“新春”ブレイブウォリアーズ ブースターが作る信州の応援カルチャー

新春のホワイトリングは、「書き初め」がずらりと並んで「勝ち初め」となった。信州ブレイブウォリアーズのブースターの一人が考案し、じわりと広がった取り組み。Bリーグ公式にも取り上げられた書き初めを、始めたきっかけや理由は何か。新春カルチャーの真相に迫りながら、ブースターが作り出すアリーナ空間に焦点を当てる。

文:芋川 史貴/編集:大枝 令

会場いっぱいに広がる書き初め
仕掛け人から伝わる信州愛

「みんなで楽しいこと、思いついたことをやりたい」

そう語るのは、ブースター歴8年目の田中裕二郎さん。とある取り組みの仕掛け人だ。

2年前の2023年1月1日。Bリーグの公式X(旧Twitter)アカウントが、とある動画をアップした。

選手の名前だけでなく、チーム名や選手の名前をもじった「新春ブレイブウォリアーズ」「あけマクておめヘンリー(アンソニー・マクヘンリー)」などと記されたユーモアあふれる書き初めたちが、ホワイトリングの一角に並んだ。

そこから2年の月日が流れ、2025年1月4日。信州-福島ファイヤーボンズとの試合でも、書き初めが帰ってきた。しかも、かつてホーム2階ベンチBACKサイド席(通称・角っちょ)だけだった書き初めが、アリーナ全体に拡大。“新年の風物詩”と化していた。

書き初めをする子どもたち(田中裕二郎さん提供)

田中さんが書き初めを始めたのは2021-22シーズンの1月26日。琉球ゴールデンキングスとのゲームが最初だったという。田中さんの父親が書道の先生で、田中さんの子どもがそこで書き初めを練習していた。

大みそか。田中さんが実家に帰り、壁に飾られていた子どもたちの作品を見ているうちに、ひらめいた。

「選手の名前を書いたら面白いのでは」

そして家族で選手14人分の書き初めをしたため、会場で掲げたのが始まりだった。

初めて書き初めを掲出した2022年1月26日の琉球戦(田中裕二郎さん提供)

翌年の22-23シーズンには選手の名前に加え、ブースター仲間が考えた言葉も書いて掲出。それがバスケットLIVEの中継で抜かれた。冒頭の動画がそれだ。

「とても楽しかった。『楽しいことはみんなでやりましょう』って」

23-24シーズンの新春ゲームはアウェイ戦でおあずけとなったが、今季は2年ぶりの新春ホーム。それに合わせて書き初めイベントを企画した。20人ほどが集まり、約120枚を仕上げた。

それだけでなく、SNSでも「#SBWB(信州ブレイブウォリアーズブースター)書き初め部」というハッシュタグを使用。書き初めの輪を広げた。

その効果は絶大だった。

会場のいたるところに書き初めを掲げているブースターの姿。よく見るとアウェイブースターの手にも田中さんの書いた書き初めが掲げられており、敵味方関係なく新春の賀正ムードを楽しんでいた。

アウェイの福島ブースターも書き初めを掲げる

「他のチームではやっていない、信州らしい試みだと思う。悪ふざけから始まったけれども、すごく盛り上がっていて協力して楽しめた」。田中さんは目を細める。

広告

協賛企業様募集中
掲載のお問い合わせはこちら

取り組みを点から線、線から面へ
「主体的に楽しむ」姿勢が根底に

信州の会場ではそれ以外にも、ブースターが作ってきた各種のカルチャーが存在する。

例えば相手がフリースローを打つ時は、一般的なリアクションであるブーイングではなく「レッツゴーウォリアーズ」とコールしてきた。同じく相手フリースロー時に、タオルを裏返しにしてヒラヒラさせる“一反木綿”と呼ばれる妨害方法も定着した。

タオルの裏側をヒラヒラ動かす「一反木綿」の初期、2022-23シーズン

もちろん応援の仕方や観戦のスタンスは人それぞれ。強制されるものではないし、全てが不変でもない。それでも共通の好きなものを観にきたブースターが+αの楽しみを模索し、実行し、“信州スタイル”として定着していくのもクラブの色になり得る。

田中さんが観戦している「角っちょ」。実際にそのエリアのメンバーから「一反木綿運動」が起こったり書き初めが始まったりと、ブースターカルチャーの発信源にもなりつつある。

「観戦に来ているのでもちろん勝利する姿は見たい。けれど、それだけではなくて、エンターテイメントとして試合も楽しむし、会場でのブースターさんたちとの交流も楽しみたい。ちょっとしたイベントがあっても楽しいのかなと思う」

カルチャーの発信源となる通称「角っちょ」。ユーモラスな書き初めも

そうした言動から浮き彫りになるのは、「能動的に楽しむ」というスタンス。それが独自の魅力を作り出す源となる。点は徐々に線となり、線が面となっていく。それが定着すればカルチャーへと昇華する。

「子どもたちもうれしそうに書き初めを受け取ってくれた。楽しそうに掲げているのを見ていると、大人の自分も楽しくなってくる」

「正直バスケ観戦とは全く関係ないんけれども、そういう非日常感を感じたら、また会場に来たくなるかもしれない。そういうのが良い方向に行けばいいと思う」

チームが創設されて今年で15年目の節目。2026年には新リーグ「Bプレミア」への参入も決定し、ますます信州バスケットは存在感を増していくフェーズだ。同時にブースターも増え、そこから派生するカルチャーも変化・定着・成熟の道を歩むのだろう。

「好きなものはもうここにある。その中でみんなで何をするか。みんなで楽しいことを、思いついたことをやっていきたい」

そう話す田中さん。「好きなものを主体的に楽しむ」姿勢から、また新たな信州の魅力が生まれるのかもしれない。


Bリーグ チーム紹介ページ
https://www.bleague.jp/roster/?year=2024&club=716&p=&c=&o=random&tab=2
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/

LINE友だち登録で
新着記事をいち早くチェック!

会員登録して
お気に入りチームをもっと見やすく