残留に向けて“深化”する秋の紅色 ガリンシャとの融合も“進化”して佳境へ

敗戦の中にも光明を見出した。 ボアルース長野は2025年11月1日、F1リーグ第15節で湘南ベルマーレに2-3と惜敗。アウェイで約1カ月ぶりのリーグ戦を落としたものの今季最多39本のシュートを放ち、ガリンシャが2戦連発とした。残り7試合で最下位に沈みながらも、残留への良い兆しが現れている。
文:田中 紘夢/編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
チームとして“量”をこなし
ガリンシャが“質”をもたらす
約1カ月の中断期間が明けてリーグ再開。ボアルースは敵地で湘南に2-3と敗れたが、明らかな好転反応が見られた。
「39対24」
これまでシュート数で相手を上回ったのは、14試合中2試合のみだった。そんなチームが今季最多のシュートを放ち、“量”で圧倒したのだ。

「中断期間に積み上げたのは、一本の質にこだわるばかりになっていたので、まずは量。量を生み出した中で、一本の質を取りにいこうと」
山蔦一弘監督の言う量とは、何もシュートの数だけではない。前線にパスを入れる本数、スプリントの回数、プレスをかけ続ける走力――。すべてにおいて量を増やすことにある。

その中で“質”をもたらしたのは、ピヴォ(サッカーのFWに相当)のガリンシャだ。
12分には右サイドでボールを収め、三笠貴史のオーバーラップを促す。後ろ向きの状態からピサーダ(ヒールパス)でボールを届け、三笠の折り返しを中村亮太が押し込んだ。

23分にもナチュラルなパワープレー(5人全員での攻撃)から、ガリンシャが右サイドでボールを受ける。田中智基のパスからワントラップで相手をかわし、トーキックでGKの股下を打ち抜いた。
卓越したフィジカルとテクニックを生かし、2ゴールに絡む活躍。彼の質を引き出したのも、量があってこそだ。
「ガリンシャを1回使って『今のはこうだった』ではなくて、10回使ったときに生まれてくるものがあると思う」と山蔦監督。彼にシンプルにボールを預けることで、敵陣に押し込む回数も増えてきた。

その恩恵を受けるのは、同じファーストセットを組む米村尚也。アラ(サッカーのサイドハーフに相当)の位置でドリブルで仕掛けるのが持ち味だが、ガリンシャの加入以前はさばき役に徹する側面もあった。
「今まではさばきに徹する中で、アラでの1対1がなかなか作れていなかった。そこでガリンシャがワンクッションになってくれて、高い位置を取ることが増えてきた」
ガリンシャが加入して3試合目。彼との融合を最も感じられる一戦だった。
KINGDOM パートナー
アラで新境地を拓く中村亮太
地元出身として泥くささを象徴
ガリンシャが組み込まれるファーストセットだけでなく、セカンドセットも見せ場を作った。
29分、右サイドで上林快人がボールを受けると、中村亮太へのピヴォ当てから中に潜ってフィニッシュ。シュートは惜しくも枠を外れたが、上林と中村の連係が光った。
2人の本職はピヴォ。ガリンシャの加入以降はセカンドセットで共存を図っていたが、連係不足は否めなかった。

「今まではどうやって関わっていくのか模索していた部分もあったけど、上林選手とも話したのは『2人の連係でチャンスが作れる』ということ。今日はうまく連係してゴールに迫れたところもあった」
アラにコンバートされた中村亮太。不慣れなポジションで模索の日々が続いたが、先述したシーンでは上林とローテーションして活路を見出した。
ストライカーとして結果を求められつつも、中村のベースにあるのは守備力だ。

「やっぱり自分がやらないといけないのは、今まで続けてきた守備のところ。誰よりも走って献身的にプレーするとか、そういうところを出さないと、自分が出る意味はないと感じていた」
湘南戦は守備でも奮闘。サイドでの1対1で粘り強く戦い、カウンターに対してもプレスバックを怠らない。チームの身上でもある守備からリズムを作り、12試合ぶりのゴールに繋げた。
「やってきたことは間違いじゃなかった」と確信を得る中村。長野市出身選手として、ボアルースらしい泥くささを象徴していた。
攻撃のバリエーションに手応え
残留に向け「兆しは見えている」
「勝たないといけない試合だった」
チームとして手応えをつかみながらも、スコアを見れば2-3と敗戦。内容と結果が伴わず、選手たちは口を揃えるかのように嘆いた。

「フィニッシュまで行くバリエーションは増えたけど、それが得点数に繋がっていない。点を取ってこそ『攻撃力が上がった』と言えると思う」
米村が言うように、攻撃のバリエーションは目に見えて増えた。
従来の武器であるカウンターやセットプレーに加え、定位置攻撃(組織的に整った守備に対する攻撃)や1対1でも局面を打開。約1カ月ぶりのリーグ戦で進化を示した。

ただ、決定力には明らかな差があった。
湘南は第1ピリオドにセットプレーから2発。第2ピリオドも劣勢の中、ワンチャンスを仕留めてきた。一方でボアルースは再三のチャンスを生かしきれず、2点どまりだった。
「量を積み重ねた後の質の部分だと思う」とキャプテンの三笠。技術は一日にして成らず、量と質の両立は容易ではない。それでもシュートのこぼれ球に詰めるなど、「目を向けないといけない部分はある」。

アウェイでの再開初戦を落とし、3連敗で最下位(12位)のまま。次節は再び敵地に乗り込み、10位のボルクバレット北九州と戦う。
勝ち点4差で追うライバルとの直接対決。古巣対決の米村は決意を口にする。

「チームとして兆しは見えているし、それは見ている人たちにも伝わっていると思う。ただ、そこで勝てないと『やっぱり勝てないか…』という印象のまま終わってしまう。勝ち切ることによって『変わったな』『強くなったな』と思われたい」
北九州戦を終えるとホーム2連戦が待っている。秋の深まりとともに紅葉が色づき、ボアルースの紅も濃くなる季節。F1残留を信じるサポーターとともに、ラストスパートを駆け抜けたい。

クラブ公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/



















