冷静沈着なスナイパー アキ・チェンバースが見せた“隠れた一面”とは

会場のボルテージが上がれば上がるほど、反比例するかのようにアキ・チェンバースの表情はより冷静に、より無表情へと近付く。決して大きく、派手に目立つことはない。何があっても淡々とタスクを遂行し、冷静沈着な“3&D”としてチームを影から支えている。信州ブレイブウォリアーズが迎えた、12月21-22日の富山グラウジーズ戦。チェンバースのプレーを検証していくと、そこに隠れた「とある一面」も垣間見えてきた。

文:芋川 史貴/編集:大枝 令

フリースローのみで8得点
際立つ「冷静さ」と「正確さ」

12月21日-22日、ホワイトリングで行われた富山グラウジーズとの第14節。信州ブレイブウォリアーズはペリン・ビュフォード、栗原ルイス、生原秀将を欠く中、東地区同士で上位チームとの試合に臨んだ。

GAME1で92-96、GAME2が96-89と1勝1敗。ただ、2日間を通してチーム全体でステップアップしようとする姿が随所に現れた試合内容だった。第2戦のオーバータイムに及ぶ逆転劇は言うまでもないが、敗戦を喫したGAME1でも、いぶし銀の活躍をチェンバースは見せていた。

チェンバースは、ディフェンスと3Pシュートに定評のある「3&D」のプレーヤーで、表情を変えずに淡々と相手を守ってリングを射抜く。その姿はまさに仕事人であり、勝久マイケルヘッドコーチ(HC)が目指すバスケットにもフィットする。

試合が競れば競るほど、会場のボルテージが上がれば上がるほど、感情を出さず、より表情を引き締める。

活躍を見せたGAME1もまさしく、互いに譲らないデッドヒートが繰り広げられていた。フリースローを含めた1本の重みがより大きくなる、息詰まる展開だ。そんな中でチェンバースは、3ポイントシュート1本と2アシストに加え、フリースローを9本獲得。そのうちキャリアハイに並ぶ8本を沈めた。

PROFILE
アキ チェンバース(Aki CHAMBERS)1990年9月19日生まれ、アメリカ合衆国出身。アメリカ人の父と日本人の母を持つ。カリフォルニア大学マーセド校から当時bjリーグの浜松・東三河フェニックス(現三遠ネオフェニックス)に入団。サンロッカーズ渋谷、千葉ジェッツ、横浜ビー・コルセアーズ、群馬クレインサンダースを経て昨季は渋谷でプレー。2021年には日本代表にも選出された。粘り強いディフェンスと正確な3ポイントシュートに定評のあるSF。191cm、90kg。

特にこの日は、富山側のベンチとダビー・ゴメスHCにテクニカルファウルが宣告され、その際のフリースローも2本ともきっちり沈める。比較的イレギュラーなシーンでも、さすがの仕事ぶりを見せた。

チェンバースは自身のタスクについて「まだ模索していることも多い。コートに立ったときに自分ができること、どうやってチームに貢献できるのかを考えながらプレーしている」と語る。ベテランとなった今でも自身の成長にフォーカスする。

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フリースローを得たシーンを検証
冷静さの裏に「ハートの熱さ」も

プレッシャーのかかるフリースローを沈めた。
アシストを記録した。

結果だけで語ると冷静さが際立つが、過程にフォーカスすると冷静さの裏にある「ハートの熱さ」が見えてくる。

GAME1でフリースローを得たシチュエーションを整理する。

①第1クォーター(Q)残り3:47、13-21。山崎玲緒のパスから迷わず3Pシュートを選択し、ファウルをもらい3本中2本を沈める。

②第2Q 残り3:49、43-46。右トップの位置でボールを受けてリングにアタック。ファウルを誘って2本沈める。

③第2Q 残り2:32、47-47。富山のベンチテクニカルファウルでフリースローを1本沈める。逆転に成功。

④第3Q 残り3:27、72-68。富山のゴメスHCに対するテクニカルファウルでフリースロー1本沈める。

⑤第3Q 残り1:05、73-75。富山の宇都直輝とルーズボールを競い、ファウルを獲得。相手のチームファウルが5つに達していたため、フリースローを獲得して2本沈める。同点とする。

羅列すると、①と②、⑤のシチュエーションはどれも異なるが、迷わずに3ポイントシュートを選択した迷いのなさ、果敢にリングへアタックした強さ、懸命にルーズボールを追った泥くささなど、「気持ちの強さ」「ハートの熱さ」なども浮き彫りになる。

「常にアグレッシブにプレーすることと、ボールをもらおうとすることを意識している」

そして持ち前のディフェンスはもちろん、オフェンス面でも徐々に存在感が増している。

強豪チームを渡り歩いてプレーを続ける34歳。プロフェッショナルなのは間違いない。それでもチェンバース自身が語るように、冷静な表情だけでは伝わらない「勝負に対する思い」や「泥くささ」も、冷静さに着目することで浮き彫りになった。

信州に移籍して1年目。新しいチームで自分の役割も見つけながら、「チームメイト同士の友情はすごくある」とチームにも馴染んできた。ここから始まる勝負の中盤戦に向けて、冷静と情熱を併せ持つスナイパーの活躍はさらにクローズアップされてくるだろう。


Bリーグ 選手紹介 アキ・チェンバース
https://www.bleague.jp/roster_detail/?PlayerID=8448
Bリーグ チーム紹介ページ
https://www.bleague.jp/roster/?year=2024&club=716&p=&c=&o=random&tab=2
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/

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