。注目を集めるグループだった。

J2・J3EAST-Aとの1回戦(30分制)が、この日のファーストゲーム。松本山雅のMF深澤佑太とDF小田逸稀がスタメン出場すると、キックオフからのロングボールを小田が競り合う。7分にはボランチの深澤が難しい体勢から左足サイドチェンジを繰り出し、会場をどよめきに包んだ。

そして14分。キングカズと交代で松本山雅のFW加藤拓己がピッチに立つ。交代時にはハイタッチとハグを交わし、「『点を取ってこい』『頼んだぞ』と言われた」と加藤。「僕ではなくカズさん(三浦)がカメラに抜かれるので、必然的に僕も抜かれる。非常にありがたいし、運が良かった」と白い歯を見せた。

16分には松本山雅のMF村越凱光とDF樋口大輝が交代出場。村越は右サイドハーフの位置からインサイドに絞りながらボールに関わる。左サイドバックの樋口は26分、相手FW田中パウロ淳一を追い込む。連動して槙野監督が身体を入れてディフェンス(判定は甘めのイエローカード)。オールスターならではの一幕を陰で演出した。

順位決定戦では藤川がゴラッソ
「一皮むけた感じがする」と宮部

この試合は0-2で敗れ、J2・J3WEST-Aとの5・6位決定戦(20分制)に回る。松本山雅のDF宮部大己は左センターバックとして安定感のあるプレーを見せただけでなく、自身のアプローチや機を見た攻撃参加から得点に寄与した。

そして見せ場は10分、宮部らの崩しで得た左CK。こぼれたボールに反応したAC長野パルセイロのMF藤川虎太朗が、コンパクトに左足を振り抜く。地を這う強烈なミドルシュートを、ネットに突き刺した。

「うまくボールがこぼれてきたので、リラックスしてシュートを打ったら入った。気持ち良かった」と藤川。キング&ミスターとの同組には「子どもから親の世代まで広く知られている方たち。憧れもあったし、一緒にできることのすごさを噛み締めながらやっていた。自分の中で記憶に残る宝物になった」とうなずいた。

14分にはキングカズに加え、槙野監督がユニフォーム姿で登場。2人同時に交代出場し、2トップを組んで会場を沸かせた。15分には“FW槙野”がプレスのスイッチを入れるディフェンス。キングカズは惜しいヘッドを放ったり、往時を思わせるまたぎフェイントを披露したり――。

「あの雰囲気を味わえただけでも、一つ大人になったというか…一皮むけた感じがする。レジェンドたちとできたし、(三浦知良と槙野智章監督の)あの2トップを背中で見られたのが良かった」

試合後のミックスゾーン。普段はテンションが一定な宮部も、上気した口ぶりで充実感を口にした。

Jリーグの文化を担う一員として
シーズン移行する“第二楽章”へ

「楽しかった」「良い一日だった」――。

異口同音にそう振り返る、試合後の選手たち。その中でもひときわ、実感を込めて喜びを口にする選手がいた。松本山雅の樋口だ。

長野県塩尻市出身。松本山雅U-18で3年間プレーし、専修大を経てプロ入り3年目となる。長野県2クラブから選ばれた7人の中で唯一、アカデミー出身。開催11日前の6月2日、Jリーグ推薦として選出が発表されていた。

「山雅のアカデミーから、プロになれるかもわからないぐらい苦しい大学生活を経てきた。そこから山雅で色々な経験を積ませてもらって、試合に出せてもらった結果、国立(競技場)でオールスターの選手たちとピッチに立てた」

「高いレベルでやってこなかった自分でも立つことができるのを見てほしい。今のアカデミーの子たちはこういう舞台に立つ未来、そしてもっと上の未来を目指しながらやってほしい。自分もこれで満足せずに、もっともっと上に行けばこういう景色を見られる…というのは感じ取れた」

一般的に、アカデミーが成果を挙げるのには時間を要する――とされる。もちろん切符をつかみ取ったのは本人が公式戦のピッチで力を発揮したからこそ。しかしその背後には、長年にわたって気に掛け、声を掛けてきた地域の指導者や家族、関係者たちの思いが横たわっている。

その構造は、Jリーグ全体にとっても同じことが言える。松本山雅は2012年、AC長野パルセイロは2014年にそれぞれJ参入。喜怒哀楽を味わいながら、10年以上にわたってこのリーグに親しみ、それぞれの色を深め、ともにカルチャーを醸成してきた。

全てのイベントが終わった後の、アフターマッチセレモニー。スタジアムに流れた約6分間の映像では、これまでを「第一楽章」、来季からを「第二楽章」と位置付けるメッセージが織り込まれた。

1993年に10クラブから始まり、全国43都道府県の60クラブまで広がった第一楽章。信州の2クラブも、日本列島に偏在するフットボールの熱源をつくり出し、この日はオールスターというフィナーレでも一定の存在感を示していた。それはこの地が育んできたカルチャーの結晶に他ならない。


JリーグオールスターDAZNカップ 特設サイト
https://www.jleague.jp/jleagueallstar/dazncup/

たくさんの方に
「いいね」されている記事です!
クリックでいいねを送れます

LINE友だち登録で
新着記事をいち早くチェック!

会員登録して
お気に入りチームをもっと見やすく

人気記事

RANKING

週間アクセス数

月間アクセス数