逆境でも示した“勇士のスピリット” 東地区覇者・A千葉戦で見せた進化の兆し

敗れはしたが、そのスピリットは示した。信州ブレイブウォリアーズは2025年3月22-23日、同じB2リーグ東地区で優勝が決まっているアルティーリ千葉と対戦。両日ともメンバーがそろわず2連敗したものの、課題だったエナジーやディフェンスの遂行力などを克服するパフォーマンスだった。会場はマザータウン・ことぶきアリーナ千曲。ブースターを大いに沸かせ、苦しい状況の中で強豪相手に手応えもつかんだ。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
ベンチメンバー中心のGAME2
日本人8人でも戦う姿勢を貫く
敗れはしたが、その姿は“勇士”そのものだった。
A千葉を迎えてのホームゲーム。GAME1は82-89、GAME2は71-100と、スコアだけを見れば惨敗とも言える。アウェイに続き今季2度目の対戦となり、戦績は4戦4敗。ただ、試合内容は決して悲観するものではなかった。

3月23日のGAME2。GAME1で欠場したウェイン・マーシャル、栗原ルイス、生原秀将に加えて、ペリン・ビュフォード、テレンス・ウッドベリーまでも欠場。エントリーしたのは日本人選手8人だけだった。
さらに石川も後半早々にコートを去るなど、ベンチメンバーを中心とするラインナップでの戦いを余儀なくされた。

惜敗したGAME1よりも遥かにタフなシチュエーションだ。しかし、選手たちの目はむしろGAME1よりも燃えていたようにも映った。
最終的には29点差がついたものの、GAME1と同様に全員が助け合いながらディフェンスを遂行。オフェンスでは積極的にドライブや3ポイントシュートを狙って得点を重ねていく。

1月26日の熊本ヴォルターズ戦以来の出場となる山崎玲緒は、古巣相手に持ち前のスピードを生かす。狩野富成もキャリアハイとなる30分55秒のプレータイム。相手の外国籍選手と最後までやり合った。
外国籍選手が0人。誰が見ても明らかにわかる不利な状況に立たされても、どれだけ点差が開いても、決して戦うことをやめない。だからこそ――なのだろう。GAME1よりもさらに大きなエールや声援が、ことアリに響きわたった。

試合終盤。小玉大智とアキ・チェンバースがリバウンドに2人で飛び込む。残り1秒の場面でチェンバースがレイアップを沈める。最後まで信州のスタイルを貫いた。
試合後の会見。勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)は、そうした選手たちに、惜しみない賛辞を送った。
「改善できる面はたくさんあったと我々は分かっているけれど、選手たちは最後の1秒まで戦った。それをどんな状況でも応援してくれる方々のためにハードにプレーしようとした」
「今は大変な状況だけれど、チーム一つとなって乗り越えて何とかしていきたい」

3本の3ポイントシュートを沈めた小玉も試合を振り返る。
「エナジーの部分とか普段言われると思うけれど、そこに関しては、今日はしっかりあったと僕は思う」
「今日だって結果は29点差だけれど、負ける試合じゃなかったと思う。僕らはこれからもっとうまくいくチームだと感じることができた」

エリエット・ドンリーも「アルティーリ千葉はB2の中で一番強いと言われるチーム。プレーオフでも相手になる可能性はある中で、何が良くできて、何がうまくいかないのかなどを学べたと思う」とうなずいた。
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GAME1は一時逆転するなど肉薄
エナジーと遂行力の課題はクリア
ビュフォードらが出場した前日のGAME1は、さらに一進一退の接戦だった。ミスはありつつも、石川海斗やビュフォード、ウッドベリーが要所で得点を伸ばしてチームを引っ張る。

ディフェンスではウェイン・マーシャルがいない穴を渡邉飛勇や狩野が身体を張って守る。ウイング陣は常に相手選手へのディナイを怠らず、簡単にはがされないよう脚を使う。
こうして直近の試合で課題だった基本的な部分を徹底。第3クォーター(Q)には一時逆転するなど、10点差をひっくり返す勢いも見せた。

結果的には敗れたが、収穫も大きかった一戦。石川が振り返る。
「自分たちがどう(勝久マイケル・ヘッド)コーチのバスケットを理解して進んでいくのか。そこを信じてチームがひとつの方向を向かなきゃいけない中で、自分の役割を考えないといけない。メンバーがいなかったら誰かがステップアップしなきゃいけない。そこの危機感は前よりも出ているのは実感している」

直近の試合でチームの姿勢について苦言を呈していた三ツ井。「これを続けないと意味がない」と念頭に置きつつも、同様に手応えを口にする。
「1週間の練習も比較的集中力があったし、個人個人が相手のスカウティングをしっかり頭に入れて、前回の対戦から慣れもあったかもしれないが、危機管理の意識は少しずつ良くなってきたと思う」
それでも残ったA千葉との差
さらに完成度を高めるきっかけに
2日間を通してチーム全員で戦った信州。
ただただ無惨に膝を折ったわけではない。ことアリを埋めた満員のブースターの力も、大いに背中を押したのは間違いないだろう。とはいえ結果としては2連敗だったのは事実で、東地区を制したA千葉との差も多く見られた。

勝久HCも選手たちも、それを口にする。
「選手たちが最後まで戦ってくれたのは誇らしいけれど、自分たちはどういう状況でも高いスタンダードを持ちたい」
「どういう状況になってもディフェンスでミスなく、遂行力の面でミスなく…というところに持っていかないといけない。 少なくともそのきっかけにはなったと思うので、そういう意味では良かったと思う」

小玉も同様に、自分たちに矢印を向ける。
「失点はすごく多かった。ターンオーバーからの得点であったり、セカンドチャンスを与えてしまった得点がすごく多かった」
「課題としているリバウンドのところとか、疲れていてもみんなで戻って守る部分がまだ足りない。ただ課題は明確なので、そこをうまく埋めていけばいいと思う」

GAME1は一時逆転したものの、勝ち慣れているA千葉に落ち着いたゲーム運びで押し返された。一つのポゼッションに対するクオリティにも差があった。そうした彼我の差が明確になったからこそ、終盤戦にまたチームとしての成長につなげていきたい。
それを証明する舞台は、すぐにやってくる。次節は3月26日、再びホームゲーム。ホワイトリングで福井ブローウィンズとの6度目の対戦となる。
どのようなメンバーが出場するかは不透明。それでもこの2試合で得た経験を力に変え、どんなメンバーでも勝ち切れる自信をつかみたい。それこそが、信州ブレイブウォリアーズだ。
ホームゲーム情報(3月26日、福井ブローウィンズ戦)
https://www.b-warriors.net/lp/game_20250326/
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/