ジャージーからジャケットに着替えて 勝又慶典が探す「クラブの価値」

現場からフロントへ――。AC長野パルセイロで選手やコーチとして活動してきた勝又慶典さんが、AC長野運営会社の「クラブPR地域営業特命担当」に就任した。クラブOBとしてピッチの上で現場を支え続けてきた40歳は、フロントスタッフとなって地域とクラブをつなぎ、盛り上げていく役割を担う。ジャージーからジャケットに着替え、新たな挑戦を決断した経緯や思いを聞いた。
構成:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
現場からフロントへの転身
「地域とクラブが好きだから」
2025-26シーズンはAC長野パルセイロ・レディースでコーチを務めた勝又慶典さん。最終節を前に退任が決まると、クラブから提示されたポジションは思いもよらぬ役職だった。
「クラブPR地域営業特命担当」
役職名からは具体的な仕事内容が想像しづらいが、対外的な営業活動はもちろん、クラブ運営や広報、普及活動などを通じてAC長野を中心にできた人の輪に飛び込み、その輪を広げていく取り組みをイメージしている。

大学を卒業して当時関東リーグ1部の町田ゼルビアに加入。快速を生かしたアタッカーとして活躍し、JFL昇格やJ2昇格に貢献した。
AC長野への加入は2014年。5シーズンにわたってプレー。36歳になった21年に当時JFLのFC刈谷で現役引退した。
引退後は古巣のAC長野に戻って指導者に転じた。アカデミーチームのU-14とU-18の監督やコーチを歴任。「やりがいはあったし、(指導者として)できることも増えていた」と振り返る。

U-18チームを率いて1年目だった25年に県リーグ1部からプリンスリーグ北信越2部への初昇格を果たした。2年続けて跳ね返されていた参入決定戦を“三度目の正直”で突破。クラブ史に残る実績を残した。
しかし、その後は短い間隔で異なるポジションに就くことになった。U-18監督は1年で交代となり、空席となっていたレディースチームコーチに。その役割も1年足らずで終え、今回の任務に就いた。
指導者やフロントスタッフも契約の世界で生きている。勝又さんは「自分がやりたいようにできるわけではないことも分かっていた」と受け止める。

この間、「サッカーに携わらない道も、他のクラブにお世話になる選択肢もあった」と明かす。それでもAC長野に残る選択をしたのは、「この地域とこのクラブが好きだから」。その思いは揺るがず、むしろ強くなっている。
指導者の道に未練がないわけではない。ただ、「もっとこの地域とクラブを知りたかったし、自分ができることを増やしたかった」と、フロントスタッフとして再出発することを決めた。
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現場目線で感じた温度差
選手たちの環境を整えるために
高いビジネススキルを持っているわけではない。それでも、勝又さんは「性別や年齢を問わずに誰とでも接することができる」ことが自身の強みだと自負し、新たな仕事に生かせると考えた。
AC長野ではトップチームとレディースチーム、アカデミーチームの現場をさまざまな立場で経験した。35歳以上の選手で構成するシニアチーム「セレソン長野」にも所属し、クラブ外にも人脈がある。この地域で培った横のつながりとコミュニケーション能力は豊富だ。

現場経験が長かったからこそ、現場とフロントの温度差にも敏感だと思っている。「一番は現場の環境を整えること。食事、移動、練習環境…。選手は少しのストレスで大きな影響を受けるけれど、結果が出ていないと(クラブに要望を)言いづらい部分もある」と感じている。
レディースチームでは、選手の成長やチームの強化にとって不十分な環境を体感。現場とフロントの温度差を訴える選手の声にも寄り添った。環境を改善するためには資金的な裏付けも必要。「変えられることはあると思う」と、汗をかこうと決意している。
現役時代に残した未練
「自分が携わって昇格したい」
選手、スタッフとしてAC長野に在籍して足掛け10年目になった。
移籍1年目の14年は「本当にプロなの?という感覚で来た」と笑い、「とにかく地域が温かくて、盛り上がりもすごくて…。このクラブのことをすぐに好きになっちゃった」と懐かしむ。

「クラブのために」という思いが芽生え、試合後は率先して観客とハイタッチ。アカデミーチームを指導する際は「トップチームで活躍する選手になってほしい」という思いで若い才能と向き合ってきた。
ずっとJ3で足踏みしているチームがJ2昇格に最接近したのが、勝又さんが加入直後のタイミングだった。
14年はJ3で2位に食い込み、J2・J3入替戦に進んだが敗退。15年と16年も3位の好成績を残したが、紙一重で入替戦進出を逃した。「自分たちが足止めしてしまった」。それだけに「自分が携わっている中でJ2に昇格したい」という願いは強い。

「もっと自分がこのクラブを動かせるようになりたい。『OBだから』という立場は関係ない。自分からどんどんクラブの魅力を発信したい」
クラブから課された使命は「このクラブの価値は何か」を探し、創り、広めること。
積み重ねた経験と、地域やクラブへの愛を武器に、人の輪に飛び込んでいくつもりだ。
勝又慶典「クラブPR地域営業特命担当」就任のお知らせhttps://parceiro.co.jp/info/detail/OqaRr4FNRohE_Rymr9_2SU9mWURBQzZxVW8xbkE5ZlJYWjRoOUhSMzZER3JUdVdzYU83cDgwd1ZfWEk














