1,477日ぶりのホーム黒星 そしてアリーズに新たな闘志が宿る

記録は破られるものであり、塗り替えるためにもある。ルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズは前回の試合で、実に1,477日ぶりとなるホーム黒星を喫した。2022年に原秀治監督が就任してからは初めて。しかしこの苦みを糧とし、乗り越えてこそ「初代王者」への道は拓ける。11月30日、12月1日は再びホームでアルテミス北海道戦。再び歴史を作る、リスタートの第一歩だ。

文:原田 寛子/編集:大枝 令

ストップした“ホーム不敗神話”
対策され、ミスもかさんで苦杯

最後はサーブがネットにかかり、試合終了を告げるブザーが響いた。

2024年11月17日、リガーレ仙台との第2戦はセットカウント1-3。選手たちは悔しさをにじませながら、コートエンドに整列する。

苦みが染みる敗戦だった。

試合後の記者会見。就任3年目でホーム17連勝中だった原秀治監督は「ホームゲーム開催は多くの方の協力のもとに成り立っている。とにかく申し訳ない気持ちでいっぱい」と、声のトーンを落としながら話した。

「勝負どころで決め切れなかった。欲しい時に1点を取れたのがリガーレ(仙台)さんで、1点を取って流れを持ってこられなかったのがうち。心に隙があったと思う」

その言葉どおり、仙台の粘り強い戦いに苦しんだ。第1戦のデータなどを踏まえ、攻撃の軸となる速攻が警戒される。アリーズのスパイクはなかなか相手コートに落ちない。それに加え、多彩で速い攻撃を展開される。

前日の試合後会見。仙台の田中千代美監督が「明日はやり返す」とだけ話した凄みが、第2戦の仙台に宿っていた。

アリーズはアウトサイドヒッター(OH)舛田紗淑の強打やミドルブロッカー(MB)温以勤(ウェン・イチン)のブロックなどで第2セットを奪い返す。その後はブレイクで点差をつけても、じわじわ追い上げられる。第3〜4セットも取られた。

チーム最多22点を挙げた桝田は振り返る。

「勝てる試合だったのに、自分たちのせいで負けた。集中力を欠いて、1本目に上がったボールを2本目で落とすミスが多かった。粘り強いチーム相手の場合、特にやってはいけないミス」

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悔しさにまみれたホームゲーム
ファンのねぎらいが奮起の糧に

2020年11月1日、群馬銀行グリーンウイングス戦以来となるホームでの敗戦。キャプテンのセッター横田実穂は明かす。

「連勝が続いていたのですごく悔しい。ファンの皆さんがホームで勝利を目にして帰っていただく姿をいつもうれしいと思っていたので、その意味でもすごく悔しい」

「『惜しかったね』『次は頑張ってね』という声をかけてもらったけれど、やっぱり勝って『おめでとう』という言葉をかけてもらった方が私たちもやりがいがある――と改めて実感した」

もちろん勝負の世界だから、常に勝利が約束されているわけではない。だからこそ、目の前のパフォーマンスは何物にも代えがたく輝きを放つ。

大切なのは4年ぶりに味わった苦い経験を、どう生かしていくか。それはチームも先刻承知。横田は試合後の会見から「本当にこの1敗をしっかりと受け止めて、次に繋げないといけない」と闘志を燃やしていた。

そもそも1戦目は、タフな展開から白星をもぎ取ってはいた。途中出場のOH高野夏輝が持ち前のディフェンス力でリズムをつくる。重要な場面ではショートサーブで翻弄し、得点が決まれば表情豊かに笑顔が弾ける。

「昨年まで一緒にプレーした中田唯香選手の元気な姿を見ていて、『自分がコートに入った時は同じような存在になりたい』という気持ちでやっている」という通り、コート内の明るさのギアも上げていた。

MB山村涼香のブロックや速攻も効果的に決まり、桝田はバックアタックが冴える。「取り切る」強さを見せて3-1で開幕3連勝。これらの手応えと収穫が全て失われたわけでも決してない。

記録は自分たちの手で塗り替える
チーム全員で恩返しのリスタート

チームにとって大切なのはリーグが終わった最後。目標に掲げた「初代王者」の座に輝き、大輪の笑顔を咲かせることだ。記録を継続することは、そのためのプロセスに過ぎない。

だからこそ、指揮官は自らに矢印を向けながらも前だけを見据える。

「ホームで負けたのは悔しいが、逆に開き直った部分もある。改めていろんなアイデアを出し、積極的に選手を投入するなど、新たにやっていきたい」

この1敗はもちろん悔いが残るだろう。しかしいつか記録は途切れたり、破られたりするもの。同時に記録は塗り替えられる。他ならぬ、自分たちの手でだ。

選手たちの眼差しに落胆の色が浮かんだのは一瞬だけだった。「チーム全員でもう一度立て直してホームで勝つ。それが恩返しになると思う」と原監督。試合終了のブザーは当時に、リスタートへの合図でもある。

まずは11月30日、12月1日のホームゲーム。迎えるのは、成田(旧姓・大懸)郁久美コーチが昨季まで率いたアルテミス北海道だ。ホームでの黒星を通じ、応援されるありがたみが染みた。恩返しの念も強まった。この経験を糧に、再び白星を積み重ねていく。


Vリーグ女子 アルテミス北海道戦(11月30日-12月1日)ホームゲーム情報
https://www.briaristcamp.com/information?no=f5VCcnf5CSF9Si3Gs3SQ3
チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484

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