ホームで堂々のフィナーレ 無敗優勝を飾っていざF1に返り咲く
スローガンにある通り、「力戦奮闘」のシーズンだった。フットサル・F2リーグで16勝2分の成績を収めたボアルース長野。1試合を残して“無敗での優勝”を決めると、広島エフ・ドゥとの最終節も5-1で快勝して“無敗優勝”を達成した。歓喜に満ちたフィナーレの様子と、「信州サッカー応援企画」の試合で待望の今季初ゴールを挙げた地元出身選手に焦点を当てる。
文:田中 紘夢/編集:大枝 令
写真:ボアルース長野提供
集大成にふさわしいゴール競演
総合力でつかんだ無敗優勝
“凱旋試合”にふさわしいゴールラッシュだった。
デウソン神戸とのアウェイゲームで優勝を決め、ホームに帰ってきた。勝てば無敗フィニッシュが決まる最終節。広島エフ・ドゥに5-1と快勝し、有終の美を飾った。
「勝ってみんなで一緒にお祝いしたい」。神戸戦後にそう山蔦一弘監督が話したように、ただの消化試合ではなかった。
立ち上がりに先制を許すも、すぐさま反撃に転じる。4分19秒、長野市出身の中村亮太が同点弾。右サイドでの巧みなターンから、飛び出してきたGKの股を冷静に射抜いた。
7分52秒には岡本生成、8分37秒には上林快人が追加点。後半戦で思うようにいかなかった岡本が2試合連続ゴールを遂げれば、エースの上林は4戦連発だ。その後も加入1年目の稲葉柊斗が決め、第1ピリオドを4-1で折り返す。
そして迎えた第2ピリオド、最後の20分。これまで出番の少なかった選手たちが“鬱憤”を晴らす。
23分35秒、田中智基のキックインでリスタート。松永翔から今野遼介がクサビを受け、サポートに入った丸山裕輝に落とす。丸山が左足を振り抜き、ゴールに突き刺した。
絶妙なコンビネーションを見せた今野と丸山は、シーズンを通して出番が限られていた。それは好セーブを連発したGK岡島工も同様。彼らの悔しさがエネルギーに変わり、5-1と快勝を収めた。
「『必ず全員で勝とう』というテーマを持っていた。非常に良いゲームになったと思う」
そう山蔦監督が言えば、キャプテンの三笠貴史も「誰が出ても問題ない。最終戦にふさわしいゲームができた」と口にする。まさに総合力でつかんだ無敗優勝だ。
この日のことぶきアリーナ千曲には、同会場最多となる1,466人が集った。試合後は優勝報告セレモニーを実施し、大観衆とともに喜び合う。前節に続くシャーレアップを終えた後、選手たちは山蔦監督を胴上げ。指揮官は満面の笑みで宙を舞った。
「本当に幸せな時間を過ごせた。試合にしっかり勝ってお祝いできたことで、充実感、達成感というものはあった。来季はカテゴリーが変わってもっと厳しくなると思う。長野の力を集結して、多くの勝利を届けて、多くの喜びを与えられるチームになりたい」
長野市出身の丸山が今季初得点
古巣のサポーターに歓喜届ける
「ここで何かを残さないと、今シーズンは終われない」
長野市出身の丸山は、歓喜の裏で危機感を抱いていた。
最終節で3試合ぶりのメンバー入り。優勝を決めた神戸戦には帯同できず、シャーレアップの瞬間も映像で眺めることしかできなかった。シーズンを通して出番が限られ、優勝に貢献したという実感も得られなかった。
「優勝が喜ばしいことなのは間違いないけど、あの瞬間に自分がいなかったのは悔しいし、情けない。正直、そういう思いのほうが強かった」
チームとして無敗優勝を目指した最終節だが、丸山にとっては選手生命が懸かっていた。「今日何もできなかったら終わってしまう」。文字通りのラストチャンスと位置付けた。
この日は登録選手を満遍なく起用すべく、3つのセットを編成。丸山はサードセットに入ると、第2ピリオドでチャンスをモノにする。
キックインの流れから、今野の絶妙な落としを受けて左足一閃。強烈なシュートが突き刺さった。
「用意した形がうまくいきすぎたし、(今野)遼介の落としもよすぎた」。丸山からすれば時が止まったような感覚で、焦りもあってシュートは正面へ。それでも気持ちが乗り移ったのか、GKがボールとは逆方向に動いてくれた。
無敗優勝を決定づける今季ラストゴールは、自身にとって待望の今季初得点でもあった。クラブはこの試合を「信州サッカー応援企画」と銘打ち、AC長野パルセイロと松本山雅FCのユニフォーム着用者にチケット割引を行っていた。長野U-15、松本U-18出身の丸山からすれば、存在を証明する晴れ舞台。両クラブのサポーターを前にして、「結果がついてきてよかった」。
前日には練習を終えた後、J2昇格プレーオフ決勝の動向をチェック。松本は2-1とリードしていた最終盤に追いつかれ、レギュレーションによって昇格を逃した。
「僕らは昇格できたけど、本当に簡単なことじゃない。勝ってサポーターが歓喜する瞬間を見たかった」
それを踏まえて翌日に臨んだ最終節。それでなくとも力が入る中で、「なんとか勝ててよかった」と安堵の表情を浮かべる。同じ松本U-18出身の中村と“アベック弾”を決め、古巣のサポーターにも歓喜を届けた。
チームは無敗優勝を決め、満を持して2シーズンぶりのF1に舞い戻る。在籍4年目の丸山は「まだレギュラーとして戦えた年はない。F1の舞台で主力として戦って、結果を残せるように成長したい」と語る。キャプテンの三笠も「僕らは選手なので結果で応えないといけない。勝ち続けて盛り上げていきたい」と意気込みを口にする。
前回のF1在籍時は、4シーズン連続の最下位に終わった。来季も厳しい戦いが予想されるが、変わらず「力戦奮闘」を体現するのみ。無敗優勝の勢いのままに、再び長野旋風を巻き起こす。
チーム公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/