幹を太くした“桜の若木” 連勝スタートの信州Ariesが披露した新たな姿

連覇に向けて上々の船出となった。昨シーズンにVリーグ初代王者の座を射止めたルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズ。2025年10月18-19日に上田市自然運動公園体育館で行われた開幕節で倉敷アブレイズを迎え、セットカウント3-1、3-0で2連勝を飾った。GAME1とGAME2でメンバーを入れ替えるなど、チームの総合力を見せつけた戦いを振り返る。

文:大枝 史/編集:大枝 令

フレッシュな顔ぶれが次々に躍動
練習の成果を開幕のコートで体現

いつの時代も、連覇を目指せるチームは一つしかない。
その権利を持つ信州Ariesが、開幕節で連勝を飾った。

特に際立っていたのは総合力だ。

10月19日のGAME2。セットカウント3-1で勝利した前日のGAME1からスターティングメンバーを4人も入れ替えた上でセットカウント3-0のストレート勝ちを収めた。

「オフシーズンに特に若い選手がトレーニングをすごく頑張ってくれて、目に見えてプレーが変わってきた」。成田郁久美監督は手応えを口にする。

実際、GAME2で起用された選手たちが持ち味を発揮した。

例えば今シーズンからオポジット(OP)に転向した村田果捺。第2セット中盤、味方のサーブミスが続く展開ながら4連続でアタックを成功。丁寧にサイドアウトを取って相手に流れを渡さない。トータルでもアタック決定率48.1%と高い数字を残した。

「昨シーズンはスタートで出る機会がなかったが、夏場に頑張った成果をコートで体現してくれた」。指揮官も村田の成長を評価する。

昨シーズンは189cmの中国人OP王美懿(ワン・メイイ)が主力として出場を重ねていたが、村田がスタートから出場すると2枚替えで王を起用するオプションを持ち合わせることができる。

「自分とメイイは高さも違うし、同じポジションでも役割は変わってくると思う。まず自分の役割を全うしたい」と村田。自らが途中出場するケースでもスタートから出ても、相手チームの目線を変えることができる。

「どちらかと言うとパワーヒッター」と語る村田だが、この日は軟打で相手コートに落とす巧みさも披露。このほかMB(ミドルブロッカー)西村美海も開幕節のコートで存在感を放った。

底上げが生む戦略性の奥行き
新キャプテンは声で戦術遂行

「どこのポジションでも、スタートで行ける実力を全員がつけてきたことで戦略の幅も広がってきた」と指揮官が話す通り、今はさまざまな戦略を試している段階だ。

リベロ(L)もGAME1ではサーブレシーブ時に高野夏輝、ディグ時に佐藤未羽を起用。GAME2ではサーブレシーブ時に貝塚穂、ディグ時に高野夏輝とそれぞれ違った役割で起用した。

2日間でその両方を担ったのは今シーズンからLに転向した高野。「サーブレシーブの方が得意でやりやすいのはあるけれど、ディグはブレイクしたい時に自分のしたい声掛けができるから良い」と話す。

この言葉に、L2枚体制のメリットがある。コートの外で監督やコーチとコミュニケーションを取った上で、細かな指示をコートに届けることができる。

「成田監督から『声でゲームメイクしてほしい』と言われているので、指示や鼓舞する声は意識するようにしている」と高野。得点が決まれば大きく喜びを表現するなど、新キャプテンとしてチームを鼓舞もする。

サーブなどを勝ちながら修正
課題をつぶしながら進む道のり

開幕節を2連勝で飾ったものの、決して課題がなかったわけではない。GAME1はアタックのミスが17本。GAME2では修正されて6本と減ったが、サーブミスは11本と増えた。指揮官が振り返る。

「サーブのスピードは全員上がっている。ハードサーブが打てる分ショートサーブや緩急で相手を崩しやすいので、昨年よりもサーブのターゲットを細かく出している。そのせいでミスが出ている部分もあると思う」

今シーズン取り組んできたサーブの強化。それをより効果的にするための新たな試みだ。

サーブはバレーの中で唯一、自分だけで完結するプレー。「練習の中で継続していけばミスも減っていくと思うので、そこはチャレンジしていきたい」と成田監督。こうした姿勢が、連覇を目指すための新たな挑戦だ。

サーブ面では、GAME2第1セットの14-12から2枚替えで登場したセッター(S)小山晴那はサービスエースを決めるなど3連続ブレイク。トータルでも効果率20.8%の数字を残してアピールした。

さらに第1セット終盤に19-15の局面でリリーフサーバーで出場したOP上島彩季からも3連続ブレイク。相手を突き放すきっかけを作った。

今季唯一の大卒ルーキー上島は、これがVリーグデビューとなった。

「緊張はした。それでもコート内に入ったら先輩方がすごくやりやすい雰囲気で迎えてくれた」

「しっかりブレイクを取ろうというのが自分の中であった。それができたのはうれしかったけど、もう少しサーブで崩せればよかった」

このほかにもライト側からのフェイントやプッシュなど、緩いボールへの対応という課題も残る。

試合の中でそうした課題を洗い出し、洗練させていく。その長い道のりを勝ちながら進めることこそが王者の証。連覇への第一歩は、成果も課題も明確に示す充実の2日間となった。


チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484


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