紅き血たぎるキャプテン三笠貴史 「目指したいチーム像とリーダー像」語る

誇り高きリーダーの一挙一動に、子どもたちが目を輝かせた。2025年8月20日、ボアルース長野の三笠貴史キャプテンが長野市川中島中学校を訪問。同クラブが運営する地域移行クラブ「犀南BELAZA FC」の練習に参加し、特別講義も行った。フットサル最高峰のF1リーグで長らくプレーしてきた30歳。経験に基づいたリーダー像は、世代を超えて参考にできる側面がある。
文:田中 紘夢/編集:大枝 令
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オフを返上して“練習参加”
1対1の極意をレクチャー
蝉の鳴き声が響くグラウンドに、セミ(三笠貴史の愛称)がやってきた。
昨季からボアルースのキャプテンを務める30歳。リーグ戦が中断期間に入り、仕事も夏休みに入ったタイミングで足を運んだ。

「クラブがやっている巡回指導にも行きたいと常々思っていたけど、なかなか時間が作れなかった。こうしてオフの日程が出たときに、スタッフに連絡して『どこか行けるところはないか』と話していた」
訪れたのは、今年4月に発足した犀南BELAZA FCだ。ボアルースが運営する地域移行クラブで、川中島中、更北中、広徳中、若穂中の4校から選手が集う。

普段はサッカーの活動がメインだが、冬季期間にはフットサルの大会にも出場。ボアルース長野前監督の柄沢健氏が総監督を務め、土橋宏由樹ゼネラルマネージャー(GM)も指導に訪れるなど、その道のプロから学べる環境にある。
そんな新興集団に、現役選手がやってきた。

この日のメインメニューは1対1。対人能力が武器の三笠にとっては“十八番”だ。相手との間合いの取り方、ファーストタッチの置きどころなど、プロの舞台で実演しているスキルを教え込んだ。
「やっぱり説得力が違う。トップレベルの選手が言うと『そうなんだろうな』と感じられるし、実際に対峙してみて『やっぱり強いな』『取れないな』とか…。子どもたちにとってすごく学びになったと思う」

そう宮島英也監督が言えば、1対1を挑んだ2年生の丸山翔くんも「身体が大きいしスピードもある。やっぱり強かった」と声を弾ませた。
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チームを第一に考えて行動
“大逆転劇”の裏側も明かす
練習後は特別講義を実施。「目指したいチーム像とリーダー像」をテーマに、30分にわたって熱弁した。
横浜FCユース出身。木下康介(サンフレッチェ広島)、GK高丘陽平(バンクーバー・ホワイトキャップス)らと同年代で、高校3年時には全国ベスト8を記録した。Fリーグでもフウガドールすみだで3位以内が出場できるプレーオフに進むなど、トップレベルで研鑽を積んできた。

その経験に基づいて、三笠は理想のチーム像を説く。
「それぞれが自分の役割を全うしているチームは強い。点を取る人がいて、守る人がいて、それをまとめる監督がいる。その監督を信頼してついていくチームメイトがいる」
「3年生で試合に出られない人もいれば、1年生で試合に出られる人もいると思う。それぞれが自分のことだけじゃなくて、チームのことを考えて行動できるか。そういう選手が集まっている集団は強い」

質問タイムを設けると、2年生の松林憲佑くんは「ハーフタイムに話をするのが難しい」と悩みを打ち明けた。それに対して三笠は「思ったことを言っていいと思う」と答える。
その言葉の背景には、直近の成功体験もある。

中断期間前のF1リーグ第12節・バサジィ大分戦。チームは第1ピリオドを0-2で折り返し、ハーフタイムのロッカーは重たい空気に包まれていたという。
「相手が強いからというよりも、自分たちが悪いから負けていた。監督から戦術的な話をしてもらって、僕は味方に『仕事しろよ』とケツを叩いた。その時々によって、雰囲気なのか、戦術なのか、個人なのか…言うべきことを常に考えている」

ハーフタイムが明けて、第2ピリオドは開始13秒で得点。上林快人のボールキープから三笠が決めた。その後は1-3で終盤を迎えたが、5分間で3ゴールを決めて大逆転。三笠の鼓舞を受けた上林は、2ゴール2アシストと全得点に絡んだ。
三笠のキャプテンとしての振る舞いが、導火線に火をつけた。

「やっぱり選手が動くのが一番」
ファミリーの拡大に一役買う
「難しかったですね」
練習参加と特別講義を終えて、三笠はそう微笑んだ。

子どもたちの緊張もあって、多くの反応は得られなかったが、「質問してくれた子みたいに分かってくれそうな人もいた。そうじゃなくても、『どこかで思い出してほしい』と思いながら話していた」。
講義を受けた丸山くんは、「キャプテンとしてチームを常に盛り上げるのはすごい。自分には難しそうだけど…」と吐露しつつ、「周りのことを考えて動くのは大事だと思った」と話した。

仕事と競技を両立している以上、どうしても活動の幅は限られる。それでも三笠はオフの期間を活用し、テレビ出演も含めて精力的に動いている。
「子どもたちに何かを残したいというのもあるし、ボアルースの活動が親御さんにも届いたらうれしい。それが観客動員にも繋がるだろうし、やっぱり選手が動くのが一番効果があると思う」

リーグ戦は9月29日に再開し、次回のホームゲームは10月5日。F1残留を目指すとともに、ボアルースファミリーの拡大にも力を入れていく。
クラブ公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/