“赤馬の呼吸”藤川虎太朗&樋口叶 初采配の恩師に白星贈る

「日本のひなた」宮崎で、半年ぶりに陽光が差し込んだ。AC長野パルセイロは2025年2月16日、J3リーグ開幕戦でテゲバジャーロ宮崎に1-0。新体制初勝利を挙げるとともに、昨季から数えて15試合ぶりの白星をもぎ取った。決勝点を演じたのは、ともに新加入のMF藤川虎太朗とMF樋口叶。ロアッソ熊本でも藤本主税監督と共闘した2人が、初采配の恩師に初白星を届けた。

文:田中 紘夢

半年ぶりのラインダンス
不安を払拭する新体制初勝利

183日。
――AC長野が勝利から遠ざかっていた日数だ。

2024年8月17日、J3リーグ第24節。ホームで宮崎を3-1と下して以降、半年間にわたってトンネルの中にいた。

勝利から遠ざかっていただけではない。藤本新監督を迎えた今季は、プレシーズンから悪戦苦闘。練習試合でアマチュアチームに大量失点することもあった。

指揮官からしても、一抹の不安はあったようだ。

試合に向けた取材の中で「楽しみとかではなくドキドキしている」と吐露。トップチーム初采配となるのだから、それも無理はない。

当日も緊張を覆い隠すように、試合前に「行こうぜ!」「勝とうぜ!」と大声を張り上げたという。

それだけに、トンネルを抜け出したときの喜びはひとしおだ。

アウェイでのJ3リーグ開幕戦。相手はくしくも、最後に勝利を挙げた宮崎だった。前半に挙げた藤川のゴールを守り抜き、1-0の勝利。藤川虎太朗という名が示すように、まさに“虎”の子の1点だった。

2年ぶりの開幕戦勝利とともに、監督の初陣で白星発進。183日ぶりのシャナナ(ラインダンス)で、サポーターとともに喜びを分かち合った。

熊本時代から互いを知る2人
ワンタッチ2回で決勝点を奪う

試合前。指揮官が張り上げた大声に、樋口は身を引き締めた。

「熊本の時もけっこう声を張り上げていた。そっちのほうが『もっとやらなきゃ』となる」

その声に呼応したのが、28分の先制点だった。藤川が左サイドのMF忽那喬司からボールを受けてフリック。これに樋口が反応し、ワンタッチのターンで相手DFの逆を突いた。

ドリブルで中央に持ち運ぶと、その間に出し手となった藤川が左ポケットへ。樋口のスルーパスを受け、冷静にニアサイドを打ち抜いた。

「2人の良さが出た。(樋口)叶には『とにかく前に仕掛けろ』というメッセージも伝えていた。それをしっかりやって、うまいターンからスルーパスを出してくれた」

「(藤川)虎太朗もボールを受けてうんぬんだけじゃなくて、『走ることも大事だよ』という話の中で、その2つを2人がしっかりとやってくれた」

そう話す指揮官にとって、樋口と藤川は熊本時代の教え子だ。樋口はジュニアユース時代に監督として、トップチーム時代にコーチとヘッドコーチとして師事。藤川も2021年の1年間のみだが、ヘッドコーチとして共闘していた。

樋口は熊本でもチームメイトだった藤川と連係し、鮮やかなアシスト。得意のターンで相手をかわし、中央に運んでラストパスを出すまでの流れは、ドリブラーの持ち味が出た。「あのプレーは自分でもナイスだった」。そう自画自賛するのも無理はない。

藤川からフリックが来ることも感じていた。「熊本でもやっていたので、あのタイミングで来るのは理解していた」と振り返る。

出し手の藤川も「叶は相手を背負ってのターンに長けている。(忽那も含めて)三角形がうまくできて、人もボールも動くことができた」とうなずく。

14分にも似たような場面はあった。樋口が左サイドで相手を振り切ってカットイン。その間に藤川が左ポケットに抜け出し、クロスを送った。

惜しくも味方には合わなかったものの、決定機を創出。元熊本コンビの“あうんの呼吸”は、練習から見ていてもうかがえる。

新天地で恩師とともに戦う2人
8年ぶり開幕連勝のカギを握る

2人の教え子が紡いだゴール。ジュニアユース時代からの恩師に初勝利を届けた樋口は、「勝てて本当によかった」と安堵感に浸る。

「あのときから変わっていない。サッカーに熱くて、常にケツを叩いてくれて、選手の気持ちを上げてくれる熱い男」

殊勲のアシストをした後には、実際に尻を叩かれた。

ハーフタイムに無念の途中交代。攻撃では見せ場を作れたものの、開幕戦特有の緊張感もあってか、守備の強度が上がらなかった。

「そこは自分も足りないと思っていた。けっこうキツかったけど、キツい中でも強度高くやれるようにしないといけない」と省みる。

翌日に行われたFC延岡AGATAとの練習試合にも出場した。プレータイムは30分のみとなったが、守備の強度は意識していた様子。次節のギラヴァンツ北九州戦では、攻守ともに躍動した姿を見せてくれるだろう。

そして藤川にとっても、指揮官の期待に応えたい思いは大きい。

「同じポジション(トップ下)ということもあって、熊本時代からヘッドコーチとしてたくさん教えてくれた。今度は監督と選手という関係で呼んでもらったので、やるからには上を目指したい」

GK松原颯汰やDF大野佑哉ら守備の奮闘も光り、無失点で勝利をもぎ取ったAC長野。宮崎県綾町で引き続きトレーニングを続け、次節は北九州に乗り込む。

過酷なアウェイ2連戦で、2017年以来の開幕2連勝が懸かる。藤川にとって北九州は、2022年に在籍した古巣。ミクニワールドスタジアム北九州に初凱旋となり、「やってやろうと思っている」と力を込めた。


J3リーグ第1節 宮崎-長野 試合詳細
https://parceiro.co.jp/topteam/matches/detail/453
クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/
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