母の逝去から2日 ガリンシャがホーム開幕戦で示したもの

ブラジル出身の34歳は、悲痛な思いを胸にホーム開幕戦のピッチに立っていた。2026年6月14日に千曲市のことぶきアリーナ千曲で行われたF1リーグ第3節、ボアルース長野-ボルクバレット北九州。ボアルースのガリンシャは試合2日前、最愛の母を病気で亡くした。母が待つ母国への帰国ではなく、チームに残って戦う道を選んだガリンシャ。鬼気迫るプレーの裏にあった心境とは――。
文:田中 紘夢
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目からこぼれる涙
それでも勝利を目指して
開幕戦は古巣のバルドラール浦安と対戦し、第2節の湘南ベルマーレ戦では2ゴールの活躍。加入2季目のガリンシャは、心身ともに充実した状態でホーム開幕戦へ向かっていた。
しかし、試合2日前に母国のブラジルから訃報が届く。病気を患っていた母親の容体が悪化し、亡くなったとの知らせだった。

最愛の人を亡くし、心が揺れ動かないわけがない。ただ、クラブ関係者によると、ガリンシャは母の死去をクラブに連絡した際に「チームに残る」ことも伝えてきたという。動揺を抱えながらも、今季初勝利が懸かるホーム開幕戦に向けてファイティングポーズを崩さなかった。
その強い意志をチームも尊重した。「もちろんつらいと思う。家族が亡くなった時に近くにいられないのは、“自分ごと”として考えても大変なこと」と山蔦一弘監督。ガリンシャを支えることによってチーム一丸となって前を向く姿勢を共有し、ホーム開幕戦に臨んだ。

試合前に1分間の黙祷が捧げられた際、ガリンシャは亡き母の姿を頭に思い浮かべたという。涙をこらえきれなかったが、親指と人差し指で目頭を押さえ、悲しみはその場だけにとどめた。
「難しい試合への臨み方ではあったけれど、ブラジルにいる兄弟もそうだし、日本のチームメイトも非常にサポートしてくれた。なんとか試合に臨めるメンタルに持ってくることができて、仲間と共にチームの勝利に集中していた。しっかり切り替えて臨めたと思う」

試合は終了間際に失点して3-4で惜敗した。ただ、ガリンシャの気迫に満ちたプレーは圧巻だった。最前線のピヴォの位置で屈強なフィジカルを生かしてボールキープ。マークに手を焼いた北九州はファウルを重ね、累積6回に達した第1ピリオドはボアルースが第2PKを獲得した。
「個人的には手応えがあるし、チームのためにプレーできたと思う」とガリンシャ。山蔦監督も「本当に前を向いて戦ってくれた」と称え、「1人の友人として我々がもっと支えてあげないといけない」と力を込めた。
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髙溝への“プレゼントパス”
「ガリンシャのゴール」
ホーム開幕戦には1,232人の観衆が集まった。先着1,000人の来場者に音響連動ペンライトが配布され、試合前からボルテージは最高潮に。エキシビションマッチを戦った信州大学フットサル部も応援に加わり、野太い声を張り上げた。

その盛り上がりに火を付けたのもガリンシャだった。0-1で迎えた8分、米村尚也のロングフィードを足元に収めて左足でフィニッシュ。シュートはGKに弾かれたが、両腕を高く振り上げてスタンドをあおった。
2-3で迎えた31分にはゴールを演出する。宇野伊織のパスを後ろ向きで受けると、背負っていたディフェンダーを振り切ってゴール前へ。GKとの1対1でシュートを打つかと思いきや、左足のアウトサイドで髙溝黎磨に“プレゼントパス”。髙溝は無人のゴールに流し込むだけだった。

「あれは9割9分、ガリンシャのゴールだと思う」と髙溝。ピヴォのガリンシャからすればシュートを打ちたくなる状況だが、髙溝は「(パスが)来ると思っていた。見えているんだろうなと思いながら走っていた」と明かす。
「彼(髙溝)がフリーだったのは見えていた。自分がシュートを打つよりも、彼がゴールを決める確率の方が高かった」とガリンシャ。特別な試合でも独善に走らず、フォア・ザ・チームに徹したプレーで再び会場を沸かせた。
強い思いを勝利に結実できず
この先も「ガリンシャと共に」
試合は髙溝と前川尚志に加入後初ゴールが生まれたが、一度もリードを奪えないまま1点差で敗れた。
「ガリンシャのためにも勝ちたかった。勝たないといけない理由が多い試合を落としてしまったし、仲間のために貢献できなかったのが悔しい」と髙溝。試合後はピッチ上で悔し涙を流す選手もいた。

さまざまな思いが交錯したホーム開幕戦。ガリンシャは、難しい状況に置かれた自分自身を支えてくれたチームメイトだけでなく、最後まで熱く後押ししてくれたサポーターにも感謝の言葉を送った。
「ピッチの外からもサポーターの力を感じられた。残念ながら勝利はできなかったけれど、いわゆる6人目の選手のおかげで非常に楽しくプレーできた」
シーズン終盤に負傷した昨季はコンディションが整わないまま戦い続けた。オフを休養と治療に充てた今季は序盤戦から本来の姿を取り戻している。チームは開幕3連敗と苦境が続くが、レギュラーシーズンで「勝ち点30」という目標に向けて「全力で手伝いたい」と力を込める。

Junto com Garinsha(ガリンシャと共に)――。
チームはその思いを胸に、“不退転”のシーズンを歩んでいく。
クラブ公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

















