コーチ、飲食店プロデューサー、そして選手として 佐藤託矢さんが体現する信州への恩返し

コーチ」と「飲食店プロデューサー」を兼ねていた顔に「選手」としての一面が加わった。バスケットボールの信州ブレイブウォリアーズが初めてB1の舞台に立った2020-21シーズンを最後に現役引退した佐藤託矢さん。その後も長野県に残って多彩な分野で活躍してきたが、この春から3人制バスケットボール「3×3」の選手として現役復帰を果たした。大阪府出身の佐藤さんが、現役最後の3シーズンを過ごしただけの長野県で三つの顔を使い分けながら活動する理由は何か――。「佐藤託矢」の今に迫った。

文:芋川 史貴

ファン待望の現役復帰
「思いっきりプレーできた」

2026年4月14日、信州ブレイブウォリアーズから驚きのリリースがあった。2020-21シーズン限りで現役を退いた佐藤託矢さんと3×3チームの選手として契約を結んだという内容だった。

リリースから5日後の4月19日。佐藤さんはホーム最終戦で現役復帰した。

次第に集中力を高めていった佐藤さんは、何度もスクリーンをかけて壁役になったり、ゴール下でシュート時に強力なスピンをかけるフィンガーロールを決めたりと5年前を彷彿とさせる動きで大活躍を見せた。

「見せ場を作れたと思うし、ああいう場所で思いっきりプレーできたことが楽しかった」

久々に観客の前でプレーし、「思っていたよりも反響はめちゃくちゃあった」。数年ぶりに味わう高揚感を隠しきれなかった。

京都ハンナリーズや横浜ビー・コルセアーズなどでプレーした佐藤さんは、18-19シーズンからの3シーズンを信州で過ごした。子育てのしやすさに加え、クラブからセカンドキャリアのサポートを受けられたこともあって引退後も信州にとどまり、クラブの「信州ふるさと大使」として、バスケットボールの魅力を広めたりバスケットボールに取り組む子どもたちの成長を支えたりしている。

3×3は10分間で多く点数を取るか、先に21点に到達したチームが勝利する競技。5人制とは違ったスピード感や攻防の激しさが魅力だ。選手は常に動き回っているため、見ているだけでも過酷な競技だと伝わる。

クラブ側からの打診に応える形で現役復帰した佐藤さん。5年間ものブランクがあり、試合前には体力面の心配を口にしていた。

それでも、実際のプレーで不安を払拭し、「観客のみんなが現役時代のタオルやグッズを持ってきてくれるのを見たら、純粋にこういう場所に出られて良かったと思った。この場を作ってくれたウォリアーズには感謝したい」と気持ちよさそうに汗をぬぐった。

コーチとして高校生を指導
試行錯誤の毎日が「楽しい」

佐藤さんは今後の展望について、「コーチ業がメイン。そこに支障をきたさないように(3×3で)出られる大会には出たいと思っているし、そのためには身体を少しでも動かしておかないといけない」と話す。

佐藤さんが「メイン」と位置付けるコーチ業は、クラブが連携協定を結んでいる長野日大高(長野市)での指導だ。

外部コーチとして週5回ほど、高校生に指導しながら一緒の時間を過ごす。

「高校生のみんなが少しずつでも成長する姿や、頑張る姿を見られることがすごく楽しい」と話し、「自分が言ったことに一生懸命応えようとしてくれたり、必死になってボールを追いかけたりする姿を見るとアツくなる。僕も本気で応えてあげないといけないと思っている」と力を込める。

子どもたちの成長を支えるためには、コーチも成長を続けなければならない。現役時代は理論型ではなく感覚型。指導者の立場になったことで試行錯誤を繰り返し、知識の掘り起こしや指導方法の勉強を重ねることで指導力を伸ばす努力をしているという。

「もっと(現役中に)やっておけばよかったなと後悔するぐらい毎日が大変」と佐藤さん。「その大変なことを、まずは自分でやってみないと分からないと思っている。苦労しながらも楽しみながらやらせてもらっている」と充実感を口にする。

その充実感こそが、「コーチ業がメイン」と位置付ける理由なのだろう。

長野日大高での練習では、身体を使って最適なポジショニングを伝えたり、練習を止めてでもチームとして大切にしていることを共有したりと工夫しながらコーチングする姿を見せていた。

「チームとしては3年で長野県1位を目指すという目標がある。やることはいっぱいあるが、一歩ずつやっていかなければいけない」

須坂の飲食店で交流促進
「バスケを盛り上げられたら」

須坂市高梨の長野電鉄日野駅の近くにあるダイニングバー「and.T」。この店のプロデューサーとしての役割が、佐藤さんが持っている別の顔だ。

「ブースターさんたちが気軽に集まって、一緒にバスケを応援できるような場所にできたらいいなという思いがあった。お客さん同士がつながっているのを見ることも楽しい」

ご飯を食べたりお酒を飲んだりしながら、カウンター越しに佐藤さんとバスケ談義に花を咲かせることもあれば、初対面の信州ブースターと出会う偶然もある。「and.T」がハブとなり、信州ブースターとの新たな出会いを生んだり、信州への愛を深める場所になったりしている。

大阪府出身の佐藤さんは、関西弁の親しみやすいキャラクターとして信州ブースターの間で愛されている。

「引退後もウォリアーズの一員として働けることにすごく感謝しているし、バスケに関わる仕事を毎日楽しくやらせてもらっている。ファンの拡大はもちろん、ウォリアーズの認知度をもっと上げていかないといけない」

その目はクラブの外側にも広がる。

「僕たちが経験したことを地域に還元できればいいなと思っている。ウォリアーズを通じて長野県全体のバスケ技術の底上げをしたり、興味を持ってくれる人を増やしたり。バスケ全体を盛り上げられたらいいなと思う」

コーチとして子どもたちの技術と精神を育て、プロデュースする飲食店で地域のコミュニティを作る。そして、現役復帰した3×3の選手としてバスケの魅力を伝える――。“三足の草鞋”を履きながら、地域に根を張って信州に恩返しをしていくつもりだ。


信州ブレイブウォリアーズ 3×3 紹介ページ
https://www.b-warriors.net/team/3×3/

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