川上航立&安永玲央が語る J2首位・水戸の“全員ハードワーク”が巻き返しのカギに

J3リーグは前半戦19試合を消化し、松本山雅FCは6勝5分8敗(勝点23)の12位で後半戦にターンした。J2昇格を目指すにはあまりにも寂しい数字で、残り19試合で巻き返しへの芽はあるのか――。そのヒントが、J2で首位を快走する水戸ホーリーホックにありそうだ。在籍した選手2人の声から、そのエッセンスを抽出する。
文:大枝 令
KINGDOM パートナー
水戸から加入した若きボランチ
血肉に溶けているハードワーク
「ハードワーク」
質問が終わるのを待ち切れないかのように、MF川上航立はきっぱり即答した。
立正大から今季水戸に加入し、育成型期限付き移籍で松本にやってきた22歳だ。
J2で首位を走る組織の強みは何か、松本でも生かせる要素はあるのか――。そう投げかけた質問に対し、すでに答えは用意されていた。

「チームのために戦う選手が11人、なおかつベンチにもいれば、僕の感覚的にそう簡単には負けないなと思っている」
「水戸は本当にタフ。ハードワークをチームのために頑張る選手が、出ている人も出ていない人も多い印象」
自身もそもそも、その素養を持ってプロ入りした。セレッソ大阪U-12からガンバ大阪門真Jrユースを経て帝京長岡高(新潟)へ。主将を務め、全国高校選手権4強を経験した。
高校3年生当時は2020年でコロナ禍の真っただ中。高円宮杯U-18北信越プリンスリーグは9月に無観客で開幕し、松本U-18のMF稲福卓らと対戦した。

古沢徹監督に師事。「今日やらないヤツに明日はない」という言葉を胸に刻んだ。
チャレンジしないのはダサい。誰かのせいにするのも、矢印を自分以外に向けるのもダサい――。そんな価値観を3年間で植え付け、立正大での飛躍にも繋げた。
「どんな苦しい時も、いい時も悪い時も、今自分ができる100%を出そうと思ってピッチに立っている」

だからこそ、その土台となるハードワークは血肉に溶けている。
チーム合流初日となった7月8日。変則的な2対2では堂々と味方に指示を出し、自身も激しく身体をぶつけた。リーダーシップにも期待がかかる。
早川知伸監督は期待を寄せる。
「本当に愚直に、一生懸命ハードワークできる選手。そこはすごくチームにとっては大事だと思う」
「頑張ってハードワークできるのもそうだし、しっかりとバランスを取れる。なおかつ、潰すところは潰せる」

帝京長岡高1年時の2018年。遠征に際して、チームで松本山雅のホームゲームを観戦した。J2で優勝したシーズンだ。
観戦した試合もスタジアムは満員だったといい、「(サンプロ)アルウィンはめっちゃ楽しかった。そのイメージが強い」。チャントも大いに参考にして取り入れたという。

「7,000人前後が今でも入ると聞いた。その中でプレーしたいしワクワクしたので、決断した」
「チームが目指しているJ2昇格に自分が貢献する。ピッチに立って走り続けて戦い続ける。本当に勝利だけを目指してピッチに立ちたい」

出場機会を求め、自ら志願して期限付き移籍してきた。J3の他2クラブからもオファーがあった中で、松本を選んだ川上。DNAに刻まれたハードワークを武器に、飛躍につなげる。
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今季の軸を担うボランチ安永
躍進する古巣から学び取る姿勢
もう一人、水戸のDNAを知る選手が在籍する。
安永玲央。
2022年途中〜23年途中まで水戸でプレー。加入当初、「水戸であまりいいシーズンを送れていなかったというのと、こういう苦しい状況の中でも欲してくれるクラブがあった」と話していた。

サッカーIQと言語化能力に秀でるボランチ。デュエルから奪って持ち運ぶプレーも光っており、今季の松本では中盤の主軸を担う。
そんな安永も、問わず語りに古巣の躍進を口にした。8連勝を含む14試合負けなし。22試合を終えて13勝6分3敗(勝ち点45)と、昇格ペースで首位をひた走る。
「水戸が8連勝して首位にいるのは予想しづらかったはず。やっぱりハードワークとチームが噛み合ったときの勢いだと思う」

ここでも、やはりキーワードはハードワークだった。
思えば昨季も、J2を制した大宮アルディージャ(当時)を2-0で破った試合の前には「ハードワークは才能に勝る」というフレーズがミーティングで共有されていた。
大元は、RBザルツブルク(オーストリア)のロッカールームに書かれているフレーズ。当時の霜田正浩監督が口にしたものだった。

安永が続ける。
「FWを含めて全員で守備するのが水戸のスタイル。みんな(1試合)平均12kmくらい走っていたし、後半ラストでもみんな(前に)出ていけるのは水戸の特徴だと思う」
「歯車が噛み合った時に自分たちも大きな力を出せると思う。水戸の8連勝を目指すというよりは、目の前の一勝を重ねていって、それが連勝につながればいい」

いきなり突出したハードワーク集団に変貌できるわけではないだろう。それさえ遂行すれば全てに勝てるわけでもないし、付け焼き刃が通用する要素でもない。
ただ、全員が徹底しなければ巻き返しは難しくもある。7月8日、オフ明けのトレーニングは酷暑の中で最後にシャトルランを入れるなど、「鍛える」ことを日々続けている。

J2昇格プレーオフ圏内までは勝点差7、J2自動昇格圏内までは17。後半戦スタートの次節も再びホームゲームとなり、奈良クラブを迎える。大いなる逆襲を、ここから始めなければならない。
J3リーグ第20節 奈良クラブ戦 試合情報
https://www.yamaga-fc.com/archives/498013
川上航立選手 育成型期限付き移籍加入のお知らせ
https://www.yamaga-fc.com/archives/498733
クラブ公式サイト
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