“3×3への愛”が緑に凝縮 「信州松本TopEVOLVE」武田揚介社長の覚悟

「松本に芽吹いた3人制バスケットボールのカルチャーを、絶やすわけにはいかない」。クリーニング事業を柱とする株式会社巴屋(本社・松本市)の武田揚介・代表取締役社長が下した決断は、3×3の灯を新たな器で継ぐことだった。プロチームの設立という大きな決断の先に、何を見据えているのか――。新リーグ「ロイヤル・バスケットボールリーグ」(RBL)で戦う「信州松本TopEVOLVE」への思いを、武田社長に聞いた。
文:大枝 令
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城下町の灯を絶やさないために
わずか半年で切った覚悟の船出
松本では数年前から、別の運営主体のもとで3人制バスケットボールのプロチームが活動していた。コートサイドの距離の近さなどに魅了されたファンが少しずつ増加するなど、一定の手応えを得ていた。
しかし城下町に3×3のカルチャーが芽生え始めた矢先、実質的にチームは活動停止。松本市をはじめとする中信地方に、本拠地を置くクラブはなくなった。

松本に残った熱を消さないために動いたのが、武田社長だった。巴屋に新設したスポーツ事業部で人材を整え、準備を進めていた。「『やるか』という話から、物事が一気に進んだ」。シーズン開幕まで半年余。選手をゼロから探す、ドタバタのスタートだった。
一度は「やめようか」とも悩んだという。それを押し戻したのは、社内の声だった。「会社の取締役たちが、『やると決めた以上はやっていきましょう』と応援してくれた」。社長の思いからスタートした事業は、社全体の覚悟へと変わっていった。
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チーム名とエンブレムに込めた
創業100年の歩みと進化への願い
Bリーグでプレーしてきた増子匠をゼネラルマネージャー(GM)に据えた陣容。とりわけ、チームディレクターを務める松本市出身の小口陸が編成の中核を担ったという。地元で3×3を続けながら日本代表を目指すには現職との両立が難しいと悩んでいた小口に、武田社長が運営と選手の二足のわらじを提案した。

「小口が入ってくれたことで、選手の部分が一気に広がった」。さらに、18歳の頃から武田社長が目をかけてきた大学生インターンが、縁の下の力持ちとして運営を支える。
チーム名「TopEVOLVE」には、明快な思想が宿る。「TOP」は頂点を目指す姿勢。「EVOLVE(進化)」は、巴屋グループの理念にもともと刻まれてきた言葉だ。「この地域で、チームと子どもたちが一緒になって松本をもっと良くしていける」。その願いが、名に込められている。

エンブレムも同様。自然豊かな信州を象徴する緑をベースに、県鳥のライチョウを配置した。「ライチョウはあまり飛ばないけれど、飛んだ時の力強さがある」。頂きを目指して羽ばたく姿の象徴である。そこに、戦う姿勢を表す松本城を重ねた。
そして下部に並ぶ三つの星――これは、巴屋のエンブレムから受け継いだものだという。「今、私が4代目。3代続いてきた社長たちが、ここまで築き上げてくれた。その歩みを、星に見立てている」。企業の歴史を、表に出しすぎない形で静かに忍ばせた。
名門チームを抑えてRBLに参入
その先に思い描く「プロ像」は
参戦先に選んだRBLは、12チームで固定されて始まった新リーグだ。武田社長がそこに共鳴したのは、「簡単にできると思われたくない」という一点だという。
「1年でなくなるチームもたくさんある。そうではなく、これだけで生活していけるプロを作る。リーグとチームの価値を制限したうえで、両方の土台をしっかり作りたい――その思いが一緒だった」

ただ、参戦の道は平坦ではなかった。当初の条件を整理すると、年間で3000万円近い運営費が必要となる。「初年度にそれは難しい」と、一度は断念。だが議論を重ねるうち、中期経営計画を描く前提で、現実的な条件から始めることになった。
27〜28チームの応募から選ばれたのは、わずか12チーム。3×3界でトップを極めた名門ですら落選するなかでの選出に、武田社長は尋常でないプレッシャーを感じたという。「素人の作ったチームが『なぜ?』という顔をされる。でも(リーグ側に)『思いで選びました』と言ってもらえた」
「一番近いプロスポーツ」を掲げ
松本城を背に、次世代へ託す
もっとも、武田社長が描くのは豪華絢爛なプロ化ではない。資金面では、巴屋からの直接的な注入を最小限に抑える。「私たちが入れてしまうと、『巴屋がフォローしてくれる』という感覚になる。自分たちの力で勝ち取る文化にしてほしい」と、選手たちに自立を促す。
その思想を、「プロ意識の徹底」にも反映させるつもりだ。将来的には試合会場にスーツかセットアップで赴くルールとしたい考えで、「バスケットボールを持って、サンダル履きで我が物顔で入ってきて、試合のときだけプロの意識を出されても困る」。プロフェッショナル――つまり、見られる者にふさわしい振る舞いを求めていく。

根っこにあるのは、「どこでも、選手にすぐ会える、一番近いプロスポーツにしたい」という願い。武田社長を3×3に惹きつけたのも、まさにその距離の近さだった。「選手との距離が一番近く、一緒に戦っているという思いが出てくる。会場さえできれば、子どもたちも一緒に楽しめる」
初年度のRBLは地元・松本での開催はない。当面の練習拠点も関東に置く。「強いチームを作って、子どもたちに理解してもらった上で、3年後ぐらいには松本に拠点を移したい」。ただ、イベントはすべて松本で行う。2026年7月18-19日にも、初の主催イベント「TopEVOLVE 3×3 CIRCUS」を松本城で開催する予定だ。
こうした活動の先に見据えるのは、3人制にチャレンジしたい育成年代が日本代表を目指せる育成環境の整備。小口は昨季エグゼプレミアで得点王に輝き、日本代表候補まであと一歩に迫る。「このチームでそこを押し上げ、日本代表を作っていきたい」。
やりたいことは、数えきれないほどある。「夢の絵は描いているものの、現実になるまでには時間がかかる」と武田社長は笑う。城下町に芽吹いた3×3のカルチャーは、次の世代へ。松本城を背にした緑のユニフォームの航海が、ここから始まる。

SHINSHU MATSUMOTO TopEVOLVE(Instagram)
https://www.instagram.com/topevolve3x3/
自主イベント「TopEVOLVE 3×3 CIRCUS」概要
https://www.tomoeya-group.co.jp/wp-content/uploads/2026/06/TopEVOLVE_3x3_circus.pdf
ロイヤル・バスケットボール・リーグ(RBL)公式サイト
https://www.3x3rbl.com/






















