19位後退で迫る「降格」の2文字 今こそ“長野一心”となって乗り越えるとき

“クラブ最大の危機”と言っても過言ではないのかもしれない。J3リーグを戦う長野パルセイロは、第26節終了時点で6勝7分17敗(勝ち点25)。リーグ20チームのうち19位に沈んでおり、これはJ3・JFL入れ替え戦に回る可能性のある危険水域の順位だ。まだ12試合が残されているとはいえ、到底安閑としてはいられない。この難局をどう乗り越えるのか――。選手たちの声を聞いた。

文:田中 紘夢

リーグ最少得点のさなかで
両ウイングバックが示す積極性

「19位というのは、Jリーグに60チームある中で下から2番目。これで危機感を感じない選手は誰一人としていない」

J3リーグで20チーム中19位。MF安藤一哉が言うように、Jリーグの60チーム中59位でもある。順位表を見るだけでも寿命が縮む思いだ。

足かせとなっているのは、リーグ最少の得点力。第26節終了時点で19得点(1試合平均0.73)と沈み、複数得点から14試合も遠ざかっている。

第16節のFC岐阜戦では、ゴール期待値(シュートチャンスが得点に結びつく確率)が「2.828」に達しながらも、「0.731」の相手に対して1-2と敗れた。

チャンスは作れていても、ネットを揺らせない――。ミスを恐れてなのか、相手陣地での消極性も目立ってきた。

「観客は前に行く姿だったり、仕掛けるシーンを見たいのに、『もしかしたらミスするかもしれない』というマインドで勝負しないのは誰も見たくない。僕はそれをチームに感じたので、『お前行くなよ』と思われたとしても、強引にクロスまで完結させるところは意識している」

そう話す右ウイングバックの安藤に感化されるように、左ウイングバックのMF忽那喬司も積極性を高める。

「カズ(安藤)がこのチームにいることで先手を取れると思う。それは僕のところもそうだし、クロスに対してカズが入ってきてくれるシーンもある。大外から入ってくる選手はつかみづらいし、自分がやられて嫌なことはどんどんやっていかないといけない」

1-2と敗れた前節のSC相模原戦では、クロスに大外から飛び込んで同点弾を演出。まさに積極性が生んだゴールだったが、勝利に繋がらず悔しさを噛み締めた。

6人のキャプテンでミーティング
「この順位にいるからこそ…」

5試合未勝利で19位に転落。「降格」という2文字が迫り来る中、試合後にゲームキャプテンのDF大野佑哉は方向性を示した。

「(ゲーム副キャプテンの忽那)喬司とか(FW浮田)健誠とか、ベテランの選手も含めてもう一回チームがやるべきこと、目指すことを話し合って、みんなと共有したい」

その言葉どおり、週明けにはミーティングを実施。チームキャプテンのMF三田尚希、副キャプテンのMF加藤弘堅とDF砂森和也が場を仕切り、6人で議論を交わしたという。要旨を忽那が明かしてくれた。

「抽象的に『やれよ』『行けよ』というのは、誰にでも言えると思う。だけどこの順位にいるからこそ、より細かいところにこだわらないといけない。起こった現象に対して、『なぜそうなったのか』というのを深掘りしないといけない。もっと幅広くサッカーのことを考えて、『会話のレベルを上げていこう』と話をした」

時には感情を表に出すことも必要だが、理性を失っていては具体的な解決策は見出せない。結果が振るわない時期が続く中で、抽象的な言葉が増えてきたのも事実としてあった。

チームキャプテンの3人は出番こそ少ないが、物事を俯瞰して捉える能力に長けている。一方、ゲームキャプテンの3人は試合で中核を担い、ピッチで起きた現象を捉えられる立場だ。

双方の意見を集約する中で、「それぞれ思っていることはあった。それは全部間違っていなかったし、全部正解だった」。

六人六色をパレットの上で混ぜると、浮かび上がるのはオレンジ。それをベースに33人の色が混ざり合えば、濁りのないオレンジになる。

「地の利は人の和に如かず」
“長野一心”で残留へと向かう

忽那はプロ3年目の2021年、愛媛FCでJ3降格を味わった。当時の経験を踏まえ、残留に向けて「良い意味で順位を意識しないほうがいい」と持論を述べる。

「順位を意識しすぎると『勝たせないといけない』というプレーが先行してしまって、チームプレーどころではなくなるところもある。まずは味方を信じて、チームで最後まで戦うことを意識したい」

「味方」というくくりには、当然ながらサポーターも含まれている。藤本主税監督が「ホームは選手が別人のようになる」と驚くように、長野Uスタジアムは獅子の本能を呼び覚ます気場だ。

儒教の思想家・孟子の教えに、「地の利は人の和に如かず」との言葉がある。いかに土地の形勢が有利であっても、一致団結している人々の力には及ばないという意味。その両方が噛み合えば、恐れるものは何もない。

チームは目標を「残留」の2文字に切り替えた。それに向かうための初戦が、9月13日のホームゲーム。同じJ3オリジナル12のガイナーレ鳥取を迎え、“長野一心”となって覚悟をぶつける。


J3第27節 ガイナーレ鳥取戦 ホームゲーム情報
https://parceiro.co.jp/info/detail/2025j3_27
クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/
長野県フットボールマガジン Nマガ
https://www6.targma.jp/n-maga/

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