選手投票でキャプテンに選出 筬島彩佳が信頼を置かれる理由

穏やかな表情の裏にリーダーシップを秘めている。8月23日にWEリーグ開幕戦を控えるAC長野パルセイロ・レディースは2026年7月29日、DF筬島彩佳のキャプテン就任を発表。25/26シーズンになでしこリーグ1部の愛媛FCレディースから加わった29歳が、加入2シーズン目にして大役を任された。なでしこリーグでは通算152試合に出場し、137試合連続フル出場の金字塔を達成。“鉄人”と称されたセンターバックが信頼を置かれる理由はどこにあるのか。

文:田中 紘夢

指揮官も納得のキャプテン選出
副主将にベテランと若手を指名

今季からAC長野パルセイロ・レディースを率いる中村敦監督は、キャプテン選出の裁量を選手たちに委ねた。選手会長のMF三谷沙也加が音頭をとって「投票制」を導入。筬島彩佳が最多投票を獲得した。

前所属の愛媛FCレディースでもキャプテンを務めていた筬島は、「長野に来て役職があろうがなかろうが、そういう気持ちを持ってやろうと思っていた」。昨季はシーズン途中から副キャプテンに追加された。終盤戦は腕章を託される試合も多く、廣瀬龍前監督からの信頼は厚かった。

それだけに今回の人事も違和感はない。中村監督からしても「彼女なら任せてもいいかなと思っていた」。始動初日の(走力や心肺機能を測る)ヨーヨーテストから遅れを取らない姿勢や、コミュニケーション能力の高さに適性を見込んでいた。

副キャプテンは30歳のGK垣内愛菜と、19歳のDF児玉一穂。筬島がベテランと若手から1人ずつ指名した。

垣内は前所属の朝日インテック・ラブリッジ名古屋(なでしこ1部)でもキャプテンを務めており、筬島からすれば「間違っていることは間違っていると言ってくれると思う」。選手投票でも票を入れるほど信頼を置いている。

児玉については「この経験をプラスに変えて成長してほしい」という願いから選んだ。重荷になるのであれば再考するつもりだったが、本人から「頑張りたい」と前向きな声を受けて選任。互いに支え合いながら成長していく決心だ。

「うるさい」ほどの対話力
“鉄人”ぶりで説得力も備える

筬島の理想とするキャプテン像は、愛媛FCレディースで同僚だった阿久根真奈さん(現愛媛FCレディースU-18監督)。20年をもって引退した同クラブのレジェンドである。

「ピッチ内外で発言力があって、時には厳しいことも言うけれど、みんなから親しまれている。手を抜いているのを見たことがないし、本当に何でもできる人だった」

そんなロールモデルに比べて筬島は「何でもできるわけではない」と謙遜するも、コミュニケーション能力はチーム随一。同僚から「口角が下がらない」と言われるほど笑顔が絶えず、口数の多さは「うるさい」と揶揄される。親しまれている証拠だ。

一方で阿久根さんが持つような「厳しさ」は、自身に足りない部分でもあった。昨季はチームが18試合未勝利と泥沼に陥る中、意識的に檄を飛ばす場面も。同じ副キャプテンの菊池まりあや原衣吹を見習いながら勇気を振り絞った。

それが周囲に響くだけの説得力も備えている。なでしこリーグでは137試合連続フル出場の偉業を成し遂げ、WEリーグでも加入1シーズン目の昨季は全22試合に出場した。パーソナルトレーニングを取り入れながらコンディションを維持し、“鉄人”の真骨頂を示した。背中で示せるのも彼女の強みだ。

新たなポジションにも挑戦
主力流出の懸念も取り払う

今季はキャプテンという役職にとどまらず、ピッチ上でも新たな挑戦に取り組んでいる。昨季までの主戦場だったセンターバックからボランチに転向。同ポジションで本格的にプレーするのは学生時代以来だ。

中村監督からはロングフィードによる局面の打開に加え、“潰し屋”としての役割も求められている。元イタリア代表の名ボランチコンビになぞられてこう言う。

「彼女はセンターバックということで、球際の強さだったり危機察知能力が備わっている部分がある。ボランチに2人ともゲームメイカーを置くよりも、ピルロの隣にいたガットゥーゾのように、一人はがっつり潰す。そういう選手がいてほしい」

筬島自身も期待に応える覚悟でいる。「私は能力系ではないので、頭で考えて動かないといけない。そのスピードが上がれば良さは出せると思う」。中盤の底で首を振り、景色に慣れている最中だ。

チームも変革の時を迎えている。昨季はリーグ歴代最低タイの勝ち点10で最下位。新指揮官の下で再建を迫られるが、今オフには主力が流出し、開幕まで1カ月を切ってもコーチングスタッフがそろっていない。それでも筬島は悲観することなく前を向いている。

「最下位だったのに主力も抜けて、見ている方には『大丈夫か』と思われているけれど、それはもう仕方のないことだと思う。ただ、中にいる自分たちからしたら悔しさしかないので、結果で示すしかない」

福岡県出身の筬島は、隣県の長崎県出身であるトップチームの小林伸二監督とも交流を持つ。小林監督から「一気になんて良くはならない。一歩ずつだよ」と助言を受け、地に足をつけて日々を過ごしている。彼女なりにチームを牽引し、下馬評を覆すつもりだ。


クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/

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