“百花繚乱”の予兆が色濃くにじむ 新生アリーズの開幕連勝スタート

「誰が出ても同じパフォーマンスを出せるようにしたい」――。プロスポーツの監督からはしばしば、こうした言葉を聞く。理想論だけでなく実際に体現するのは至難。しかし開幕節の信州ブリリアントアリーズは原秀治監督の言葉どおり、それぞれがコートで強みを発揮した。2試合ともベンチメンバーほぼ全員がコートに立ち、総合力で連勝「初代王者」に向けて好発進した。

取材:原田 寛子/取材・文:大枝 令

選手交代で主導権を奪い返す
多彩な表情を見せて好スタート

「流れも悪い中で、途中から入ってきた選手が本当にいい仕事をしてくれた。誰が出ても全員ルートインのバレーをできるのが、このチームの強みだと思っている」

連勝スタートとなった東京サンビームズとの2試合を終え、原秀治監督はまずそう振り返った。第1日は寄せ付けずストレート勝ちを収めたものの、第2日は修正を加えられて苦戦。第2セットを22-25で失い、セットカウント1-1となった。

そこで指揮官は第3セット、スタートから動く。セッターに高卒2年目の小山晴那、アウトサイドヒッター(OH)の一人には舛田紗淑を送り出す。

「最後に決め切ることがチームに一番勢いをもたらすと思っている。自分が入った時にはサーブとスパイクをチームの点数に繋げて、そこから勢いをつけていく気持ちを常に持って準備していた」

そう振り返る舛田は、失いかけていた主導権を一気に引き寄せる活躍を見せた。バックアタック3本を含む14得点とチームを力強く牽引。サーブの打ち方も今季からマイナーチェンジを施したといい、「それが効果的に打てた」と明かす。

キャプテンの横田実穂に代わってコートに立った小山は「入った時は『やってやろう』という気持ちだった。高さを生かしたコンビと、スパイカーが打ちやすいトスを意識した」。舛田だけでなくOH黒鳥南、ミドルブロッカー(MB)山村涼香らの躍動をお膳立てした。

さらに第3〜第4セットは、オポジット(OP)関沢小雪が存在感を放つ。189cmの中国人OP王美懿(ワン・メイイ)に不慣れな連戦の疲労が見えたタイミングでコートへ。しなやかな左腕から次々とスパイクを叩き込み、アタック決定率66.7%(8/12)と活躍した。

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選手20人の大所帯だからこそ
活発な競争から「飢え」を生む

「去年も途中からの出場であまりうまくいかず、悔しい思いをした。その悔いを晴らすという意味で、『もう一度やろう』という気持ちで入った」

「代わりに入った選手が何とか流れを作ったり、自分たちが悪い状況でも全員で戦うことができたのは自信になる。長いリーグを戦っていく上で絶対的に必要なこと」

試合後の記者会見で、関沢はそう切り出した。
その言葉に、今年のチームが持つ「強さ」が集約されている。

まず長いシーズン、コンディションの上下は誰しも存在するもの。その中で、相手の戦い方にも応じた一手を打ちやすい。実際にこの日は交代出場の舛田、小山、関沢らが停滞感を払拭。20人と大所帯でも、コートの中でブリリアンスを発揮できる瞬間はめぐってくる。

そしてチーム内競争は、コートで存在を証明するための“飢え”を喚起する。ベンチを含めて14人が選ばれ、6人はメンバー外となる。明確な競争が生じ、この日は関沢が躍動。原監督は「試合に出たい――というアピールをすごく感じていて、出たら活躍するとは思っていた。期待に応えてくれた」と目を細める。

指揮官はさらに続ける。

「(メンバー外を)6人決めなければいけないが、非常に頭が痛いのが現状。コートに出たい気持ちが飢えている選手が出た時の爆発力はすごいと思うし、それもチーム力として計算に入れている」

「練習でしかプレーは評価できないから、練習を一生懸命やらないと試合には全然使えない。それはずっと言い続けていて、その意味でもいい練習ができたのではないかと思う」

加えて今シーズンから、同じ相手と2日間で2連戦するのが基本的なルーティンとなる。2日目は特に、対応しやすいしされやすい。そこで違いを生む要素の一つは、引き出しのバリエーション。コンビネーションも含め、多彩な表情を見せた方が勝ち筋は広がる。

コート外でも取り組みは多彩に
地域に広く、深く根付くため

第2日に総合力がものを言ったが、それはまず初日で強さを示したからこそだ。

横田だけでなく、高野夏輝と黒鳥のOH陣も躍動。2人は「(横田)実穂さんが上げる時に(相手のブロックを)1枚にしてくれる状況が多かった。相手がよく見えたし、後ろの選手も(相手コートの状況を)言ってくれた」と口をそろえる。

そもそも新戦力は王美懿だけでなく、台湾出身のMB温以勤(ウェン・イチン)も存在感を発揮。ブロード攻撃からクロスのスパイクを豪快に叩き込む。ブロックは3年目のMB山村が2試合7セットで8(1セット平均1.14)と好スタートを切った。

こうして総合力で新リーグの初代王者を目指す信州。ブロックで力を吹き込んだ山村は話す。

「応援してもらって支えてもらってバレーボールできる環境があることは、みんな自覚している。より地域密着型になって、私たちも自分たちからたくさん発信して、地域の方に協力してもらえれば」

「そこも頭に入れながら、自分たちがどれだけバレーボールを楽しめるか。それを考えながら普段から練習をしている」

チームは名称変更だけでなく、演出面の強化や最寄駅からの無料シャトルバス運行なども含めて新たな取り組みを始めた。地域により広く、より深く愛されるための第一歩。そして「来場者」を「ファン」に変える百花繚乱のパフォーマンスを、コートで示し続けていく。


チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484


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