キャリア10年目で初移籍の“31”三ツ井利也 感謝を胸にB1越谷で新たな挑戦へ

地元出身の選手として信州ブレイブウォリアーズで9年間活躍した三ツ井利也の移籍先が、越谷アルファーズ(B1)に決定した。クラブからの退団が決まって以降も、契約満了となる最終日まで、「信州の選手」として精力的に地域貢献に寄与した三ツ井。信州で背負った背番号と同じ31歳を迎えた2025年。6月29日に務めた野球BCリーグ・信濃グランセローズの始球式に際し、プロキャリア初となる移籍についての心境などを聞いた。

文:芋川 史貴/編集:大枝 令

球場に響いた「三ツ井コール」
ブースターも見守った魂の一球

「人生初の始球式でめっちゃ楽しかった。ワンバウンドしなくて良かった」

大役を終えた三ツ井は、マウンド上での光景を笑顔で振り返る。

2025年6月29日、長野県営球場。信濃グランセローズ対栃木ゴールデンブレーブスの始球式に登場した三ツ井は、信州で最後となる表舞台の仕事を終えた。

フリースローを打つ時よりも、やや緊張した面持ちで投じた一球。若干ズレはしたものの見事キャッチャーミットへと吸い込まれた。

球場に集まった信州ブースターはもちろん、グランセローズのファンからも温かい拍手と「三ツ井コール」が響きわたった。

「まさか投げ終わった後に自分の名前をコールしてくれるとは思っていなかった。ラジオ番組で一緒になった選手もいて、快く迎え入れてもらってありがたかった」

最後の仕事を終えた表情には、どこかすがすがしさも感じられた。

「屋外での観戦は慣れてないブースターの方もいたと思うけど、来てくれたのはすごくうれしかった」

「別種目のイベントに参加することを機に、(そのチームのファンが)ウォリアーズに興味を持ってくれればうれしいし、逆にオフの時は違うチームの試合を観に行く文化ができればいいと思う」

新しい役割にもチャレンジか
「アルファーズのために出し切る」

前回三ツ井に取材をしたのは2025年6月8日。サッカーJ3松本山雅FCのサンプロ アルウィンだった。

その時点では興味を示していたクラブはあったものの、契約段階までは話が進んでいなかった状況。現役続行か、ユニフォームを脱ぐかの瀬戸際に立たされていた。

そんな中、6月27日に越谷から契約のリリースが発表された。

「本当にこのままだったら大好きなバスケットを諦めざるを得ない状況になりかけていたので、大好きなバスケットができることに感謝と喜びを感じながら、より一層プレーしたい」

「チャンスをくれたアルファーズのために自分のやれることをしっかり出し切って、『三ツ井がいて良かった』などと言ってもらえるような存在になれるように、コーチ陣やチームからの信頼を勝ち得て試合に出ることを第一優先でやっていきたい」

初めてとなる移籍の不安も抱えながら、三ツ井は新天地での活躍を固く誓う。

越谷と言えば、かつて宇都宮ブレックスをB1優勝に導いた安齋竜三ヘッドコーチ(HC)の存在も注目される。そんな名将の目から見て三ツ井はどのように映ったのだろうか。

本人が把握している範囲で、編成上の狙いなどを聞いた。

「サイズのある選手を欲しかったというのが第一で、ディフェンスの部分とエナジーを発揮すること。そして目の前の相手に対してしっかりファイトすることも期待されていると思う」

「そこに加えて、ハンドラーになる場面も多くなると思う。ファンダメンタルやスキルを上達させて試合で表現できるように、しっかりとものにしていきたいし、僕自身今までやれなかった領域なのですごく楽しみ」

信州での役割としては、ディフェンスとスポットでの3ポイントシュートが役割の大半を占めていた。取り組める領域が広がることで、三ツ井の選手としての価値もさらに高まるかもしれない。

クラブとブースターへ思いを残す
「ファンがあってのプロスポーツ」

引っ越し作業も急ピッチで進めた。

「実は明日(6月30日)内見に行ってくる。まだ家は決まっていないので退去もできていない」

「できる限り早めに合流したいし、埼玉県での生活にも慣れたい。環境に慣れないまま練習に入るとストレスになってしまうので、7月の上旬か2週目ぐらいには合流できるようにしたい」

移籍に際しては青野和人氏にも話を聞いているという。昨季まで越谷に在籍し、今季から信州のチーム本部長に就任した人物。越谷のことは知り尽くしている。

「青野さんが直接働きかけたというわけではないけれど、これも何かの縁。今は青野さんから越谷がどういう組織なのかを聞いたりしながら、すぐに馴染めるように努力している」

リーグとともに日々成長を積み重ねてきた三ツ井。引退の可能性もあった中で、B1チームからのオファーを受けてどのような気持ちだったのだろうか。

「ありがたいことだし、Bプレミアを前にB1の舞台で1シーズンプレーできることは本当に良い経験になると思う。自分のバスケ人生も10シーズン目という節目で良いチャンスに恵まれた」

「チャンスをもらって『経験になって良かった』で終わらせるのではなく、しっかりチームに貢献して、試合に出てナンボなのでプレータイムもしっかりもらいたい。そうやってレベルアップした自分で新しいリーグに臨めたらいい」

新天地での意気込みを熱く語った三ツ井。最後にクラブとブースターに向けてメッセージを残した。

「ファンの規模や経営規模も含めて本当に成長していると毎年感じる。今までウォリアーズに興味がなかった人たちにも存在を知ってもらえるようになってきたのは9年間やってきて本当に良かったと思うし、少しでもその力になれたのであれば、地元選手としてこれ以上ない喜び」

「これからもコミュニティがもっと大きくなっていくと思うので、地域に貢献することも含めてファンに愛されて誇りに思ってもらえるチームや、子どもたちの目標や夢となるチームになってほしい」

言葉を噛み締めながら、長年在籍した選手として、そして唯一の地元選手としての思いを残す。

「ブースターの方には本当に支えてもらった以外の言葉がない。入場者数が3桁ぐらいの時からずっと応援してくれている方もいるし、平均4,000人、時にはそれ以上に入るようになった」

「チームや会社が大きくなったというのもあるけれど、パートナー企業を含めて、苦しい状況になっても諦めずに応援し続けてくれたブースターあってのこと。ファンがあってのプロスポーツだと思うので、選手のみんなにはそのことを絶対に忘れないでほしい」

長野県出身選手として、また一人の選手として、コート内外で信州に思いを寄せ続けてきた三ツ井。プロキャリア10年の節目で、住み慣れた信州の地を離れて、自身の価値を証明するための新たな挑戦が始まろうとしている。


2025-26シーズン選手契約合意(新規)のお知らせ(越谷アルファーズ公式サイト)
https://www.koshigaya-alphas.com/news/202526s_newsigned_mitsui

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