男女の東海大諏訪がインターハイで真夏の岡山へ 熱戦の県予選をプレーバック

夏の風物詩・インターハイ。第70回目の節目を迎えた今大会も、県予選は東海大諏訪の男女アベック優勝で幕を閉じた。結果だけを見れば順当な勝ち上がり。それでも東海大諏訪vs長野吉田の男子決勝戦は会場中の視線を集めた手に汗握る接戦となった。その熱戦を中心に今大会をレポートする。

文:芋川 史貴/編集:大枝 令

熱戦が続いたIH県予選の最終日
東海大諏訪が14年連続アベックV

2025年6月8日、上田市自然運動公園総合体育館で行われた大会最終日。

男女それぞれの勝ち上がりは以下の通りとなった。

女子
東海大諏訪-岩村田
松本国際-長野日大

男子
東海大諏訪-松本第一
長野吉田-佐久長聖

決勝戦は女子が東海大諏訪-松本国際。男子が東海大諏訪-長野吉田。

女子のカーディングは大会史上初の組み合わせとなり、男子の組み合わせは2009年以来。高校バスケを応援するファンにとったら新しさと懐かしさを感じさせる顔合わせとなった。

男子の決勝は一進一退の攻防。トランジションとリバウンドを得意とする東海大諏訪に対して、長野吉田は2-3ゾーンや3-2ゾーンを折混ぜて、相手に走らせない陣形を形成。平均身長では劣るものの、リバウンドにも意識高く飛びついた。

それでも第1クォーター(Q)は東海大諏訪のストロングポイントが光る。外角のシュートを高確率で沈め、落ちてもオフェンスリバンドを拾って得点に繋げる。第1Qは23-12と東海大諏訪がリードで終える。

第2Qは長野吉田に流れが傾く。開始早々長野吉田の7番宮入煌がバスケットカウントを奪うと、そこからまた激しい攻防が繰り広げられるが、0番今村蒼平が連続得点。その後、東海大諏訪も3ポイントシュートを決めるが、そこから長野吉田が7-0のランに成功した。

この時間帯で活躍したのが6番の飯田慶人。まだ1年生ながらコートに登場するとすぐさま3Pシュートを成功。長野吉田のベンチが大きく盛り上がったシーンの1つだった。

それに続き3年生で10番の塚田雅規もバスケットカウントを獲得。前半を終えて38-30と点差を縮める。

第3Qでも長野吉田の勢いは止まらない。13番の深澤郁頼が得点を奪うと、再びセットプレーで飯田が起用される。東海大諏訪のベンチからも「シューターだぞ」という声がかけられていたものの、思い切った3ポイントシュートでファウルを獲得し、フリースローも3本中2本を沈めた。

その後も激しい攻防を繰り広げ50-43で第4Qを迎える。

お互いに連戦で疲労が溜まっていたものの、最終クォーターもコンセプトをブレさせない。ゾーンディフェンスを続ける長野吉田に対して、東海大諏訪も要所で外角の得点を奪い、リバウンドもきっちりと抑える。

そして底力を見せたのも東海大諏訪だった。残り1分を切ったところで、57-54の3点差と追い上げられていたものの、9番持丸のドライブから、左サイドにボールが展開。そこから15番清田修叶にボールがわたり、6点差に広がる値千金の3ポイントシュートを沈める。

チームファールが溜まっていない長野吉田はすぐにチームファールを貯めてチャンスを見出すがシュートが決まらずタイムアップ。

61-55で東海大諏訪が18年連続の優勝に輝き、会場中からは両チームの健闘を讃えて大きな拍手が選手たちに贈られた。

男子、女子それぞれの結果は以下の通り。

男子
1位 東海大諏訪
2位 長野吉田
3位 佐久長聖

女子
1位 東海大諏訪
2位 松本国際
3位 岩村田

優勝した男女の東海大諏訪はインターハイに出場する。本大会は7月27日〜8月1日、岡山県で開催。男子は1回戦で白樺学園(北海道)と、2回戦から登場する女子は土浦日大(茨城)-県立山形中央の勝者とそれぞれ対戦する。

“原点回帰”でらしさあふれるプレー
ゾーンに苦戦しつつ球際の力強さも

男子は決して簡単な戦いではなかった。長野吉田のゾーンにしろ、準決勝の松本第一戦のボックスワンにしろ、自分たちの得意とするトランジションが制限された。

それでも選手たちは“原点回帰”をテーマに、東海大諏訪の伝統とも言える激しいディフェンスや球際の強さを要所で見せて勝利を手繰り寄せた。

キャプテンの持丸が戦いぶりを振り返る。

「1Qから4Qを通して東海のディフェンスができたとは思えないけど、それでもチームメイトがリバウンドを頑張ってくれたり、自分が足をつった時もみんなでカバーしてくれた。そういう意味では原点回帰ができた」

