【Farewell-Interview】初代王者に導いた原秀治監督 “今”を積み上げた3年間

ルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズが初代王者の称号を得た10日後の2025年4月15日、原秀治監督の退任が発表された。3シーズンにわたってチームを率い、優勝に至る礎から築いた還暦の指揮官。就任当初からチーム作りや選手たちの成長など、「今、この瞬間」を積み重ねた日々の話を聞いた。

取材:原田 寛子/編集:大枝 令

不安定だった就任当初から3年
心身ともに選手の成長を実感

――3年間の監督生活お疲れさまでした。振り返って、どのような3年間でしたか。

就任当初は選手が9人しかおらず、まだまとまり切れていない状況でした。バレーは一人ではできないスポーツ。「まずチームとして成り立たせなければならない」という思いでのスタートでした。

まずは「チームを一つにする」ということを掲げたと記憶しています。選手たちはみんな素直でいい子たちなので、話すほどいいチームになっていったと思います。そういう部分での苦労はあまりなかったですね。

選手たちの入れ替わりはありましたが、どの選手もいい子たちだったのは印象に残っています。

――3年間を通して、選手たちの成長を見ていらしたと思いますがいかがでしょうか。

体力面に関しては、トレーニングの専門家に見てもらえるように会社にも協力してもらいました。それまでは午後からトレーニングとボール練習をしていたのを、午前中にトレーニングができるようにしてもらうなどですね。

そのことで選手たちには「バレーが仕事」という意識が芽生えたのが、一番大きかったと思います。

あとは、やはりサーブです。

これまでも折に触れて話してきましたが、現代バレーではサーブが一番の武器になると僕は考えています。そのためには「どんな局面でも攻めるサーブが打てる」という強いメンタルが必要です。選手たちは「どうやったら勝てるか」などを考えて練習するようになりました。

今回、王美懿(ワン・メイイ)がサーブ賞を取りました。セミファイナルやファイナルで選手たちが打ったサーブは、それぞれの自信につながるものになったと思います。

――以前監督は「バレーボールは助け合いのスポーツ」とおっしゃっていたことが印象的でした。それも選手に伝え続けていたことですか。

あんまり僕はしゃべらない方ですが、キックオフミーティングではそういう話をした記憶があります。

僕がバレーを始めてJTに入った時、(世界一の名セッターと呼ばれた)猫田勝敏さんという方がいました。その猫田さんから「コートで言う言葉は3つだけ。『ありがとう』『すまん』『頼む』。これが絶対に必要だ」と教えられました。

「自分のトスを打ってくれてありがとう」「頼む、このトスで打ってくれ」「いいトスを上げられなくて、すまん」これが僕の中のバレーで軸になっている部分です。それは選手たちに伝えた記憶があります。覚えているかな(笑)。

手にした「初代王者」のバトンを
「連覇」に変えて成田新監督へ

――今年はVリーグ改編初年度ということで「初代王者」を目標にやってこられて、達成されました。改めていかがでしたでしょうか。

このチームの誰か一人でも欠けたら、優勝はできなかったと思います。コートに立つ選手、ベンチ入りの選手、ベンチに入っていない選手全員で勝ち取った「初代王者」です。

それも、チーム全員で作り上げたものだと思っていますので、みんなには感謝しかないですね。本当にいい還暦を迎えられました。

――成田新監督へ託した思いなどはありますか。

コーチをやっている成田さんを見て、たくさん積み上げられた経験を感じました。

作戦面でも非常に長けたものを持っていますので、今後については全く心配いらないのではないかと思っています。

細やかなメンタルの気配りもありますしね。成田新監督なら、連覇できると思っています。あとは僕は応援するだけです。

選手へのエールとファンへの感謝
そして監督は地元・広島へ帰郷

――選手たちへのエールをいただけますか。

今を大切にして、自分で「どういう選手になりたいか」というイメージをしっかり持って進んで行ってほしいと思います。そして、コートに立つことが一番だと思います。それを目指して頑張ってもらいたいです。

――今後のご予定は決まっていらっしゃいますか。

まだ決まっていません。まずは広島に帰りますが、田んぼでも耕そうかなぁ…と。もちろん、何かお声が掛かればバレーに携わることも考えたいと思います。とりあえず、ちょっとゆっくりしようかなと思っています。

――上田大会はもちろん、遠征にも駆けつけるアリーズのファンがたくさんいました。ファンの方にもメッセージをお願いします。

本当に遠方まで足を運んでくださるファンがたくさんいらっしゃいました。その声援は非常に選手の背中を押してくれました。僕はファンの皆さんはチームの一員だと受け取っています。皆さんのおかげで初代王者になることができました。

そして、優勝したことで今度はさらに厳しい立場になります。次シーズンはより一層の声援をしていただき、選手と共に勝利をつかみ取っていってほしいと思います。ありがとうございました。

PROFILE
原 秀治(はら・ひではる) 1965年、鹿児島県出身。鹿児島商高を経て、当時世界一のセッターと称された猫田勝敏にスカウトされて専売広島バレー部(当時)に入部。現役時代は全日本として世界選手権やワールドカップなどを経験し、88年にはソウル五輪日本代表。94年から始まったVリーグではJTサンダーズ(当時)の一員として活躍。引退後はJTのヘッドコーチや大野石油広島オイラーズの監督を経て、2022-23シーズンから3年間ルートインホテルズブリリアントアリーズを指揮した。


チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484


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