アリーナに充満した“プレーオフの重力” 要所でクオリティを発揮して貴重な先勝

プレーオフ(PO)特有のピリついた空気が、西原商会アリーナを包んでいた。2024-25シーズンのB2リーグは5月3日から各地でPOのクォーターファイナル(QF)が開幕。信州ブレイブウォリアーズ(東地区3位)はアウェイで鹿児島レブナイズ(西地区2位)と対戦し、78-75と接戦を制して貴重なGAME1の勝利をつかんだ。レギュラーシーズンの課題を克服し、要所でクオリティを発揮した戦いをレポートする。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
プレーオフならではの緊張感
序盤から細部へのこだわりが光る
ホワイトリングから直線距離でおよそ900km。
鹿児島特有の石造りの遺構が出迎える、西原商会アリーナ。信州の選手やスタッフ陣は普段のウオーミングアップウェアではなく、PO専用の黄色い”勝負服”に身を包んでいた。

2戦先勝のPO、GAME1の重要性は言わずもがな。その一勝をつかむべく、選手たちの後押しをしようと現地には約100人の信州ブースターが駆け付け、ホワイトリングでもパブリックビューイングが開催された。

全てはこの時のために――。
午後3時。“ALL信州”で挑む決戦が、ついに幕を明けた。
最初のポゼッションは緊張感のある立ち上がり…のように見えた。ペリン・ビュフォードから石川海斗へ、ゆっくりと丁寧に攻める。
しかしバスケットライブを見返すと、意外にも普段どおりのスピードで石川とウェイン・マーシャルのピック・アンド・ロール。実際にその場で見た雰囲気とはまるで違った。

それほど、選手から発せられる空気感や一つ一つの動作に「重み」を感じさせた。
選手たちの言葉を借りるなら、これが「細部へのこだわり」なのだろう。コートを取り囲む円形の会場も、もちろんPO仕様の熱気。アリーナには確実に、普段以上の重力があった。
1ポゼッションの重要さが伝わるプレーで試合は幕を明けた。

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低調な時間帯もチームでカバー
RS最終節A千葉戦の反省を生かす
試合は互いの強みを存分に発揮。信州はマーシャルを中心に得点を重ねる。マーシャルは両チーム最多の26得点、ビュフォードは19得点9リバウンド8アシスト。文句なしの活躍ぶりだった。

対する鹿児島は激しいディフェンスやアンソニー・ゲインズ・ジュニアのスティールなどから加点。信州は最終的に僅差のゲームを制した。しかしターンオーバーは12回犯しており、そこからの失点は19となっている。

試合後の勝久HCは、その点について反省を口にする。
「この2週間、あのゲインズのスティールに対してどういう時にパスを出していいか、出しちゃいけないか、どういう攻め方をしたいかにも取り組んできた。ちょっとでも緩いパスになったときには取られてしまったシーンもあった」
「ディフェンス面でもっとうまくやらないといけない部分もそうだけれど、ターンオーバーからの失点というのは大きくて、その大きな要因がゲインズ選手だった」

ゲインズらの躍動で連続失点をするなど、劣勢になりそうなタイミングは何度もあった。それでも信州は慌てることなく、チームとしてまとまり、着実に得点を奪い返す。
ここに成長がある。RS最終戦のA千葉戦ではチームの集中力が最後の最後で分散してしまったが、その経験が生かされていた。

「A千葉戦から反省してそういったプレーの後でも崩れず、悪い部分がところどころにあっても、それはゲームの中ではアップダウンはある。それでも崩れず『次は正しいことをやろう』というメンタルにしっかりとシフトできていた」
勝久HCも、課題をクリアしての勝利に納得の表情を浮かべる。

マーシャルはチームの成長を感じ取り、白い歯を見せる。
「自分たちは『日々成長する』ことを言い続けていると思うが、強いチームで一番ベストを持っていきたいのはシーズンの最後。まさに今の時期で、その中で自分たちは正しい方向に日々成長することができている」
さらなる激闘が予測される第2戦
「ALL信州」全力の黄色で突破を
まずはなんとしてでも取りたい1勝を手に入れた信州。これで4日のGAME2も勝利を収めればシリーズ突破となるが、連勝は並大抵のことではない。

「もう負けられない」という気持ちで挑んでくるホームの鹿児島に対して、まずはそのエナジーを上回れるかが勝負のポイントとなるだろう。それは選手たちも先刻承知で、マーシャルは口元を引き締める。

「明日(4日のGAME2)は鹿児島さんがもっとエナジーを持って最初から入ってくると思う。その中で自分たちもエナジーを持って自分たちのゲームプランを遂行できるようにしていきたい」
第4クオーター(Q)の勝負どころで貴重な同点3ポイントを決めたアキ・チェンバースも、熾烈な戦いの中から勝利をつかむべく自身にベクトルを向ける。

「接戦で難しい状況だった。もちろん相手も勝つために必死でプレーしてくる中で、今日はまとまってプレーができたと思う。その中でもまだ向上できる部分はあるので、そこを積み重ねていきたい」

信州は鹿児島以上のメンタルを用意した上で、戦術面もアジャストして臨むことになるだろう。相手の2-3ゾーンやゾーンプレスの崩し方、不用意なパスなどを修正できるかどうかが勝負のポイントとなる。

GAME1以上の熱戦、比類なき重力。現地で、PVで、配信の画面越しで――。どこにいても誰であっても、黄色に身を包めば等しく“6人目の選手”だ。ALL信州の心意気で、本土最南端の地から特大の土産を持って帰る。

クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/
りそなグループB.LEAGUE 2024-25ポストシーズン特設サイト
https://www.bleague.jp/postseason/2024-25/
B2プレーオフQUARTER FINALS(鹿児島レブナイズ)
https://www.rebnise.jp/lp/game_20250503_20250505/