佐久長聖高女子サッカーが創部10年目に新たな挑戦 海外エージェントと提携

創部10年目を迎えた佐久長聖高校女子サッカー部が、大きな一歩を踏み出した。2026年9月18日、オーストラリアに拠点を置くエージェント会社「Elite Football Agency(EFA)」との提携を発表。同校によると高校サッカー界では男女を通じて初の試みで、「世界の佐久長聖へ」というスローガンを推し進める。これまでも卒業生を海外に送り出してきた中で、選択肢の幅が広がりそうだ。
文:田中 紘夢
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過去9年で卒業生18人が海外へ
活躍の広がりとともに障壁も
2017年の創部から今年で10年目。卒業生58人のうち33人が競技を継続し、うち18人が海外に羽ばたいた。日本最高峰のWEリーグにも2人を送り出すなど、国内外で実績を残してきた。
これまでは留学サポートの企業を介して、スペインとアメリカに人材を輩出。今年3月に卒業したMF西尾碧海もその一人だ。NCAA(全米大学体育協会)1部リーグのアラバマ州立大学から届いたオファーは、全特待かつ支給付きと破格の条件。かつてない評価を受けて渡米し、各国のA代表と肩を並べている。

こうしてOGが続々と活躍の場を広げる半面、新たな課題も抱えていた。創部当初から指揮を執る大島駿監督は言う。
「どうしても日本で現場を指導していると、在校生を海外に行かせるべきか悩むところもある。仮に送り出したとしても、選手たちを継続的に追うのは難しく、本当に行くべきだったかは結果でしか分からない。情報をキャッチできないのは課題だった」

それを解決する術を見出したのが、今年の2月。かねてから親交があったアグスティン・レオナルド・オルテガさんの紹介で、オーストラリアに拠点を置くエージェント会社「Elite Football Agency(以下EFA社)」とコンタクトを取り始めた。
同氏は元アルゼンチン代表のホルヘ・アルベルト・オルテガさんの息子に当たり、現役時代はJリーグのブラウブリッツ秋田でプレーしていた。

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世界への“出口”を広げる提携
「合ったものを選べるように」
「EFA社はどのチームでも良いわけではなくて、ビッグクラブであっても理念が合わなければ断っている。チームと選手を大切に扱う姿勢を感じた」と大島監督。EFA社のアラン・デリアード代理人兼CEOも「大島監督のとてつもない努力を感じて、一緒に仕事がしたかった」と経緯を明かす。

両者は9月18日に提携を発表。佐久長聖は「世界の佐久長聖へ」というスローガンのもと、海外志向の高い選手を中心に入り口を開いてきたが、より“出口”を広げていく必要もあった。
EFA社はスペインとポルトガルをはじめ、世界各国のクラブとパートナーシップを結んでいる。日本代表MF佐藤龍之介が所属するバレンシア(スペイン)もその一つだ。

佐久長聖からすれば進路選択の幅が広がるだけでなく、プレー映像を日常的にチェックするタスクも委ねられる。いつ、誰が、どのタイミングで、どこに行くべきか――。膨大な事例を参考に、適切なアドバイスを受けられるようにもなる。
その範疇は在校生に限らず、卒業生も対象。各国に散らばる選手の動向を追い、適切な移籍先の斡旋も可能に。安心して海外へ送り出せる。

チーム強化においても、海外遠征先の選定や留学生の受け入れなど、幅広いサポートが期待できる。「常に情報交換しながら、自分たちに合ったものを選べるようになる。日常が変わってくると思う」と大島監督。より世界との距離が近く感じられそうだ。
スローガンを独り歩きさせず
EFA社とともに次の10年へ
松本市出身のMF前野紬(2年)は、松本山雅FC U-15から進学。「うまくなりたい」という一心で門戸を叩いたが、スペイン遠征などを通じて「世界で活躍したい」と思いが変わり始めた。
今回のEFA社との提携を受けて、「目の前にすごく大きなチャンスが転がっている」と声を弾ませる。提携締結後の練習では、選手たちはEFA社の面々からアドバイスを受けた。映像も含めて「見られている」と感じることで、身が引き締まる思いもあるようだ。

海外で通用するためにも、まずは国内で圧倒的な成績を残さなければならない。過去9年での最高成績は、2024年度の全日本高校女子選手権で記録したベスト8。大島監督はベスト4への定着と、日本一を目標に掲げている。
一方で「日本で評価されているからといって、海外で評価されるわけでもない」とも話す。実際にOGの中には、日本で過小評価されていても、卒業後に海外で活躍する選手もいた。

「日本人がヨーロッパに行くことは増えているけれど、現状はヨーロッパのレベルが上がっていて、日本人のレベルは(相対的に)下がっていると思う。U-20ワールドカップでもベスト16で負けてしまうのが現状」
「その中でも自分たちを信じて、『世界の佐久長聖へ』というスローガンに向かって取り組んでいくだけ。しっかりと選手を育てて、EFA社とともに歩んでいきたい」

創部10年目に大きな一歩を踏み出し、足を止めることなく次の10年へ。佐久長聖はスローガンを独り歩きさせない。





















