いざプレーオフ準決勝へ “牡羊座の一番星”舛田紗淑がコートを照らす

“サクラサク”吉報を信州上田に――。Vリーグ女子のプレーオフに、ルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズが出場する。23勝5敗(勝率0.82)の3位となり、上位4チームが進むトーナメント形式のプレーオフに進出。初戦の準決勝は2025年3月29日、千葉・船橋アリーナで行われる。大一番を前に、キーマンとなるアウトサイドヒッター(OH)舛田紗淑の言葉に耳を傾ける。

取材:原田 寛子、大枝 令

チームの強みを引き出しながら
自らもアタックやレシーブで牽引

一発勝負のプレーオフ。
頂点まで駆け上がるために必要なことを、舛田紗淑は知っている。

27歳。チーム2番目の年長者だ。KUROBEアクアフェアリーズで、国内最高峰の旧V1リーグを5シーズン経験。チャレンジマッチ(入替戦)で信州Ariesを退けたこともある。

「4チームとも『絶対に負けたくない』という気持ちは共通している。その中でどれだけ自分たちのプレーをきちんと出せるか。劣勢になった時に、落ち着いて自分たちのチームできちんと決めたことを徹底してできるかが大事だと思う」

「自分たちのプレー」とはなんだろうか。

例えばサーブ。今季は中盤戦から特に力を入れてきたファクターで、オポジット(OP)王美懿(ワン・メイイ)はリーグ断トツの効果率14.8%という数字を残した。

キャプテンのセッター(S)横田実穂も含め、高精度のサーブで相手を崩す。そしてここから、信州Ariesの強みが最も発揮できるフェーズだ。

「自分たちの良さは、高さがすごくあるチームだということ。自分たちの高さを存分に出せたらいいと思う」

レセプションを乱して優位に進め、ブロックディフェンスを機能させる。高さを生かしたキルブロックはもちろん、ワンタッチから拾うのもコースを限定してのディグもそう。ブレイクを狙う。

「ブロックが機能していると、すごく楽な展開でバレーを進められている」という通り、例えばアウェイのアルテミス北海道戦GAME1は3セットでブロック数が実に16本。わずか1時間5分でストレート勝ちを収めた。

シーズントータルでも、その数字は顕著に出ている。ミドルブロッカー(MB)山村涼香は、1セット当たりのブロック決定本数が0.75でリーグ2位。189cmの王が0.68で3位と続き、舛田もチーム3番目の0.35となっている。

高さを生かすのは、アタックも同じだ。
受けて、繋いで、サイドアウトを取る。

その局面では、舛田自身もコートで躍動する。

高い運動能力を生かし、フロントからもバックアタックも自在に繰り出す。全28試合に出場し、総得点445はチームトップでリーグ5位の成績。プレーオフでも、その右腕から次々と得点を量産するつもりだ。

「最終的に打数が多いのは私と美懿。まずそこが点数を取れれば問題ないと思うから、上がってきたボールは2人が決めればいい。でも全部を決められるわけじゃないし、ただ打てばいい話でもない。そこは冷静にならなきゃいけない」

心は熱く、頭は冷静に――。経験と実力がその両立を可能にし、まずプレーの面で若きチームを力強く牽引する。

OHというポジションの特性上、サーブレシーブの受数も573回とチームで最も多い。「サーブレシーブもだいぶ狙われる。疲労度的にはだいぶシンドい」というが、今回のプレーオフは土日の連戦ではなくワンマッチ。1試合で完全燃焼するには十分だ。

冷静沈着に若いチームを導いて
船橋アリーナで示したいものは

舛田はさらに、コート内で精神面な支柱にもなる。

ただでさえ、残酷なまでに明暗が分かれる一発勝負。会場の雰囲気も普段のリーグ戦とは異なると予想される。コートに立つ全員が浮つかずにプレーできるかどうかはまず、勝利に向けた大前提とさえ言える。

「緊張したり怖かったりする選手も絶対にいると思うけど、その中でどれだけ怖さに打ち勝って自分のプレーを出せるかが必要。全員が地に足がついていない状態でバレーボールをしたら、やはりとバタバタしてしまう。どれだけ冷静にバレーボールをやれるか」

「思い切りやるだけでいい」と、声をかけて緊張をほぐす時もある。相手コートの空いているエリアをOH黒鳥南に教えたり、レセプションが乱れがちだったらフォローに入ったり。それらはリーグ戦を通じて培ってきたものだ。

「良い部分を出せないで終わってしまうのはすごくもったいない。そうならないためにも、本当に助け合いが大事になってくる」

とりわけプレーオフ準決勝で当たるリガーレ仙台は、驚異的な粘り強さで拾いながら繋いでくるチーム。今季は4戦して2勝2敗と互角の戦績となっている。

「(仙台は)ブロックが決まったと思ってもフォローに入っていて繋がれたり、無理して打たずにリバウンドを取ってから切り返されたり。細かいプレーが徹底されている」

経験豊富な舛田も警戒感を強める相手。しっかり勝ち切るには、冷静さを失わずに忍耐強く戦う必要もあるだろう。

だが舛田には、逆境でも折れない心がある。

2021-22シーズンの序盤、試合中に左膝前十字靱帯断裂、外側半月板損傷の大ケガを負った。

「とんでもなく痛いし、膝だから再発が怖い。『そのまま引退するなんてもったいない』という声を受けると、気持ちがより下がる。跳ぶのも膝を曲げるのも含めて、全部がシンドい」

激痛とリハビリに耐え、一時は引退を考え、それでも選手としてコートに戻ってきた。

今でも試合前には、ケガをした瞬間の記憶が鮮明に甦るという。それでも、毎回のように襲いくる恐怖心に打ち勝ってコートに立ってきた。跳んで、走って、結果を出してきた。

「前十字靱帯をケガしたけれど、まだプレーできている――という姿を見せたい。それも一つある」

同じケガを繰り返さないよう、コンディションの管理を徹底するようにもなった。このチームに来て2シーズン目。信州Ariesで復活を遂げたエースが、船橋アリーナに桜吹雪を巻き起こす。

PROFILE
舛田 紗淑(ますだ・さよ)1997年年10月7日生まれ、北海道出身。小学校3年生の時にバレーボールを始めた。陸上競技やバスケットボールにも興味があり、中学では当初バドミントンを志向していたという。それでも周囲の勧めなどでバレーに取り組み、高校からは親元を離れて札幌山の手へ。卒業後の2016年に仙台ベルフィーユに入団したが翌年で廃部となり、17-22年の6年間はKUROBEアクアフェアリーズに所属した。旧V1通算78試合出場のアウトサイドヒッター。176cm。


VリーグWOMEN プレーオフ概要ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/topics/detail/23342
チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484


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