黒き要塞を攻略するラストピースは アリーナに降り注ぐ“6人目”のエナジー

現在、信州ブレイブウォリアーズのブースター内で興味深いムーブメントが起こっている。X(旧Twitter)のアカウント名を「6人目の〇〇」と改名しているのだ。B2プレーオフ(PO)クォーターファイナルを前に、ペリン・ビュフォードが取材で「ブースターは6人目の選手」と表現した。そのフレーズがきっかけになり、徐々に浸透してきたこの動き。B1昇格が懸かるアルティーリ千葉とのセミファイナル(SF)を前に、「6人目の選手」の大切さを選手らに聞いた。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
手と声で支える信州ブースター
選手たちにとっても誇りに
信州が産声を上げたのは2011年。徐々に組織は大きくなり、ブースターの数も次第に右肩上がりになっている。
チーム発足当初は千曲市戸倉体育館で数百人規模から始まった。ことぶきアリーナ千曲、ホワイトリングへとホーム会場が変遷。今ではゲームにもよるものの、6,000人規模のブースターがこのチームを応援している。

とりわけ信州ブースターの応援は温かく、使うのは自身の手と声が基本。だからこそ、一人一人の気持ちが素直に音として響き、選手たちを後押しする。
そんなブーストは選手たちにもしっかり届いている。

2018-19シーズンの在籍と合わせて今季で在籍3シーズン目となる石川海斗は、その存在感を強く認識する。
「ブースターさんたちの応援は本当に僕らは誇りに思っているし、あの声援があるから諦めずに戦えている」
ホーム戦での雰囲気は言わずもがなだが、アウェイの地でもその応援は大切なエネルギーとなっている。
小玉大智が明かす。

「アウェイだと何人来るか分からない状況の中で、アップでコートに向かうと、いつも来てくださっている方や、僕が知らない方が『大智ー!』と声援をくれる」
「アウェイでも安心するし、アウェイだけどいつも通りホワイトリングに入場してくる空間と一緒になる」

「敵地でもピリピリした相手の雰囲気じゃなくて、味方や仲間がいる空間に安心して、自分のことに集中できる。P(ビュフォードの愛称)が言っていたことはすごく良い例えだし、合っていると思う」

勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)も、クールな面持ちの裏で熱いハートをたぎらせていた。
「アウェイに来ているみんなを見ると、会場に入ってすぐに声を出してくれて名前を呼んでくれて『一緒に戦いに来たぞ』という感じがすごく伝わってくる」

「それに対して自分も、その人たちを見て『let’s go!(やろうぜ!)』みたいな気持ちになる。表情ではそう見せていないかもしれないけれど、心の中では盛り上がるというか、ブースターの人数を見て『よし!』みたいな気持ちになる」
”6人目の選手”たちの意気込み
石川は「アウェイジャック」指令
勝久HCや選手だけでなく、「6人目の選手」として戦うブースターもB1復帰に懸ける思いはもちろん大きい。
ビュフォードに「6人目の選手」と言われた時の気持ちや、SFに懸ける思いをブースターに聞いた。
多くのメッセージが寄せられた中で、その一部を紹介する。

「厳しい戦況になりそうな中で、応援する側である自分も奮い立たせてもらいました。どんな状況でも、彼らと共にコートの外から応援という武器で戦いたいと思いました!」
「ウォリアーズを応援することが生き甲斐になりつつある中で、やっぱりB1に上がりたい気持ちが物凄く強い!それにはPの活躍は必須だし、Pがそう言ってくれるなら応援するしかないでしょ!」

「いつも割と真剣に『信州が勝つために1ミリでも自分にできることはないか』と考えています。声を出したり一反木綿をしたり、実際どれくらい力になっているか分かりませんが、『少しでも後押しできるなら何でもやるよ!』という気持ち」
「『6人目の選手』という言葉を頂いたので、『その役目を果たさなければ!』と思いました。鹿児島では今までにないくらい全力かつ大声でブーストしました。千葉でも『6人目の選手』として戦いますよ!」

この他にも多くの思いを聞くことができた。選手もブースターも最終決戦に向けて気合は十分だ。
勝久HCはブースターに共闘を呼びかける。
「みなさんの思いは我々みんなが感じているし、当然選手たちのモチベーションも高い。みんなと一緒にもう一度B1昇格を果たしたいので、今節も、今節こそ。一緒に戦いましょう」

石川はそれだけでなく、“指令”も飛ばす。
「Pも言うように6人目の選手でもあるし、みんながチームだと思っている。また一緒に戦ってもらえるとうれしい。千葉は近いのでみんなでジャックしてもらいたい」

5月8日17:00現在。
10日のGAME1の試合では、まだまだ信州ブースターが抑えられる席が多く残されている。先手必勝のGAME1、黒き要塞に蟻の一穴を穿つ千載一遇のチャンスでもある。

選手たちの言葉からもわかるように、その存在は確実にチームを後押しする。その言葉どおり「ブースト」する。決して上辺だけの感謝でないのは、ブースターに向けて寄せられた選手の言葉からもわかるだろう。

ともに戦う、今季のクライマックス。紆余曲折を経て、試行錯誤の中にあり、もがきながらたどり着いたPOのセミファイナルだ。難攻不落の要塞に乗り込んで、勝って笑うのか、負けて涙の“ゴーホーム”か――。
正真正銘の最終決戦が、いよいよ幕を明ける。
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/
りそなグループB.LEAGUE 2024-25ポストシーズン特設サイト
https://www.bleague.jp/postseason/2024-25/
B2プレーオフQUARTER FINALS(鹿児島レブナイズ)
https://www.rebnise.jp/lp/game_20250503_20250505/