“WE ARE WARRIORS”プライド示した40分間 ロスター9人で先勝

すでにB1昇格の可能性はついえていた。それでも示すべきものがある。2025年5月17日から始まったB2リーグプレーオフ(PO)3位決定戦。信州はアウェイの福岡市民体育館でライジングゼファー福岡と対戦し、GAME1を72-68で勝利した。「ブースターのために」とチームは再び奮起し、限られた人数で見事な白星。熱戦を振り返りながら、根底に流れるそのスピリットに触れる。

文:芋川 史貴/編集:大枝 令

応援してくれる人がいる限り戦う
コートに立てば自然と闘志も湧く

「日々成長」――。

掲げたその言葉が決して空疎なものではないことを、コートで証明してみせた。

互いに決して簡単ではない3位決定戦だ。1週間前に悲願のB1昇格を逃したばかり。モチベーションが低下することも、それに伴って試合のクオリティーが低下することも想像にかたくはない。

加えて信州はロスターが9人。渡邉飛勇は脳震盪での欠場が続き、ペリン・ビュフォードは母国へ帰国。テレンス・ウッドベリー、エリエット・ドンリーはパブリックビューイング会場のホワイトリングから戦況を見守った。

そんな中で現地には30人弱のブースターが集まり、PVでも多くのブースターが選手を後押しした。

その甲斐もあって――なのだろう。

一度試合が始まると選手たちは目の前の勝負に集中していた。目標は確かに逃した。ただ、そんなことは関係なく、プロアスリートとしてのプライドがコートで火花を散らした。

ビッグマンが少ない信州はポジションに関係なくリバウンドへ飛び込み、オフェンスではパスをこまめに供給。オープンの状態でシュートを打つ場面も頻繁に見られた。

トータルリバウンド数は福岡よりも3本多い42本。3ポイントシュート決定率も38.2%(13/34)と平均よりも高い数値を記録した。

勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)は試合後、選手たちのマインドを称えた。

「『プライドを持って戦いたい』『応援してくださる人たちがいるから戦いたい』――。いざゲームが始まったらそんな気持ちで臨めたと思う」

「たくさんチームでクリエイトして、たくさんオープンショットを打てていて、本当に良いバスケができていた時間が多かった」

チーム最長の34分26秒をコートで過ごしたアキ・チェンバース。仕事場であるコートで、自然と闘志が湧き立ってきたことを明かした。

「試合が始まると自然に『勝ちたい』という気持ちが湧いてきた。ものすごく良い勝ち方ではなかったけれど、最終的に勝利を勝ち取れて、自分たちが今日一番やりたかったことができた」

今季初の先発起用に応えた小玉
6本の3P含む22点のキャリアハイ

チーム全体でつかんだ勝利。ただその中でも大車輪の活躍を見せたのは、今シーズン初先発となった小玉大智だった。

第1クォーター(Q)残り7分21秒に石川海斗へのドライブに合わせて得点を挙げると、第2Q残り6分10秒には1本目の3ポイントシュートを沈める。

そして第3Qに衝撃的な数字を叩き出す。

3ポイントシュート5/5(100%)の15得点。そのどれもが、美しい弧を描いてゴールへと吸い込まれた。

シュートが決まるごとに歓声が大きくなる、信州ベンチと信州ブースター。会場全体も驚きと感嘆に包まれた。

最終スタッツは28分27秒の出場で22得点8リバウンド。誰もが目を見張る、獅子奮迅の働きぶりだった。

「試合中は何本決めたとか意識していなかったので、後からこの結果を知ってうれしい気持ちはあるし、僕の中ではすごくチャンスの日でもあった」

喜びもそこそこに、伸びしろに目を向ける。

「さらに課題がいっぱい見えた試合でもあったので、喜んでいられないという気持ちは正直ある。うれしい気持ちは20%ぐらい 」

慢心ない表情で振り返る。クォーターファイナルの鹿児島レブナイズ戦では自身初めてのPOということもあり、緊張から本領を発揮できなかった。

「緊張感のある試合の中をずっと戦って、その中でどう生き残っていくか(を学べている)。 そこで『自分なんてダメだな』と思うと負けだと思うので、今日は特に成長の部分とアピールの部分にこだわった」

アンビバレントなカウントダウン
それでも連勝して有終の美を飾る

18日のGAME2に勝利すれば信州は連勝で3位が決定する。

しかし、それは逆に今季のラストゲームを意味する。

勝てばもちろん、誰もがうれしい――。だが、最終戦には別種の感情があることも確かだろう。それはチームメイトを大切に思う勝久HCにとっても、ブースターにとっても同じことだ。

指揮官も繊細な心境を口にしつつ、それでも先頭に立ってプロとしての矜持を示す。

「選手たちにも言ったけれど、最後という悲しさがある中で、『このメンバーでもう何試合か続いてほしい』という気持ちもありながらも、絶対に明日も良い一勝をして帰れれば」

もちろん勝利したとはいえ、課題も依然として多い。

第4Qの勝負どころでは10個のターンオーバーを犯し、一時は20点差あったスコアを一気に縮められた。フリースローも25本と多く与えてしまった。小玉が反省を口にする。

「僕らはビッグマンへのディフェンスの部分で多く課題が出た。そこでやられてしまってウェイン(マーシャル)さんに負担をかけてしまった部分が多くあって、そこが僕らの失点に多くつながっていた」

「僕らの試合が今シーズンはもう長くて2試合。そして明日僕らが勝てば1試合という状況になって、今シーズンこのチームでやるのもこれが最後の試合になる。なので僕らのやってきたものの全てを皆さんに見せられるように準備していきたい」

終わってほしくない。まだこのチームを見ていたい――。

けれど、勝ってほしい。勝ちたい。
コートに立てば自然と、闘志に火がつく。

さまざまな思いが交錯するPOの3位決定戦、GAME2も勝利してシーズンを締めくくれるか。“信州ブレイブウォリアーズ”の名に恥じない勇士たち。日々成長のドラマが、まもなく終幕を迎える。


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