総勢12人の非常事態で臨んだ一戦 気を吐いた“生粋のファイター”野口茅斗

ボアルース長野は2025年7月13日、F1リーグ第7節をホーム・ことぶきアリーナ千曲で迎え、しながわシティに2-4と黒星を喫した。先制のオウンゴールを誘発した野口茅斗は、チーム最多のシュート5本と気を吐いた。バサジィ大分から加わったF1で7年目の27歳。人一倍の負けん気を押し出し、チームを奮い立たせている。

文:田中 紘夢/編集:大枝 令

古巣戦の悔しさを糧に奮闘も
下馬評を覆せず自らに憤慨

「世間的に見たらケガ人だったり出場停止の選手がいて、『苦しい状況だよね』と。そう言われるのが悔しいし、だからこそ勝ちたかった」

前節にエース上林快人とキャプテン三笠貴史が退場となり、今節は出場停止。ケガ人も続出し、台所事情が厳しかったことには間違いない。試合には14人までエントリーが可能だが、この日は12人しかいなかった。

ただ野口は、言い訳をするつもりはなかった。

むしろ逆境を跳ねのけてこそ、チームとしても個人としても一皮むける。それは若手も含めて全員が共有していたはずだった。

ましてや前節は、アウェイで苦杯をなめて帰ってきた。

昨季まで6年間在籍していたバサジィ大分に1-3と敗戦。終盤に古巣弾を決めたものの、「自分のプレーが何もできなかった。特別な試合だったのでなおさら悔しかった」と唇を噛む。

その悔しさも込めて臨んだホームゲーム。全日本選手権王者のしながわシティを相手に2-4と敗れた。自身のCKが相手のオウンゴールを誘って先制したものの、のちに4失点と地力の差を見せつけられた。

「もっと自分もやらないといけないし、一人一人が這い上がらないといけない。ケガ人だったり出場停止がいて負けているようでは、順位も下のままで終わってしまう」

経験の浅い若手が多く組み込まれた中でも、残り9分までは1-0とリード。はたから見れば「善戦」という2文字が浮かぶものの、野口からすれば「何もかも足りない」。周囲の見立てを覆せなかったことに憤りを覚えた。

ポジションを問わず奔走
守護神とも信頼関係を構築

この日はチーム最多となる5本のシュートを記録。第1ピリオドから何度もゴールを脅かし、第2ピリオドの30分に報われる。

左からのCK。ボールをセットした野口は味方に合わせることなく、ゴールとGKの間を目がけてトーキック気味に蹴り込む。GK黒本ギレルメが右手で弾いたこぼれ球がネットに吸い込まれ、オウンゴールを誘発した。

「相手の守備が上手だったので、出すところがないと思っていた。しながわは良いGKがいて、そこに少し任せている部分もあったので、事故狙いのような形だった」

頭を使ってのトリックプレーだったが、本人いわく「気持ちで押し込んだゴール」。得点後は感情を爆発させ、同じバサジィ大分育ちの山蔦一弘監督と熱い抱擁を交わした。

守備でも相手の強力な攻撃陣に抗い、残り9分までは無失点に抑えた。

アラ(サッカーのサイドハーフに相当)を本職とする野口だが、三笠が不在の中でフィクソ(同センターバックに相当)としてプレー。同ポジションはケガ人も続出しており、野口や渡辺大輔が補うケースは増えている。

「フィクソをやるからこそ、アラにどういう動きをしてほしいかも分かる。個人のレベルを上げるためにもいろんなポジションをやりたいし、チームのためになんでもやりたい」

後ろには頼もしい存在がいる。
大分でもチームメイトだったGK橋野司だ。

開幕から幾度となくピンチを防いできた守護神は、この日も35本のシュートを打たれた中で好セーブを連発。4失点のうち2失点はパワープレー(GKをフィールドプレーヤーに代えての全員攻撃)の流れで橋野が不在だった。

実質的には2失点に抑え込んだ。

「自分も(橋野)司くんのことを求めているし、司くんも自分を信頼してくれていると思う。彼があれだけ守ってくれているので、フィールドプレーヤーがもっと突き詰めないといけない」

味方のために、チームのために――。
野口は身を粉にすることをいとわない。

負けん気の強いファイター
首位撃破へ「失うものはない」

攻守にアグレッシブな生粋のファイター。体格で勝る相手にも肉弾戦を恐れず、スピードを生かした突破や強烈なシュートもある。戦う姿勢を前面に押し出す姿は、山蔦監督も高く評価している。

「推進力を持って前に出てくれるし、発言にも負けん気を感じる。口で言うのは簡単だけど、それをピッチで表現してくれる。チーム全員にそうやって戦ってほしいし、お手本のような選手だと思う」

負けん気の強い男だからこそ、現状を受け入れ難い側面はあるだろう。チームは開幕から1勝6敗の最下位。目標とする残留に向けて、しぶとく勝ち点を拾わなければならない。

「自分は結果を出して、チームを勝たせるためにここに来た。次は首位が相手だけど、相手がどこだろうが関係ない。むしろそういうチームを食っていかないと、勢いは出てこない」

次節は立川アスレティックFCとのアウェイゲーム。4連勝中の首位を前に「失うものは何もない」。下馬評を覆すべく、野口が導火線に火をつける。


チーム公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

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