一方で課題も見えた試合だった。

「疲労もあって自分がボールを運んだ時にチームメイトの足が止まっているのが印象的だった。オフェンスのオフボールの動きや、そういう場面でしっかり動かせる足作りは、インターハイやその後のウィンターカップに向けてもしっかりとチームで取り組んでいきたい」

今年で就任3年目を迎える小滝道仁監督も、課題を口にする。

「リバウンドが良かった。がっつり取れたことでセカンドチャンスでやられるシーンがあまりなかった。ただ、簡単に2点を与えてしまうシーンもあり、あれだと全国では勝てない」

「まずは失点されない、ハードワークする、泥くさいところを頑張ることを大事にしている。ここに至るまでの数週間で先を見据えて戦術の部分に(力を)入れてしまった部分があった」

「そうなると本来抜けちゃいけないところが抜け落ちちゃって、練習ゲームをしても勝ってはいるけど、球際で負けたり、ルーズボールを取られたりしていたので、そこを今週は大事にしようとやってちゃんとできた」

辛い時こそ笑顔を絶やさずプレー
逆境を跳ね返すメンタルを培う

東海大諏訪の姿勢で印象的だったのは、どれだけ劣勢な状況であったとしても、コート内でのハドルや応援席とベンチ間での円陣が消極的になることがなかったことだ。

むしろ苦しい時だからこそ、3年生を中心に大きな声や笑顔を絶やさずにエネルギーを生み出していた。

監督らに言われるまでもなく、高校生自らがだ。

長野県内でも信州ブレイブウォリアーズの試合を観ていると、選手同士で話し合ったり解決するシーンは珍しくない。

ただ、それを高校生が行うのは簡単なことではないはずだ。

Wリーグでのヘッドコーチ経験もある小滝監督にそのことを尋ねた。

「自分も女子のプロにいて、男子はBリーグがトップオブトップになっている。だからそこに行くまでの人間性はすごく重要だと思う。よく生徒たちに話すのは『プロでバスケットが上手でも人間性がダメだったら長く続かない』ということ」

「気づける力とかは意図的にミーティングするようにしているし、ヘルプが必要だとかそういう力は落ちているゴミに気づく力と同じだと思っている」

「彼らがそういう場所に行きたいのであれば、そういうパーソナリティを上げるべきだという話をしている」

その言葉は東海大諏訪(当時東海大三)出身選手の三ツ井利也(現B1越谷アルファーズ)からもたびたび聞く言葉だった。選手としての心構えだけでなく、積極的にトレーニングにも励んできた。

「最近は理不尽な練習ってできない。でもそれを彼らに(理由と必要性を)説明すればできる」

「要するに、ストレスをかけた練習をしないと窮地に立った時に普通のことができなくなってしまう。その時というのはストレスがかかり、うまくいかないとか、息があがっているとか。『ストレスがかかっている状況でどれだけ頑張れるか』という話を彼らにする」

「そしたら彼らはそれに対して向き合う力がある。説明を受けて『そうだよな、必要だよな』って力を持っていると思う」

具体的にどのような練習を行っているのだろうか。

「週に2回、朝から6km走って学校生活を終わらせて部活をする時にどれだけ良い練習ができるか。でもそれぐらい苦しい場面に自分で立ち向かうと、苦しい場面にチームとしてどう乗り越えるかっていう力がついてくると思う」

6kmという距離にも根拠がある。40分間フルで試合に出た場合の走行距離が、5kmほどであるという統計が出ている。

「うちの場合は身長が小さいので6kmにしている。5.5km走った段階で終わるふりをして、またスタートさせたり。それを乗り越えてきたチーム」

辛い練習を乗り越えれば乗り越えた分だけ、チームメイト同士の絆は強まり、基礎体力も逆境に耐えるメンタルも身につけることができる。しかも走る数は例年よりも増やしているという。まさに練習が生み出した賜物だ。

「インターハイも優勝を狙っている」と持丸は意気込みを語る。

ここから先の大会は別次元。留学生対策も必須となり戦い方が完全に異なる。昨年は1回戦で涙を流したインターハイ。今年こそ頂点に輝くことはできるのだろうか。小滝体制になってから3度目の夏。

この大会で引退した選手たちの思いも背負って戦う。長野県代表として、そして誰からも応援されるチームとして、東海大諏訪の成長を示す夏が始まる。


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