山本憲吾のバレーボール・ラボ(4)「連敗脱出へ! 見えた変化の兆候」

バレーボールはスピーディーで華やかなプレーが目を引くが、その裏には緻密な戦術の応酬がある。国内最高峰・SVリーグで奮戦する男子のVC長野トライデンツも同様だ。ネットを挟んで対峙する相手と、どんな駆け引きをしながらプレーを選択しているのか。2017-21年に在籍した元リベロ・山本憲吾が、奥深いバレーボールの世界に案内する。第4回は、コート内に見えてきた変化を解説しながら次節・東レアローズ静岡戦を展望する。
構成:大枝 史、大枝 令
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連敗中に必要なマインドとは
広島TH戦で見せた変化の兆し
17連敗。暗いトンネルが続いている。
うまくいかずに黒星ばかりが積み重なっていくと、どうしてもメンタル面は落ちてしまう。僕もかつての旧V1リーグ時代、25連敗でシーズンを終えた経験がある。当時を振り返ってもメンタル面は難しかったし、今の選手たちも勝利を目指してもがいているはずだ。

連敗中は同じようにプレーしていても勝てないため、何かを「変える」チャンスでもある。実際にその兆候はあり、例えば最近だとアウトサイドヒッター(OH)オスカー・マドセンのアタックの決め方がセットごとに違う印象を受ける。そうやってほかの選手も変わっていけば、チャンスはあると思う。

コート内での「変化」を感じさせる象徴的なシーンがあった。広島サンダーズ戦GAME2の第3セット、21-22からのラリー。今回は一連のプレーでVC長野が感じさせた変化を詳しく解説する。崩された状態から持ち直しつつ巧みに相手の攻撃を限定し、3枚ブロックでシャットしたシーンだ。
まず相手のアタックをブロックタッチ。マドセン(#22)がパンケーキで拾う。この時点でVC長野の陣形は大きく崩されていたが、ここから盛り返す。

セッター(S)赤星伸城(#6)がアンダーで上げたボールに対し、マドセンが3枚ブロックの上をふわりと越す。広島の212cmオポジット(OP)フェリペ・モレイラ・ロケ(#19)を前に転がし、切り返される可能性をつぶした。
狙い通りロケは使われない。レフトからOH新井雄大(#7)が強打を繰り出してくるものの、3枚でブロックタッチを取る。赤星は再びマドセンを選択。するとまたしても軟打で、今度はコート中央を狙って落とす。ここが2番目のポイントだ。

先ほどのプレーを警戒してか、ロケが一歩前に。そもそもトスを上げようとするS永露元稀(#21)がコースを塞いでいるため使われない。拾った新井だけでなく、ミドルブロッカー(MB)西本圭吾(#15)も打ちにくい状況。必然的に選択肢はOHクーパー・ロビンソン(#6)のパイプ攻撃に絞られ、狙い通りの3枚ブロックでシャットしてみせた。
このラリー以外にも、執拗にブロックを試みるシーンが多く見られた。トライしている方向性は非常に良いし、苦しい試合の中でもそれが出せる――というのは、選手スタッフが前を向いている証拠。下を向いている時は何もかもうまくいかないものだ。

このほか大阪ブルテオン戦でオポジットに(OP)酒井秀輔が入ったり、広島TH戦ではOHにファルハン・ハリムが登場したり。今まで出られず悔しい思いをしてきた選手がコートに立つことで、がらりと空気感が変わることもある。連敗中の苦しさはあるものの、思い切り良く挑戦するメンタルを持ち続けたままプレーすることも非常に重要だ。

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勝つためには勝負どころのディグ
拾って、決めて、流れを呼び込め
柔軟に変化しながらも、勝利へのカギはどのようにブレイクを取っていくか。そこから逆算すると、これまでの戦いを通じてディグ率が低いのではないか――と感じる。「ここ1本」という勝負どころで上がってこないのが、間接的にブレイク率の低さに繋がってしまっている。

広島TH戦を見ていても、OPのロケを防げていなかった。拾えていないボールをどれだけ拾えるか。そこから決め切れれば確実に流れを持ってくることができる。

東レアローズ静岡も粘り強く拾ってくるチームで、MB陣も代表クラスだ。前回対戦で負けてしまった試合に関しては、VC長野がなかなか拾えず単調なミスを出してしまったことが敗因の一つだったように感じる。
相手OPのキリル・クレーツは高さがあるため、良い状態でアタックを打たせてしまうと厳しい展開を余儀なくされる。逆にサーブで相手を崩して、ハイボールになればレシーブも絞りやすくなってくるのは自然の成り行きだ。

OPの選手はプライドが高い選手も多く、しつこくブロックについていったり拾ったりしていれば集中力が切れることもある。相手が嫌がるプレーを粘り強く続け、VC長野が「抑え切る」くらいのモチベーションで臨みたい。
MB李博にも注意が必要だろう。試合の流れを自分たちに引き寄せられそうな局面で、嫌なアタックをしてくる選手。勢いを寸断されずに乗れるかどうか――も、勝利を目指す上では重要なポイントの一つ。その2人に対するブロックとレシーブは、いっそうの警戒心を持って臨みたい。

東レ静岡も相手に合わせてメンバーを変えてくるチーム。GAME1、GAME2ともにどのような起用になるかは不透明だが、相手も前回対戦時にVC長野に良い状態で勝っているわけでもない。VC長野は次節の2日間、「変化」と「進化」の証を示して勝利を手繰り寄せてほしい。

PROFILE
山本 憲吾(やまもと・けんご) 1992年6月22日生まれ、大阪府出身。小学校4年生の時にバレーボールを始めた。中学校には部活動がなかったため、校長に直談判してバレーボール部を設立。JOC大阪北選抜で全国3位を経験した。大塚高(大阪)からリベロに転向し、2年時にインターハイ初優勝に貢献。中京大では東海リーグで2〜4年時に3年連続でリベロ賞を獲得した。卒業後は岡崎建設owlsでプレーし、2017年にVC長野トライデンツに入団。19年にはリベロ部門のファン投票1位でオールスターゲームに出場した。20-21年シーズンまで在籍し、現役引退。現在はVC長野トライデンツU15女子の監督。趣味は愛娘の写真を撮ること。
SVリーグ男子第13節 東レアローズ静岡戦 試合情報
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div13-1
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div13-2
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

















