大卒1年目のOP酒井秀輔 サイズの不利を補う“身体能力とフレッシュエナジー”

天理大からVC長野トライデンツに加入したオポジット(OP)酒井秀輔。昨シーズンは内定選手としてチームに合流しており、今季はチームの中心選手として貢献を誓う。184cmと小柄ながらも独自のスタイルと持ち前の明るさを武器に、SVリーグで自分らしさを発揮したい構え。「1年目だからこそ出せる部分をしっかり出していきたい」と語る新人の挑戦が始まる。

文:大枝 史 /編集:大枝 令

コート外から見た悔しさを胸に
昨シーズンの学びを力に変える

よく響く声が、ひときわ存在感を放つ。

今年が大卒1年目のシーズンになるOP酒井秀輔だ。

天理大学で副キャプテンを務めていた時は「どちらかというとプレーで引っ張ることを意識していた」と話すが、練習時からも積極的に声を掛けて仲間を鼓舞する。

「楽しんでやろう、というのがベースにある。しんどい思いをしながらやるよりも、楽しむ方が良い」

まるでチームの若さを象徴するかのように、得点が決まれば全力で喜びを表現する。

酒井は昨シーズンから内定選手としてチームに合流。しかしコートに立つことはなく、外から見ているしかない日々が続いた。

「自分が圧倒的な技術を持っていればそういう判断ではなかったのかな…と思うと、やっぱり悔しい」

特に天理大で同期の楠本岳(東レ静岡)が活躍する姿を複雑な心境で見ていた。

「『すごいな』とシンプルにうれしかったのもあるけど、それは4割ぐらい。6割ぐらいはめちゃくちゃ悔しかった」

だからこそ、眼前で繰り広げられるSVリーグを「自分だったらどうするのか」と考えながら見てきた。その学びを無駄にしたくない――という強い思いがある。

PROFILE
酒井 秀輔(さかい・しゅうすけ) 2002年5月20日生まれ、広島県出身。小学2年生から中筋スポーツ少年団でバレーボールを始める。中学時代は全国3位を経験。広島工時代にオポジットに転向し、天理大では1年時から試合に出場した。4年時には西日本インカレで優勝。24-25シーズンにVC長野トライデンツに内定、大卒1年目の25-26シーズンを迎える。跳躍力とパワーが魅力のオポジット。184cm、70kg、最高到達点340cm。

高校時代にオポジットに転向
天理大では中島のトスを決める

広島県出身。バレーボール人生は小学2年生の時、母親のママさんバレーについて行ったことから始まった。そこで誘われたのがきっかけ。中筋スポーツ少年団で小学生時代を過ごした。

東原中時代は1学年上の高木啓士郎(広島TH)らと全国中学大会3位。中学3年時にもJOC都道府県対抗大会で3位の結果を残したが、「当時はピンチサーバーで使ってもらう程度だった」と話す。

高校は広島工へ進学。県内のトップチームを倒しての全国出場を目指したものの、「ずっと県2番とか3番をさまよう感じで、いつも最後に負けてしまった」と当時を振り返る。

そして高校時代に大きな転機が訪れる。ミドルブロッカー(MB)からオポジット(OP)へのポジション変更だった。

「高校2〜3年生ぐらいでOPをやらせてもらって、そこからエースのような立ち位置になった」

エースとしての自覚が萌芽。そして大学時代での広がりが酒井を急速に成長させる。進んだ天理大では1年時から出場。中島健斗のトスでスパイクを決める。

「全国経験者の人が多かったので、バレー観が広がった。こういう考え方があるとか、こういう戦い方があるとか、色々勉強させてもらった」

4年時には、西日本インカレで優勝を果たした。

どんなボールでも打ちに行く
小柄なオポジットならではの工夫

サーブやスパイクでかぶせ気味に打つ独特なフォームも、高いブロックに対抗するために自然と身に付いた。

「小さいなりにどうやって戦っていくか。普通にやっても通用しないから自分なりの何かを見つけていきたい」

体幹の強化にも意識的に取り組み、高い跳躍から力強いスパイクを繰り出す。その威力は、小柄な身体に似つかわしくないほど。インパクトの瞬間にパワーを上げるためにはリラックスすることを意識し、力まずにスイングを速くすることでボールに力を乗せる。

「オポジットなので、最後は勝負するポジション。打ち切ってこそだと思うので、そこはブレちゃいけない」

天理大でコンビを組んでいた中島も「どんなボールでも打ちに行く攻撃的な選手で、得点力のあるオポジットらしい選手」と話す。

大卒1年目のシーズン。練習やトレーニングマッチを重ねて、攻撃面での手応えは感じている。「通用する部分もあると思う。引き出しを多くすればもっともっと通用するという感覚はある」

若さと勢いを武器に、SVリーグ挑戦の1年目が始まる。

「1年目だからこそ出せる部分は出していきたい。受け身にならずにチームの中心だと思って頑張っていきたい」と抱負を語る。

場数や経験値はまだまだ成長途上。しかし、だからこそ怖いもの知らずの勢いでチームに活力をもたらせる。


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